第1045話 カロリースープ

 本当に二日でロースト村に到着できた。マーダ族、スゲーよ。


 とは言え、到着が夜だったので、村の外で野営することにした。


 ここは水も豊富なので、ヒートソードで川の水を沸かして汗を流させた。


 夕飯は巨人パンを焼いてロースランの燻製肉を挟めて食った。いや、オレは食ってないけどね。


 巨人たちの夕飯風景を眺めていたらロースト村の巨人がやってきた。


「タカト様でしたか」


「久しぶりです。村は問題ないですか?」


 なんか長老っぽかったので、丁寧に接した。


「はい。問題なくやれております。なぜまたマーダ族と一緒に?」


 森の湖で偶然会ったことからそこに村を作り、ロースト村と商売をしたいことを伝えた。


「マーダ族が村をですか」


「人数が増えたから旅をするのが大変になったそうです。と言っても半分は放浪を続けるそうです」


 とりあえず話は明日にしてもらい、オレはホームでしっかり休むとする。巨大化させるのが多そうだからな。


「ミサロのところに使ってない服や鍋があったらホームに入れてくれ。刃物類もあったら頼むよ」


「わかったわ」


「雷牙。ガーゲーにいったらカロリーバーをたくさんホームに入れておいてくれ」


「了解。あ、そうだ。マーリャがカロリースープを作ったって言ったからホームに入れておいたよ。青いコンテナボックスね」


「カロリースープ?」


「うん。見た目は完全にカロリーバーだけど、お湯で溶くとコーンスープみたいな味になるみたいだよ」


 ガーゲー、そんなものも造れるんだ。古代の技術はスゲーもんだ。


「じゃあ、巨人に食わせてみるか」


 決して毒味ではありません。味見です。


 ガレージにいってみると、青いコンテナボックスがパレットに載っていた。


「カロリーバー一個分を溶かすといいのか?」


 固形のと区別するためか、黒いシュリンクに覆われていた。


 コンテナボックスには二百四十個入っているので巨人……何人分になるんだ? 人間だと二、三個で一食分になるからその四倍だと見ればいっか?


「まあ、たくさんあるんだし、好きなだけ食わせたらいいか」


 そう結論を出して眠りにつき、朝になったら二箱持って外に出た。


 巨人たちは土鍋を二つ持ってきていたので、朝飯に出すことにする。


 土鍋に何個必要かわからんので、巨人の舌に任せて放り込んでもらい、巨人パンと一緒に食べてもらった。


「美味い!」


 と喜ばれた。


「それはよかった。ロースト村にも渡してやるか」


 朝飯が終わればロースト村に入れてもらった。


 オレたちがきたことは伝わっており、村のすべてが集まっているような感じで迎えて……くれてんのか? よーわからん。


「ガガリ。ロースト村の村長とは面識あるのか?」


「ある。おれが交渉を任されていた」


 へーそうなんだ。オレがついてくることもなかったかな?


「そうか。なら、交渉は任せる。カロリースープをロースト村にわけてやってくれ」


 巨人同士の交渉は任せ、村の人間に話を聞きに向かった。


 ラザニア村ほど人間はいないが、金の管理は人間がやっている。ニャーダ族の町、イチノセを築き始めている。駆除員がいないと詳しい情報が回ってこないんだよな。


「今は冬なのでそんなに往来はありませんね。食料も保存食で乗り切っているんじゃないですかね?」


 まあ、元々食料不足気味。コラウスもこちらに回す余裕がないのかもな。


「カロリースープを回すか」


 コンテナ一つ分なら春まで持つだろう。雷牙にまた入れるように言っておこう。


 ホームに入ると、タイミングよく雷牙がパレットを入れていた。


「ご苦労さん。まだ在庫はあるか?」


「あるよ。ラダリオンのとこも欲しいって言ってたからたくさん造ってもらってる。一応、五十パレットくらいは造るってさ」


「五十か。ガレージには入り切れんな」


 今、ルースミルガン改はマーダ村に置いてきたから二十パレットは入れられるが、そうすると中で身動きできなくなる。十パレットが精々だろうよ。


「リュックサック買うか」


 巨大化させたらリュックサック一つに一パレットは入れられんだろうよ。


 試しに一つ買い、巨大化させたら一パレット出して詰め込んだ。


「トンパックを買えばよかったな」


 リュックサックよりトンパックのほうが安い。使い捨てにするならトンパックのほうがいいだろう。


 今度、三千円くらいのトンパックを買い置きしておくか。いや、ガーゲーでトンパックを造ってもらうか。入れ替えするのも面倒だしな。


 巨人が持ちやすいトンパックを買い、雷牙に持たせた。ガーゲーの技術力なら造れんだろうよ。


「タカト。少しいいか?」


 岩の上に座って休んでいると、ガガリがやってきた。どした?


「女を二人、ロースト村に嫁がせたい。口を聞いてもらえるか?」


「連れてきた二人のことか?」


 なんで若い娘を連れてきたのかと思ったらそういうわけか。血が濃くならないためによくやっているとは聞いたことあるよ。


「オレの言葉が必要なのか?」


「ああ。マーダ族は定住している者を蔑むからな。血をわけるにはなにか貢ぎ物を出さなければならないんだ」


 巨人にも差別とかあるんだ。まったく面倒なものだよ。


「わかった。任せろ」


 巨人の未来が途切れても困るからな。口利きしようじゃないか。

 

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