第1055話 移住
ドワーフの作業員が百人もくると、ちょっとした橋など半日もかからないで完成させてしまった。
もちろん、建築基準など守られたものじゃないが、RMAXが乗っても壊れなかった。充分と言っていいだろうよ。
「仕事ができすぎるってのも困ったもんだ」
この分では春がやってくる前に終わりそうな勢いだ。次、どんな仕事を与えたらいいんだよ?
いや、やることは多々あるんだが、まだ商売としての形ができてない。ランティアックから金を引き出せてない状態で道を完成させたら金を引っ張り出せないぞ。
「まあ、金はオレが出せばいっか」
マガルスク王国の貨幣は集めてある。価値がまだあるかは謎だが、銅銀金を使っている。まったく価値がないってこともないはずだ。ダメなときは潰してソンドルク王国に発行してもらうとしよう。
「商人を呼ぶか?」
コラウスの商人はもう呼べないだろうな。ロンレアや王都で精一杯だろうからな。
ドワーフからも商人が現れて欲しいものだ。オレは商売とかさっぱりだからな。
「都市国家に溢れたヤツがたくさんいたから連れてこようか? 屋台くらいやれるんじゃない?」
「溢れたヤツ? 仕事をしてないヤツか?」
「うん。結構いるよ。仕事もなくて、その日暮らし。どの都市国家も苦労しているみたいだよ」
「都市国家は人が増えすぎているのか」
マガルスク王国は滅亡の危機なのにな。バランスよくいかないものだ。
「アレクライトで運ぶか?」
マリットル要塞も人がいないし、まずはそこに移してみるとしよう。土地はたくさんあるんだしな。ただ、アルズライズの仕事が増えそうだけど。
「よし。アルズライズに相談してみるか。あちらの様子も見たいしな」
駆除員がいないから情報があまり入ってこないんだよな。ルースブラックも十日に一回くらいの頻度でしかいってないみたいだし。
なんて考えていたらルースホワイトがやってきた。
十キロ毎に発信器を打ち込んでいるから気になって降りてきたのかな?
「やはりマスターでしたか。随分と進みましたね」
「ああ。皆働き者だから予想以上に進んでしまったよ。そっちはどうした? 時間がかかったみたいだが?」
「マンダリンの航続距離を伸ばしてもらうのと、榴弾の威力を高めてもらいました」
「航続距離? そんなに飛んでんのか?」
榴弾の威力はオレも上げたいとは思っていたが、マンダリンはそう長く飛ぶような乗り物じゃない。結構、神経を使うから長距離や長時間はやらないほうがいい。それならルースミルガンのほうがいいだろうよ。
「はい。マナックがなくなるまで飛んでます」
「体力あるな、マイセンズのエルフは」
「しっかり食べられるのでしっかり鍛えています」
確かに肉がついてきたな。この世界の生命体、ちゃんと食えたらどんな成長を果たすんだ? ラダリオンも一年で二メートルも成長するし。あれはもう進化だろう。
「それはなにより。オレも鍛える時間が欲しいよ」
まあ、オレが鍛えたところで大した成長はしないだろうがな。てか、前々から思ってたが、元の世界の人類、ちょっと弱すぎね? 五年以上生きられない理由の一つじゃね?
「急ぎじゃないならルースホワイトでマリットル要塞に向かいたい。定期的にルースカルガンを操縦しないと鈍るからな」
知識だけでは乗り物は操れない。日々の操縦が技術を維持できるんだよ。
「わかりました。すぐにいきますか?」
「ああ。ここは、巨人とドワーフに任せている。オレがいなくても問題ないさ」
一応、出かけてくるのを男たちを世話する女性陣に伝えてルースホワイトに乗り込んだ。もちろん、メビもな。
久しぶりに席に座ったら、計器類の数が減っていた。
「ルースホワイトも改造したのか?」
「はい。複雑なので簡略化してもらいました。なくても問題ありませんし」
まあ、確かに飛ばすだけなら半分以上の計器はいらないな。
「ここまですっきりだと目移りしなくていいな。ルースブラックもしてもらうか」
もうオレ専用機ではなくなったが、ルースカルガンは新しく造ってもらっている。そのときは簡素化したルースカルガンに乗るとしよう。
「操縦しやすいな」
知識があるだけに目がいっていたから楽でいいよ。
「マナックも自動供給にしてもらいましたので、ガーゲーからマガルスクまで飛んでも四分の一しか消費してません」
それは凄いな。最低でも千キロは飛べるってことだ。これなら他の大陸にも飛べそうだな。
難なくマリットル要塞までやってこれた。
「まだゴブリンがいるのか」
ルースホワイトに乗っているので気配は感じ取れないが、熱源で二、三万匹はいそうだ。エサがなくてこちらに逃げてきたか?
それだけいてもマリットル要塞に不都合はなく、要塞内の修復に力を入れているようだ。
「こちらルースホワイト。孝人だ。アレクライト、応答を求む」
「こちらアレクライト。どうしました?」
「船尾甲板に着船する。問題あるか?」
「ありません。どうぞ着船してください」
港に停泊状態なので難なく着船。まだまだ腕は衰えてはいないようだ。
外に出ると、アルズライズが迎えてくれた。
「また問題か?」
「人をトラブルの使者みたいに言うな。まあ、あながち間違ってはいないが、急ぎではない。時間をもらえるか?」
「わかった。オレの部屋で話そうか」
「了解。アリサ、ありがとな。またゴブリン駆除に励んでくれ」
「はい。たくさん駆除してきます」
お互い、敬礼し合った。
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