第1029話 マリルと別れ
朝になり、ゆっくり朝飯を食ってから出発──しようとしたらマリルがルースミルガン改を操縦したいと言い出した。
「いいぞ」
興味を持つのはいいことだと、マリルに操縦法を教えた。
やはり天才って生き物はなにをやっても高水準の結果を出すもの。三十分もしないで覚えてしまった……。
ま、まあ、オレもダメ女神によりマイセンズの知識は大体詰め込められた。技術はないが、なにもないよりは早く感覚を身につけられるものだ。天才を羨むのもおこがましいってものだ。
「発信器の信号があるから迷うことはないが、風や磁場で狂うこともあるから気をつけろよ」
どんなに技術が向上しようと計器だけで飛ぶのも危険なんだよな。そもそも長距離を飛ぶようなものじゃない。あまり高性能でもないんだよな、ルースミルガンって。
「了解」
「じゃあ、自治領区で落ち合おう」
オレたちはRMAXに乗り込んで出発した。
久しぶり、と言うか、RMAXに乗るってこれで二回、いや、三回目か? 長いことパイオニアに乗っていたからやっぱり感覚が違うな。
一回、ハイラックスに乗ってしまったからまた左運転がリセットされたようで、自然と右に寄ってしまう。凡人は切り替えができないから嫌になるよ。
道はそれほど悪くはないので三時間ほどで自治領区に到着できた。
「ミサロはトラクターの扱いが神業になってきたな」
数日でどんだけ耕してんだか。ミサロが凄いのか? それともトラクターが凄いのか?
張り切っているのを止めるのも申し訳ないので、クラクションを鳴らして通りすぎた。
「町だね」
「ああ、仕事が早いヤツらだよ」
今は家を作ることに集中しているので、どんどん家が建っている。あとは仕事をどう作るかだよな。
ラダリオンが入るように作った場所は、町の中心にある。なんか憩いの場的な感じになってきたな。発信器もそこに打ち込んでいるからマリルもそこに降りていた。
子供たちが集まっており、物珍しそうにルースミルガン改を見ていた。
「ほら、飴やるから離れろ。ちゃんとわけるんだぞ」
ドワーフに支援はしているが、自力で生活できるように元の世界のものはなるべく渡していない。が、ロズたちが出しているので飴のことも知っている。
滅多に食べられないものだから子供たちは大喜び。飴を持って去ってくれた。
「マリル。マナックを補給するぞ」
まだ補給するほどでもなかったのでまだ教えてなかったので、マーダ村にいく前にマナックの補給の仕方を教えた。
「マリルも専用のルースミルガン改が欲しいか?」
この二人は組織に組み込むより遊撃隊として自由にさせたほうがいいかもしれんな。いや、ルースミルガン隊を組織したらいいか? 五年後ならマリルたちが連れてきた子供たちも操縦できる年齢になっているだろうよ。
「うん! 欲しい!」
「じゃあ、ルースカルガンがきたらガーゲーにいってこい。自分好みに造ってもらえ」
ルースカルガン六号艇は定期便として各地の支部を回ってもらっている。二、三日もあればガーゲーに着けるだろうよ。コラウスに戻らなくちゃダメだけどな。
って言ってたらルースブラックが降下してきた。コラウスに戻るところだったか?
降りてきたのはサイルスさんだった。あれ? コラウスに戻ったんじゃなかったっけ?
ちなみにルースブラックは獣人に任せ、コラウスから補給と職員交代のために飛んでます。
「タカト、ここにいたのか」
「はい。サイルスさんは、コラウスに戻ったんじゃなかったでしたっけ?」
「戻ったよ。受け入れ体制ができたからダルスたちを迎えにきた」
「そうだったんですね。途中の湖は見ましたか?」
ルースブラックならマナックを補給することなく飛べるが、湖の様子は上空からでもわかるはずだ。
「ああ。あれ、お前か?」
「はい。ソンドルク王国とマガルスク王国を繋ぐ中間地点としてマーダ族を雇いました。マナックも置いておくので好きに使ってください」
「お前は少し離れると物事を進める才能があるよな。また報告することが増えただろう」
「そこはがんばってくださいとしか言いようがありませんね。物事は突然やってくるものですからね」
それはオレのせいではない断言させていただきます。
「まったく、口の上手い男だよ」
「そうですか? 口下手な男ですよ、オレは。それより、マリルをコラウスに連れてってください。マリル。職員にガーゲーにいきたいことを告げれば段取りしてくれる。終わったらコラウスまで戻ってこいな」
「了解」
「マルゼもいくか?」
姉と離れるのが寂しいならついていってもいいんだぞ。
「大丈夫。おじちゃんといる」
そっか。まあ、いつまでも姉離れができないのも困るか。離れるのも一人前になるのに大切な工程かもな。
「マルゼ。寂しいからって泣くんじゃないんだからね」
「泣かないよ! 子供扱いするな!」
ふふ。弟も大変だ。
「そうだな。マルゼは男だもんな。男二人で修行するか」
オレも巨人の監視や観察だけでは飽きてしまう。せっかくだから修行でもするとしよう。マルゼにもいろいろ教えたいからな。
「サイルスさん。オレたちは先にいきますんで、急ぎでないのなら寄ってみてください」
コラウスとしてもドワーフとして繋がる旨味を見出だしたってこと。なら、それに口を出す気はない。苦労して旨味を味わってください、だ。
「ああ。そうするよ」
マリルとはそこで別れ、オレとマルゼはルースミルガン改で出発した。
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