第1018話 ゴブリンの妊娠
ドワーフのところ──自治領区に到着した。
まあ、本格的に決めたわけではないが、名称もないのも不便なので自治領区とした。
ラダリオンが使っていた場所に着陸させると、ロズたちが集まってきた。
「元気そうでよかった」
ラダリオンや雷牙から話は聞いているが、こうして直接顔を見るとホッとする。奴隷だったドワーフに誇りを持たすのはなかなか大変だろうからな。
「はい。お陰様で」
「雷牙は?」
「狩りに出かけています。魔物が減ってから鹿や猪が出てきたんです」
魔物が減ると鹿や猪が現れる? そういう食物連鎖なのか?
「まあ、食料になるから問題ないか」
雷牙が狩りに出ているならボウズはないだろう。あ、ホームに運ぶか。
「ホームで雷牙を待つよ。なにか必要なものはあるか?」
「ミサロさんを呼べないですかね? 農作業を知る者が少なくて畑を作るのも困ってまして……」
「うーん。どうだろう? ちょっと相談してみるよ」
コルトルスの町も畑を拡大している。そこでミサロが離れてもいいのかわからんからな。まずは相談だ。
「お願いします。他は間に合っています」
「わかった。区長にしたダルスはどうしてる?」
コラウスで教育を考えていたが、顔も知らないヤツを代表にするのも問題だと、まずはここで区長として育ってもらおうってことにしたのだ。町としての機能もここに欲しいんでな。
「住民票を作っています」
「そっか。今のところここに何人くらいいるんだ?」
「千人に近づこうとしています」
もう千人か。種としては少ないが、集団としてはかなりの数だな。食料は今のところ問題ないとしても来年は冬を越せるかどうかだな……。
「わかった。またあとでな」
そう言ってホームに入ると、タイミングよく雷牙が入っていた。
「あ、タカト。猪が大量発生だよ。狩っても狩っても追いつかないくらいよ」
「そんなにか? 豊かな森なんだな」
ミロイドの町からランティアックまで約二百キロ。命が育まれるには充分な広さだとは思うが、いくつもの命が大量に発生するものなのか? この世界、バランスが悪すぎだろう。いや、それは最初からでした!
「うん。解体してホームに運び入れるね」
「わかった。トレーラーに積んで出しやすくしておくよ」
解体した猪が運び入れられ、天井クレーンを使ってトレーラーに積み込んだ。いや、何匹狩ったんだよ!?
トレーラー一台では足りないので一度外に出すことにした。
「猪を運んでくれ!」
ホームに入るところには見張りが立っているようで、呼ぶとすぐに集まってきてくれて猪を降ろしてくれた。
「まだまだあるみたいだから次も備えておいてくれ」
ホームに入ると八頭くらい入っており、また天井クレーンで積んで外に運んだ。
計四回。約百匹を運び出した。
「ふー。凄い数を狩ったもんだよ」
ラダリオンやミリエルも入ってきたので一時間くらいでなんとか終われた。
「タカト。おれは明日帰るから」
百匹を一人で運んだのにまったく疲れを見せない雷牙。あの小さな体のどこにエネルギーを秘めてんだかな。
「──あら、なにかあったの?」
大きな卵を抱えたミサロが入ってきた。
かくかくしかじかと説明した。あと、卵はガーグルス(恐鳥類的なヤツ)だってさ。
「ガーグルスが卵を産み始めたからいろいろ作ってみるわ」
「コルトルスの町でもガーグルスを飼ってたっけ?」
その辺の情報はミリエルが管理してくれてたから忘れていることが結構あるんだよな。
「今は六匹飼っているわ。うち四匹がメスよ。ロンレアでは子が三匹産まれたって」
なんかいろいろ忘れてんな。行動範囲が広がった弊害か。
「なあ、ミサロ。自治領区で農作業を教えて欲しいって言われたんだが、移ることは可能か?」
「んー。四十日くらいなら大丈夫よ。種蒔きは冬の終わりくらいだから」
「駆除員がいなくても問題ないか?」
「補給をしてくれるなら大丈夫よ。リン・グーもいるしね」
「あいつはちゃんと受け入れられてんのか?」
ゴブリンなせいで興味もなければ気にもならないんだよな。
「受け入れられているし、結構男から人気よ。見た目はいいしね」
見た目、よかったっけ? かなり人間には近づいていたが、本当に興味がないからそういうことも判断できんのだよな。あるのは利用してやろうって気持ちだけど。
「あいつ、子供とか産めるのか?」
見た目は三十手前くらいだったはず。ゴブリン的にはどうなんだ?
「産めるみたいよ。これまで三十人は産んだってさ」
「三十!? そんなに産めんのか?!」
いくらなんでも産みすぎだろう!
「ゴブリンの、リン・グーの場合、妊娠期間は五から六ヶ月みたいよ。ただ、産まれるのはゴブリンみたいで、知能もないに等しいみたいね」
人間形態なのに産まれるのがあんなとか気持ち悪いにもほどがあるな。
「人間でも同じなのか?」
「人間としたことがないからわからないみたい。産まれたらどうする?」
「ゴブリンなら殺す。人間の割合が多いなら育てればいいと思うぞ」
酷いことを言っているのはわかる。だが、ダメ女神にそういう思考にされているから仕方がないんだよ。
「そう。リン・グーにはそう伝えておくわ」
「ああ、伝えておいてくれ」
まったく、面倒なことがまた増えたよ。
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