第1050話 ルースホワイト
ガガリと……名前なんだっけ? 嫁さん? 誰かが口にしているはずなんだが、記憶にねーや。まあ、晴れて夫婦となった二人に乾杯。末長くお幸せに。
ロースト村の連中も積極的にマーダ村の者とコミュニケーションを図っていた。その辺は村で生きてきただけはある。マーダ村の者にはまだできないことだ。
しばらくはガガリたちに任せていいだろう。発展していく希望しかないんだからな。
次なる課題はドワーフか。もうちょっと生活基盤を築いてやらないと、落ち着いて開拓はできないだろう。
でもその前に、タダオンたちを誘惑しておくとしよう。
「タダオン。足の大きさを測らせてくれ」
「足をか?」
「道を築いてもらうには靴が必要になるからな」
マーダ村からマガルスク王国までは三百メートルくらいの山が続く。魔物の熱源も多かった。歩くのは大変なはずだ。
ってのは建前。時間を稼ぐためにタダオンたちに靴を作ってやることにするのだ。
「巨人の村で靴を作るようになった。欲しくないか?」
足で生きている者なら必ずオレの履いている靴に目がいくそうだ。
靴が当たり前のオレにはわからなかったが、こちらの靴は踏ん張りが利かず、厚みがないので怪我をしやすいそうだ。
ラザニア村の職人がオレの靴を研究して、一日一足のペースで作っていると聞いたよ。
「……欲しい……」
本当に靴に不満を持っているものなんだな~。
「道を築く前報酬として払うよ。どうだ?」
「頼む」
ってことで、五人に足を洗ってもらい、サイズを測った。
「いや、ちょっと待てよ」
ロースト村から職人もきたよな。革職人だと言ってなかったっけか? そう思って確認すると、やはり革職人はいた。しかも、靴を作ったこともあるそうだ。
「道具と材料があるなら作れはするが、タカトみたいな靴は作れないぞ」
「この靴を作るにはあと数百年はかかる。そこまでのは求めないよ。今よりマシなのを作ってくれ。道具と材料はすぐ揃えるよ。できるところまで進めてくれ」
ルースミルガン改に乗り込み、ランティアックに飛んだ。
オートマップに工房の位置は記録している。確か、靴の工房はこれだっけか? あ、当たりだ。
なにが必要かわからんので工房のものをすべてホームに運び込んだ。
急いで戻ると、五人の足型を削り終わっており、五人はいなくなっていた。
「どれが必要だ?」
「すべてだ。これならもっと本格的な靴が作れるぞ」
す、すべてか。二日くらいかかりそうだな……。
仕方がないと諦めて巨大化させていると、マリルのルースミルガン改が飛んできた。
「相変わらず派手やな~」
目立ってはいいけど、オレが乗ったら笑われそうだ。
「おじちゃん」
「どうした?」
「榴弾が欲しい」
榴弾? なにに使うんだ?
「ゴブリンでもいたか?」
「ううん。目印に使う。マルビグに果樹を取りにいきたいみたい。その印に爆発させようと思って」
なかなか派手な目印にすんな。
「わかった。換えのも持ってくるよ」
一応、榴弾はホームに入れてある。いつゴブリンの群れが現れるかわからないからな。
手榴弾より威力があるものなので、一発一発梱包されているので、コンテナボックス四発しか入らない。二十箱持ってきて発着場の物置に運び込んだ。
「マナックも出しておくからな」
「うん、わかった。おじちゃんはまだここにいるの?」
「ああ、いるよ。ただ、そのうちマガルスク王国までの道を築くからなんかあったら発信器の側から通信してくれ」
いっそのこと発信器を四キロ毎に設置してマガルスク王国と通信できるようにするか? この道は主要道になるかもしれんからな。
「わかった!」
榴弾を装填したら湖の向こうに飛んでいった。
靴が完成するまでマチェットや鍬なんかを巨大化させていると、ルースホワイトが飛んできた。
「アリサ、元気のようだな」
マンダリン部隊としてマガルスク王国内を飛んでいたはず。放置しててごめんよ。
「はい。たくさんゴブリンを駆除できました。ただ、マンダリンを酷使してしまいました。何台かは調子悪いのです」
「へー。マンダリンも調子悪くなるんだ」
いや、古代技術とは言え、使ったら磨耗したら不具合を起こしたりするか。毎日のように飛んでいるようだからな。
「それならガーゲーで直してくるといい。まだまだゴブリン駆除は続きそうだからな」
続々とミルズガンに集まってはいそうだが、まだ動く気配を見せてはいない。と言うか、警戒しているんだろう。ニャーダ族の連中が暴れ回っているからな。下手したらまた王都に戻ることも考える必要があるだろうよ。
前門の虎後門の狼って状況になればこちらとして好都合なんだがな。たぶん、そうにはならんだろう。ゴブリンがオレの予想どおりに動いたことなってないからな。
「はい。急いで直してもらいます」
「あまり急かすなよ。ガーゲーも人手不足なんだから。マイセンズのヤツも技術師になるようにしろ」
寿命はオレたちより長い。三十年くらい勉強しても人生に支障はないだろうさ。
「そうですね。考えてみます」
「そうしろ。技術を持っていれば迫害されることにならんだろうからな」
オレもエルフの技術はお世話になっている。孫の代くらいまでは快適に過ごさせてやりたいよ。
「はい。では、ガーゲーにいってきます」
マナックを補給して飛び立っていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます