第1062話 マリットルの湯 上
「酷いものだ」
カロリーバーを報酬にゴブリンの片付けをやらせてはいるが、町が回復するような事業や商売が行われていない。辛うじて秩序が保たれている、と言った感じであった。
ゴブリンの片付けに参加しないヤツらは虚ろな目をしており、まるで屍のようだった。
「こりゃダメだな」
残り物には福があるとかの状況ではない。まずは活力を回復させないとなんの役にも立たないヤツらばっかりだ。
「別の手を考えるぞ」
要塞内通路はオープンになっているので、マガルスク王国側に向かった。
こちらにも町はあったが、今は見る影もなし。ゴブリンの死体を片付けるヤツらの簡易宿舎(小屋)が何軒かあるだけだった。
「メビ。死体を片付けているヤツに女性がいるか調べてきてくれ」
「了解」
「マグレット。風呂を作るぞ」
ホームに入り、自衛隊が使っている風呂を買ってみた。
完成品(?)だったので出すのに一汗かいてしまったが、外に出してしまえば巨人となって簡単に移動させられる。
要塞の中間部を走る水路の下に設置し、パイプを駆使して風呂に落ちるようにした。
「タカト、確認してきたよ」
「ご苦労さん。どうだった?」
「二、三十人はいたよ。皆、汗だくだった」
そうだろうよ。真冬とは言え、三十キロくらいの死体を運ぶのだ。一生懸命やれば汗もかくだろうよ。
「じゃあ、女湯も必要だな」
なかなかの値段だったが、今もゴブリン駆除報酬は入っている。五十万円くらい惜しくはない。百万円くらいでマリットル要塞の士気が上がるなら安いもだ。
「マグレット。要塞に幕とかあるか? 一応、男女別にしておこう」
性にフルオープンなところはあるが、あちらこちらでおさかんになられてもメビの教育によくない。男女はわけさせていただきます。
「垂れ幕なら見たことあります。それを使いましょう」
「ああ、頼むよ」
そうお願いしたら男爵になるヤツらがやってきた。
「なにをしているんです?」
「ここにいるヤツらの士気を上げて、要塞を活発にさせる。あと、役人を借りりるな」
サービスではなく商売としてやる。でないと、士気も上がらないし、活発にもならない。元の状態に戻すには金を回す必要があるのだ。
「今日からゴブリンの死体を片付ける者には金を払うようにする。その形を作ってくれ」
事業となれば役人の専売特許。すぐに体制を整えてくれた。
「いい仕事だ。ランティアックの男爵に報告しておくよ」
ランティアックに戻ることはないが、これから繋がりは強くなる。男爵に名を覚えられるのは役人たちの得になるだろうよ。
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