第1009話 *孝人* ルンダリア
「うん。やっとガレージを拡張できたぜ」
皆の働きにより約七千万円がプラスされ、二千万円をガレージの拡張に使えた。これによりルースミルガン改を入れることが可能となりガレージを四階まで増やすことができたのだ。
本当は皆に一部屋ずつ与えようとしたのだが、別に今のままで構わないとのことだった。
「これでプライムデーにホイールローダーを買えばとりあえずは落ち着くな」
贅沢を言うならルースブラックを入れられるまで拡張したいものだが、アレクライトやミルズガンと補給しなくてはならない。マガルスクの王都を強襲するまでは五千万円は残しておきたい。ここで納得しておこう。
外に出てルースミルガン改を入れて、小さな貨物ボックスに武器やサバイバル用品を入れていると、ラダリオンが入ってきた。
「ご苦労さん。ドワーフの移動は順調か?」
「うん。友達もできた。腕輪、返してもらえない?」
友達? ドワーフのか? なんなんだ、突然? なんの友情物語があったんだ?
「そ、そうか。ミリエルに言っておくよ」
せっかくできたラダリオンの友達。モニスには悪いが、ラダリオンのために我慢してもらうとしよう。
「カインゼルさん、側にいるか?」
「うん。明日の用意してる」
今の時刻は十一時過ぎ。まだ時間はあるな。
「ラダリオン。昼飯食ったらオレをダストシュートしてくれ。カインゼルさんと話がしたいから」
報告だけではわからないこともある。現場の空気を知っておかないと全体の空気もわからなくなる。シエイラも落ち着いているし、ここらで現場に出向くとしよう。長距離移動が可能になったんだからな。
「わかった。伝えておく」
トイレに入ってきたようで、ガレージのトイレに向かった。
「ルシフェルさんに話しておくか」
おれはほとんどの時間をホームの中で過ごし、飯を食ったあとに定時連絡として外に出ている。もし、二回出でこなければなにかあったとして、全権をルシフェルさんに託すようには決めている。
外に出て、食堂に移ったルシフェルさんにしばらく留守にすることを伝えた。
「こちらは大丈夫だからゆっくり回ってきて構わないわ。あ、巨人になれる指輪を置いてってもらえる? 巨人の町で結婚式があるそうだからギルドとしてお祝いの品を贈りたいからね」
「へー。結婚式なんてやるんだ」
ゴルグからそんな話、聞いたこと……あったっけ? 記憶にねーや。
「いろいろ物資も増えて、人が分散したからね。数を抑えていた鬱憤が弾けたんでしょう」
確かに巨人が増えすぎると滅亡の道しか見えないな。
「マガルスクにも移ってくれると助かるんですけどね」
「今は無理でしょう。子供が増えてからになるでしょうよ」
コラウスにいる巨人は四百から五百人。そのうち百人は外に出た感じだろうか? 二割も出たら生活が回らなくなるだろうよ。
「コラウス以外に巨人っていないんですか?」
「どうかしら? ラダリオンがいた一族くらいじゃない?」
ラダリオンがいた一族か~。八十人くらいはいたって話だったな。今、どこをさ迷っているんだか。
「そうですか。いないなら仕方がないですね。増えるのを待つとさしましょう。では、いってきますね」
「ええ。いってらっしゃい」
巨人になれる指輪を渡してシエイラの部屋に向かった──らいなかった。散歩か?
まだまだ動けるようで、いろんなところに出歩いているのだ。もちろん、ドワーフの女性陣がついててくれるがな。
仕方がない。出ているならどこかで昼を食べてくるかもしれない。待ってもいられないので伝言でも頼むか。数日で戻ってくるしな。
変なフラグを立てないよう職員に伝言を頼んでホームに入った。
昼飯を食ったら雷牙とミサロには伝え、ラダリオンにダストシュートしてもらった。
「ドワーフがたくさんだな」
百人くらいは集まっており、昼飯を食っていた。
……ちゃんと人の目をしてんな……。
ランティアックにいたドワーフは死んだ魚のような目をしていた。ちゃんと誇りを持たせたら人になるもんなんだな。
「タカト」
周りを見ていたらカインゼルさんがやってきた。
「お疲れ様です。補給は足りてますか?」
「ああ。たくさん稼げたからな。物は足りておるよ」
「それはなによりです。情報をもらいますね」
カインゼルさんのプランデットから情報をもらい、こちらからも情報を渡した。
「まずどこを目指します?」
「ラーニャルクってところだ。ここから二十キロくらいの距離で舟運都市とも言われているそうだ」
マガルスク王国は平野が二つあって、ミルズガンとルンダリアと呼ばれているそうだ。
「基本、カインゼルさんの判断に任せますが、交渉相手がゴブリンなら話を聞かなくていいです。駆除してください。あとのことはオレがなんとかしますんで」
「ふふ。お前ほどいい上官はいないよ」
「味方の命が最優先です。他は二の次です」
下の命を守れないようでは上を守ろうとは思わない。命大事にはそういうことだ。
「了解した。部下の命は必ず守ろう」
絶対的信用できる言葉ににっこり笑った。
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