第1060話 昼行灯タイプ 上
三日かけて役人と面談し、どんな部署にいたか、どんな要望を持っているかを聞いて八人に割り振った。
役人は四十八人。残りはその家族だ。今さらだが、よく新天地を選んだものだ。役人には出世が生き甲斐なんだな~。オレには理解できんよ。
それでも八人の男爵と四十八人の役人にはマガルスク王国を速やかに安定して欲しい。ここでサボると今後に関わってくるのだからオレよがんばれ、だ。
「権力者がお前を恐れるのがよくわかったよ」
「なんだい、現れるなり」
司令室で缶コーヒーを飲んでたらアルズライズがやってきた。
「いや、数日であの役人たちの信頼を得るとか、領主とかだったら恐怖でしかないだろう。人心掌握がバケモノすぎるわ」
「そうか? 男爵の教育が行き届いていただけだろう」
あの人もバケモノだ。役人の人心掌握術は一級品だろうよ。
「要塞司令と将軍の件はどうなった?」
「将軍のほうはおれが連れて鍛えてくる」
「兵士は集まったのか?」
「食料で釣ったら五十人くらい集まった。請負員カードをくれ」
六十枚発行して渡した。
「要塞司令はどうするんだ?」
「それはお前が鍛えてくれ。賢いヤツだ。お前から学べばマガルスク王国の全体像を把握して、指揮できる男になるだろう」
アルズライズが認めた男か。ちょっと気になるな。
「わかった。オレが教育する」
すぐに要塞司令の男を連れてきた。
……なるほど。こういうタイプか……。
ゴリゴリの兵士ではなく、オレ以上に細身で生気を感じない。完全に昼行灯タイプだ。
「名前と歳は?」
「マグレットです。歳は二十五歳です」
思ったより若いな。三十歳くらいに見えるぞ。
「よく要塞司令を引き受けたな?」
「見てのとおり、わたしは屈強ではありません。剣を振るうのは苦手です。家屋内で仕事がしたいです」
今の時代じゃ厳しいが、一人はそういうヤツがいてもいいだろう。全体像を俯瞰的に見れるヤツはいたほうがいい。
「じゃあ、家屋内で仕事をできるようにならないとな」
「怒らないのですか?」
「オレだって可能なら環境のいいところで仕事がしたいよ。野山を駆け巡り、暑いのや寒いのに苦しめられるなんてしたくないさ」
あのエアコンが完備された工場が懐かしいよ。恵まれた環境だったんだな~って痛感させられるぜ。
「要塞司令官として力を見せたらいい環境で仕事ができる。まあ、がんばれ」
「……変わった人ですね。アルズライズさんも変わった人でしたが……」
「人には向き不向きがあるもの。お前はきっと頭を使う仕事が向いているんだろう。その頭を使って要塞が落ちないようにする。それがお前の仕事だ」
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