第1058話 人事 上

 男爵の仕事の早さは異常だな。役人まで用意しててくれたよ。


「諸君。生き残った意味を考え、新たな地で出世することを願う」


 役人には家族で移る者も結構いたので、三度に分けて役人たちをマリットル要塞に運ぶことにした。


「ランティアックはお前の言いなりか?」


 連れてきたらアルズライズに呆れられた。


「そんなわけあるか。ランティアックとしてもこちらの話には渡りに船なんだよ。役人は仕事をしないと賃金はもらえないし、結果を出さないと出世もできない。ランティアックの状況を見たら役人は三分の一にしないと辞めさせるしかなくなるんだよ」


 男爵はそんなこと言わなかったが、あの人なら何手先まで読んでいるはず。でなければ家族まで同行させたりはしないだろう。八人の男爵を完全にランティアックの手足とするために。


 オレとしてはなんでも構わない。こちらはいつまでもマガルスク王国に関わってらんない。任せる目処が立てばさっさと帰れる。こちらの都合にも合っている。どんどんやってくれ、だ。


「役人たちもそれがわかっているから新天地で出世することを考えたんだよ。文句を言う上司もいないしな」


 上司は使うもの、なオレには賛同できないが、普通は上司がいると嫌なものらしい。自分が役人のトップになる。多少の苦労も乗り切れるだろうよ。


「そういうものか?」


「冒険者とは真逆の生き物だと思え。役人は組織で生きるに特化した生き物だ。言うことを聞かせたいなら仕事をさせて評価しろ。間違ったことをしたら別部署に回せ。それで大人しくなるから」


 ちゃんとした評価をするなら役人は悪さはしない。理不尽なことをさせるから上司を裏切るのだ。


「おれに貴族は無理だな」


「お前が伯爵になってくれたら嬉しいが、まあ、海を航海するお前も似合っている。仕事はどんどん男爵に任せていけ。マリットル要塞領を任せられるヤツも欲しいんだからな」


 いつまでもアルズライズをここに置いておくわけにはいかない。さっさと任せられるヤツを育てろ、だ。


「そうだな。籠ってばかりでは体が鈍ってしまう。任せるようにしていこう」


「ちなみに、任せられそうなヤツはいるのか?」


「二人いる。だが、二人は地位には興味がないので八人には入ってない」


「なら、一人を要塞司令にして、もう一人は将軍にしろ。兵力も欲しいからな」


「男爵に任せなくていいのか?」


「任せられるヤツがいなかったから男爵にやらせようとしたまでだ。要塞司令と将軍を任せられるヤツがいたら話が別だ」


 要塞では金を稼ぐことはできないだろう。通行止めみたいな状況だからな。


 ─────────────


 体調不良につき、短くなっております。


 第22章が終われば、『ダメ女神からゴブリンを駆除しろと命令されて異世界に転移させられたアラサーなオレ、がんばって生きていく! 3』に移ろうと思います。よろしくお願い致します。

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