第1027話 工房町

 ルースミルガン改のところまで戻ってきたらマリルとマルゼがいた。


「どうしたんだ?」


「ミルズガンが停滞したから遊撃隊として各地を回っているの。あたしたちはランティアックに戻ってきた」


 あー。そんなこと言ってたっけ。


「稼げているか?」


「ううん。全然。ゴブリン、どこにもいないよ」


「んー。移動したのかもしれんな。稼ぎたいときは東南を目指すといいぞ。おそらくそちらのほうにゴブリンは移動していると思うぞ」


 ルンダリア平野のほうに向かったのだと思う。ミルズガンのほうはミリエルたちがいる。ゴブリンはなにかを感じ取ってルンダリアのほうに逃げたんじゃなかろうか?


「おじちゃんはなにするの?」


「街に出て回収だな。巨人に渡すものを探しに出るよ」


 広い街。まだ回収していないところはある。生き残りも漁っているだろうが、すべてを回収するにはまだまだ先のことだろうよ。


「じゃあ、おれたちもいくよ」


「うん。いく」


 ってことで、ルースミルガン改とRMAXをホームに入れて歩いて向かった。


 城から近いところはすべて回収したので、まだいってない地区を攻めてみることにした。


 そう急ぐこともないのてのんびり進み、のんびり休憩しては一時間くらいしてまだ探ってない地区にきた。


「熱反応も動体反応もなし。誰もいないか」


 まあ、生き残りが少ないから街全体を覆うことはできない。誰もいなくても不思議ではないか。


「RMAXをここに置くからばらけて回収するか。主に剣と服を頼む。あとは適当でいいよ」


 あまりどうでもいいものは邪魔になるだけ。いいのがあったら、でいいやろ。


「じゃあ、十四時にここに集合。プランデットはかけて通信はオンにしておけな」


 くる途中でいろいろ食ったから昼を食う気にはなれない。連絡に入るくらいであとは回収作業に従事しましょうか。


「わかった」


「了解」


 ホームからRMAXを出したら回収に向かった。


 この地区は住宅が多いので剣があるかはわからんが、服はありそうだ。適当に漁るとしよう。


 適当な家に入る。


 前にいろんなところの家に入ったときのように、ここも慌てた様子があちらこちらに残っている。


「パニック映画みたいな状況を異世界で体験するんだから人生なにがあるかわからんよな」


 家族がいる家のようで子供服から大人の服まで結構あった。


「お、靴もたくさんあるな」


 他は代えらしき靴があったくらいだったのに、ここは十足もある。なんの商売してたんだ?


 ポリ袋に放り込み、服も適当に放り込んだ。


「一つの家で八袋になったな」


 こりゃ選別しないと仕分けるのが大変そうだな。


 前は根こそぎ回収して選別は他に任せていた。今回はオレがやらなくちゃならないんだから根こそぎは止めておいたほうがいいな、こりゃ。


「オレは靴を中心に回収するか」


 巨人の靴は皮を巻いたようなものだった。街を歩く靴と山を歩く靴ではちがうだろうが、あの皮を巻いたようなヤツよりはマシだろうよ。


 靴だけを集めて回り、十四時になったからRMAXのところに戻った。


「お疲れさん。結構集めたな」


 二人は戻っており、ポリ袋が山となっていた。


「うん。ありすぎて十三時くらいに戻ったよ」


「剣とかあったか?」


「剣はなかったけど、包丁はあったよ」


 作業鞄に二十本近い包丁が入っていた。残るヤツには必要かもしれんな。


「工房を探すか」


 冒険者相手の武器屋は粗方探って回収したが、これだけの街なら剣とかを

作る工房があるはず。それを探すとするか。


「マルゼ。高いところに登って煙突を探してくれ」


「任せて」


 すぐに屋根に登っていった。身軽だな~。


「おじちゃん、北に煙突がたくさんあったよ!」


「じゃあ、そこに向かってくれ! マリル。RMAXで追ってくれ。オレは荷物をホームに入れたら向かうから」


「了解」


 荷物を抱えてホームに入った。


「てか、回収するよりホームに入れるほうが疲れるよな」


 パレットに積んでフォークリフトで入れたほうが早かった。次はそうしよう。


 回収品を入れたら二人の反応を追っていくと、煤の臭いが濃いところに入った。


「工房町か?」


 石造りの家が並び、十メートルくらいの煙突が聳えていた。


 その一つに入ると、壁に鍋がかけられており、作りかけの鍋が散らばっていた。


「鍋もいただいていくか」


 一家に一つか二つは必要だろうからな。


「──おじちゃん。剣があったよ」


 マリルから連絡が入り、そちらに向かってみた。


 一階建ての工房が多い中、ここは二階建てで、煙突も三本も立っていた。


「おじちゃん、こっち」


 眺めていたらマリルが現れ、工房の中に入った。


「おー。いっぱいおるな~」


 樽に作りかけの剣が何本も入っており、壁には見本の剣が飾られていた。


 ……工房は作品を壁に飾るものなのか……?


「マリル。切れ味よさそうのを外に運んでくれ。パレットに積み込むから」


「了解」


 工房の庭は積み込み作業場でもあるようで、馬車が回れるくらい広かった。


 ホームからパレットを運び出し、近くにあった空の樽を載せて、それに剣を入れることにした。

 

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