第2話 スキル
恐る恐る鉄の扉を開き、頭だけを突っ込む。ひんやりとした風が顔を撫でる。
「洞窟タイプのダンジョンか」
ダンジョンには色々なタイプがあり、今回はスライムなどが生息しやすい洞窟タイプだ。
「スライムなら俺でも倒せそうだな。」
スライムはダンジョンに現れる魔物の中でも最弱の魔物で、大災厄のときには一般人でも倒すことができた魔物だ。
懐中電灯で辺りを見回したあと今度は体ごとダンジョンに突入する。扉が閉まるが内側からも開く事ができるので問題はない。
「いざとなったら逃げればいいし……」
そうしてゆっくりと周囲を警戒しながら進むと、ズルリとスライムが現れた。その動きは動画で見たよりも酷くゆっくりでホントに生きているのかと思えるぐらいだ。
「動画で見たやつはもう少し早く動いていた気が…」
そんなことを思いながら近づき、転がっていた拳ほどの大きさをした岩でスライムの核を砕く。スライムが最弱といわれるのはこの核を壊せばいいだけだからだ。
「弱いなぁスライム」
見事に消滅したスライムをみて呟く俺。
『初のモンスター討伐を確認しました。スキルツリーが解放されます。スキルポイントを10ポイント獲得しました。』
不意に響く機械音声。ビクぅ!っと驚き周囲を見回すが誰もいない。
「今の声は一体?」
確かスキルツリーが解放されたとか言っていた。昔やったことのあるゲームのようだなと思い、スキルツリーと口にすると目の前に画面が現れる。
「おお!マジで出た!!」
よく見れば、その画面に映っているのは無数のスキル名、そしてその横には数字が書かれている。
「それにしてもおかしくないか?」
スキルとは突然覚えるもので、種類の指定はできないというのがいまや世界の常識だ。ならいま目の前にある画面は?
「とにかく何か獲得してみるか……」
研究者でもない1サラリーマンが考えたところで答えなど出るはずないと、頭を切り替える。
「むむー、いま取れそうなのはこの3つか」
生活魔法、索敵、感知でいずれも3と横に数字がある。この数字がスキルを獲得するのに必要なポイントだと推測する。
「スキル名を触れればいいのかな?」
画面上のスキル名に触れれば、思った通りスキル獲得の是非を問われた。
「もちろん、ハイ。」
すると画面上のスキル名が先ほどよりも明るく表示される。
「なるほどこうなるのか」
問題は本当に使えるかどうかだ。試しに索敵を使って見ると頭の中に赤い点がいくつか浮かび数秒して消える。
「ふむふむ、持続型ではなく数秒間だけの表示か。」
どうやらスキルは問題なく使えるようだ。では、と感知を使ってみると集中力が研ぎ澄まされた感覚を覚える。
「うーん、よく分からないスキルだな。持続は大体1分くらいか。」
効果がいまいちよく分からなかったが、いずれ必要な場所が出て来るだろうと思う。
「さて、お待ちかねの生活魔法だ!」
魔法、それは現代人であれば多くの人が憧れるスキルだ。
「とりあえず、着火!」
手を伸ばして魔法を唱えると、ライターの火ほどの大きさの火が現れる。
「おお!」
調子に乗って飲み水や、清掃などいくつか試していたら急に体が重くなった。
「だ、ダルい……これが魔力不足の感覚か。」
まるで高熱を出したときの体のダルさだ。魔力不足は休んで入れば自然に治ると動画で覚醒者が言っていた。
「続きは墓参りが終わってからだな。」
ダルい体を引きずるように歩き、扉を開けて部屋に戻る。
「それにしても、覚醒者になったんだよな俺…」
この時の俺は気付いてなかったのだ、このダンジョンの異常さに。
吉良 彼方 34歳
スキル 生活魔法 索敵 感知 SP 1
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