第1059話 人事 下
とりあえず、役人とその家族を連れてくる。
「ありがとな。助かったよ」
ルースホワイトの操縦士に礼を言った。
役人たちを運ぶのでマンダリン隊には別行動してもらっている。拠点を奪ってしまって申し訳ないです。
「とんでもない。マスターの力になれて光栄です」
英雄視されるのは困るが、マイセンズのエルフなら仕方がない。駆除員が一族を救っているのだからな。
「オレもだよ。感謝する」
感謝には感謝で応える。でないと、オレはダメな人間になってしまうからな。
ルースホワイトを敬礼で見送り、消えたら役人たちを連れて要塞に入った。
先に連れてきた役人たちが掃除を始めており、さっそく自分たちの立場をよくするために動いていた。
「さすが男爵様が選んだだけはあるな」
ちゃんと躾が行き届いている。
だから優秀な人って好きなんだよな。想定とおりの動きをしてくれるだから。これが中途半端な者だと困るんだよな。そういうヤツは好き嫌いか、すぐ私情で動いてしまう。それならまだ無能な上司のほうが扱いやすいよ。
「よし。荷物を置いたらオレらも掃除をするぞ」
同じことをしてこそ受け入れられるもの。掃除くらいでグダグダ言っていたら工場作業員はやれない。5S、メッチャうるさい時期があったからな。掃除くらいで済むなら万々歳だ。
……あれは突き詰めると時間の無駄になるんだよ。仕事ではない仕事をたくさん作るからな……。
岩造りなので水拭きはできず、溜まった土を払い、兵士だった部屋の備品を外に出して埃を払い、雑巾がけ、シーツなどは丸洗いした。
百人近い者を連れてきたので大きな要塞でも二日もあれば綺麗に仕上げられた。
「ふー。久々に掃除したら筋肉痛かよ。動いているようで動いてなかったんだな」
なにかを極めたらなにかを失う。なんか前にもこんな思いをしたな。まったく、上手くいかないものだ。
一日休みにして半日マッサージチェアに揉まれて筋肉痛を静め、ボウモア十二年で心を癒した。
高価なウイスキーをためらいなく飲める。これだけはダメ女神に感謝してもいいかもな。オレのウイスキー棚も充実してきたし。
身も心も回復したら人事を進めることにする。上司と部下は相性がよくないと仕事は上手く回らないからな。
それが起こる前にちゃんと面談はしておく必要がある。お互い、相性の合う、もしくは目的が一緒なのを見極めて組ませておこう。
人事の経験はないが、新入社員や配置代えで人を教育してきた。多少なりとも社会人経験がある者をナメんなよ。上手くいくように組ませてやるさ。
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