第6話 草原ダンジョン

 会社の夜逃げにより職を失った俺は、帰宅途中にホームセンターに寄り防具になりそうなものを買う。

 買ったのは、ヘルメット、プロテクター、ヘッドライト、あとは缶詰めや水などだ。


「結構買ってしまったな。あまり金は使いたくないがタクシーで帰るか」


 家に帰り一息つく。いまはスキル画面とにらめっこ中だ。


「昨日は興奮してよく確認しなかったけど、結構細かくあるな。」


 跳躍や2段翔び、罠解除や罠作成などとにかくスキルは多くある。


「鑑定もあるな。収納も欲しい。」


 優先順位はこの2つだろう。それぞれ200P必要だ。


「回復系のスキルも欲しいけど…安全にスライムを狩り続けるか、それとも別のダンジョンに行ってみるか…」


 悩んだすえに今日は草原ダンジョンに行ってみることにした。

 覚醒者の配信動画では、草原ダンジョンで出てくる魔物は草原ウルフと一角ラビット、それにゴブリンだ。

 ダンジョンに続く扉を何度か開閉して、お目当ての草原ダンジョンに入っていく。


 そこは青空が広がり、腰ほどの高さまでの草が生えた場所で風が吹く度に草が一斉に揺れる。


「おお、なんか気持ちいい光景だな。」


 とはいえここはダンジョンで魔物がいる。すぐに気を引き締めて索敵を使うと、洞窟ダンジョンよりも多くの反応があった。

 その中でも単独行動をしてそうな魔物の方向へと進む。右手には氷の片手剣、左手には鍋の蓋となんともいびつな格好だが誰もいないので気にしない。


「草が邪魔で見えにくいな…」


 CTが終わった索敵を再び使うと、こちらに近づく赤い点があった。慌てて感知を使うと草原ウルフが飛びかかってきた。


「うぉっ!?」


 草原ウルフのスピードは動画で見るよりも速く、どうやら倍速モードのようだ。感知のお陰で間一髪避けた俺は、体勢を立て直した。


 ザザザッと草の一部が揺れる。そこに氷の剣を振ると草原ウルフは横に飛び躱す。


「速いな!」


 いきなりの難敵に焦り始める俺。だが草原ウルフも先ほどの攻撃でこちらを警戒しているのか、俺の周りを回りだす。

 その間に俺は周囲の邪魔な草を斬る。これでいくらかの視界は確保された。


「ふぅ~」


 深く息を吐いて呼吸を整える。感知を使いさらに集中力を高めてファイアボールを唱えた。

 難なく躱されるが、それも折り込み済みだ。

 俺が狙ったのは後ろの草と左右の草で、草原ウルフの三方はたちまち炎が燃え上がる。これでアイツは前進するしかない。


 狙い通り草原ウルフは俺に向かって突進してくる。盾代わりの鍋の蓋を放り、空いた左手でファイアボールを放ち空中で身をよじり避けた方向へと剣を振る。


 ザシュッと手応えを感じたあと、草原ウルフは地に伏した。


「ハァッハァッ、やった……やったぞ!」


 草原ウルフの死体が煙となって消えていく。


「スキルポイントを150P獲得しました」


「ひゃ、150だって!!」


 確かに手強い相手だったが、まさかそんなに貰えるとは。手馴れた覚醒者ならばあの倍速モードの草原ウルフでも雑魚の分類にあたるだろうから、そこまでポイントを貰えるとは思わなかったのだ。


「痛っ!?」


 集中して気付かなかったが、よく見れば所々に切り傷があった。途端にゾクリと背筋が震える。


「はっ、今更になってブルってくるなんて……」


 そう、命のやり取りをしているのだ。生きるか死ぬか、人と魔物の命を賭けて。




 吉良 彼方 34歳


 スキル 生活魔法 索敵LV2CT30秒 感知LV2CT10秒  


    火魔法 壁走りLV1CT5秒


 CT=チャージタイム 残SP 161P

















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バグダンジョンで強くなる! 日進ニ歩 @hiiro-y

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