第1022話 スカイブルー
「こんなものでいいか?」
枝を使った小屋が一つ完成した。
雨風が防げるように葦みたいなもので屋根が作られ、壁は土で作られた。
「巨人ってやっぱり器用なんだな」
「このくらい子供でも作れる」
確かにサイズ的にはオレが犬小屋作るようなものか? いや、作ったことはないけどさ。
「これをあと五つくらい作ってくれ。あればあるだけいいんでな」
「わかった」
「あと、この拓けた場所を囲むように穴を掘ってくれるか? 獣が入れないようにしたいんだ。さっきの食べ物を渡すんで頼むよ」
「この辺はマギュルスがいるから柵のほうがいい」
「マギュルス?」
「狼の一種だ。あいつらは穴を簡単に飛び越えられる」
「そうなると長いことかかるが構わないか? もちろん、その間の食料はこちらが用意するよ」
「族長と相談してくる」
すぐに族長に相談すると構わないとのことだった。
「どこかに向かう途中じゃなかったのか?」
「冬は食料を探してあちらこちらを歩いている。食料があるなら滞在するほうがいい。ここなら水の心配もないからな」
あの水を飲むんだ。どんな胃をしてんだか。病気にならないんだろうか?
巨人の中に老人と思われる者はいない。生きられなかったのか、捨てられたのか、そこは問わないでおこう。そうしないといけない理由があるんだろうからな……。
「それなら冬の間、オレに雇われないか? 食料の他に鉄の武器、衣服を用意しよう。また族長と相談してきてくれ」
「わかった」
と、すぐに駆けていき、族長を連れて戻ってきた。
「お前に雇われるのは構わない。だが、なぜそこまでするのだ?」
「オレは今、ソンドルク王国とマガルスク王国との道を造ろうとしている。その真ん中がここだ。ここを休憩地としたい。だが、オレはマガルスク王国に用がある。その間、マーダ族がここを築いて欲しい。その礼として食料、鉄の武器、衣服を用意する。巨人がやってくれるならそのくらい安いくらいだ」
マーダ族がなんのために放浪しているかはラダリオンも知らず、それが声に上がることもなかったそうだ。
オレも尋ねるつもりはない。下手に関わると大変なことになりそうだからな。急ぎでないのなら利用させてもらうだけだ。
それに、ラダリオンがいた一族。ちょっと興味があったのだ。どいつが親かも知っておきたかったのだ。
「……そうか。冬の間でいいのなら仕事を請けよう」
「助かる。報酬を運んでくるので何日かここを離れる。柵を作っておいてくれ。どうするかは任せる」
「わかった。進めておこう」
ミサロが戻ってこないのでホームに入って戦闘強化服に着替え、ブラックリンを外に出した。
「じゃあ、頼む」
そう言って飛び立ち、ミサロを探した。
ルースミルガン改の反応は辛うじて捉えているので問題なく合流できた。
「ミサロ。マナックが足りているなら自治領区に向かうとしよう。どうだ?」
「大丈夫よ。向かいましょう」
「了解。オレが前に出るついてきてくれ」
何度か飛んだところ。発信器と山の位置で迷うことなく森を抜けた。
ここまで飛べば迷うこともない。すんなり自治領区に到着できた。
「遅れて悪かった。問題は?」
「ありません。平和なものです」
「そうか。それはよかった。マルグ、どこにいるかわかるか?」
「子供たちを連れて周辺探索に出ています」
「子供たちと?」
「はい。十五、六のヤツを集めて探索に出させました。やらせることもないので鍛えることにしました」
まあ、仕事らしい仕事もない。今は家を作ったり畑を耕すくらいしかやることはないだろうよ。
「ミサロを冬の間だけ自治領区に置くから畑を耕してくれ。あと、プライムデーが近づいているから小まめに見ておいてくれな」
値段が八割引きになるのですぐにわかるはずだ。
「はい、わかりました」
「ランティアックで集めたもので使ってないものはあるか?」
「はい。あの倉庫に入れてあります」
「途中の湖で巨人の集団と出会ったから少しもらっていくな」
「巨人ですか?」
マーダ族のことを語って教えた。
「お嬢の一族ですか」
「まあ、昔のことだ。お前たちが気にすることはないさ。仮にこちらにきたときは訊かれるまで黙っておいてくれ」
「わかりました。皆に徹底させておきます」
「よろしく頼むよ。ミサロ。オレは荷物をホームに入れたら巨人のところに戻るな。あとは任せるよ」
「ええ、任せてちょうだい。ルースミルガン改、わたしも使いたいから用意しておいてよ」
よほど気に入ったようだ。空を飛ぶのを嫌っていたのにな。
「了解。色の指定はあるか?」
「んー。青がいいかな? 空の色」
スカイブルーか。ミサロはその色が好きなんだ。
「じゃあ、造るように言っておくよ。ルースミルガン改を使いたいときは言ってくれ。そのときはガレージに入れるから」
「うん、わかった」
うんと頷き、倉庫に向かい、必要ものをホームに運び込んだ。
大体のものを運び込んだらすっかり陽が暮れてしまったが、すぐに戻れるとルースミルガン改に乗り込み、夜空に飛び上がった。
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