第1006話 *ラダリオン*
「──タカト、じーちゃんたちが合流した」
直接見たわけじゃないけど、じーちゃんなら問題なくルクロたちと合流するさ。
「ご苦労様。思いの外、北にズレたか」
ホワイトボードにそれぞれの配置を見ながら答えた。
あたしにはまったくわからないけど、マリットル要塞を攻撃をしている魔王軍の動きを読んでタカトが皆を動かしている。
「魔王軍は力任せしか知らないのか?」
大軍を動かすのは難しいとタカトは言っていた。でも、ゴブリンの動きは単純だ。エサを求めて集まってくる。ただ数に任せて暴れているだけなのはあたしにも理解できた。
「ラダリオンが駆除した数を考えるとマリットル要塞に向けられたのは六万から七万って感じか。本当に十六万だけか? 二十万は超えてないか?」
考え込むタカト。あたしは何十万匹いようと構わない。ただ潰してやるだけだ。
「じーちゃんたちはいいの?」
「まあ、問題ないだろう。ラダリオンは途中にいるゴブリンを駆除しながらマリットル要塞に向かってくれ。さすがにカインゼルさんたちばかりに向けられるわけにもいかないだろうからな。仮に向いたところでアルズライズなら背後を強襲するだろう。あいつは臨機応変に動いてくれるからな」
まあ、じーちゃんと同じくタカトを理解している人。どう動いても合わせられるだろうね。
「ラダリオンは休んでいいぞ。朝から動きっぱなしだしな。今日はゆっくり休め」
「わかった」
まだ動けるけど、じーちゃんたちにも稼がせてやらないといけない。ここは素直に休むとしよう。
「あ、明日はEARを使ってくれな。ミリエルのほうでショットガンを配備したから弾がないんだよ。プライムデーに買うからそれまでEARを使ってくれ」
「わかった」
仕方がない。弾代だけで凄い出費になる。節約できるところは節約するべきだ。でないとおかずが減っちゃうからね。
「それなら鞭を使ってもいい? 巨人の姿なら有効だと思う」
「鞭なんて使えたのか?」
まあ、タカトの前で使ってないしね。不思議に思われても仕方がないか。
「暇なときに練習してた」
鉱山の町ではやることもない。暇だから鞭だけじゃなく弓矢の練習もしてた。
「そうか。巨人が使ったらとんでもない威力になりそうだな。エルガゴラさんに強化してもらうか。ミリエル、ちょっといいか?」
タカトが中央ルームにいったので、装備を外し、とぅえるぶをガレージに仕舞った。
「お帰りなさい。鞭を貸して。エルガゴラさんに魔法をかけてもらってくるから」
部屋着に着替えたミリエルが玄関にあるコートを羽織った。
鞭はレッグバッグに入れてあるので、出して渡した。
「お風呂沸いているから入っちゃいなさい」
「うん」
お風呂に向かって熱いシャワーを浴びるとお腹が急に空いてきた。栄養剤は消化が早くていやになる。
「ミサロ。お肉食べたい」
「ラダリオンはいつも肉でしょう」
そう言ってあたしの顔くらいあるハンバーグを出してくれた。
ミサロのハンバーグ、大好き。もう既製品のハンバーグは食べれなくなるくらい。
三つ食べたらお腹が満ちてきたのでケーキのホールで味変。舌がリセットされたらシメでマシマシのラーメンを食べた。
「ラダリオン、アイス食べる? 新発売っぽいの出たみたいだよ」
ライガがタブレットを見せてくれた。
「お前たち、まだ食うのか?」
お酒を飲んでいるタカトが呆れている。
「アイスは別腹」
「うん。アイスは別」
ライガは小さいけど、あたしの次くらいによく食べるのだ。
「歯、しっかり磨けよ」
「わかってる」
歯は命。死ぬそのときまでお世話になるのだから歯磨きはしっかりする。
「あたし、寝る。朝ごはん前に少し移動するから早く起こして」
「別に急ぐこともないんだぞ」
「ううん。たぶん、ルンとかなくなっちゃうだろうから明日の昼前までは要塞に着くようにする」
かなりの数がいた。出した分は使い切るはずだ。明日の夕方には補給を届けないと。
「そうか。アレクライトのルンは充填されているのか?」
「常に百個は充填させているよ」
答えたのはライガ。あたし、アレクライトのことはまったくわからない。
「あ、あたし、アレクライトに入れないけどいいの?」
「港に入っているなら問題ないさ。ラダリオン。補給分は用意しておくからダストシュートさせてくれ」
「わかった。おやすみ」
歯をしっかり磨いたら部屋に向かってすぐに眠りにつき、ステーキの匂いで目覚めた。
「あなたはどんな目覚ましよりよく焼けたお肉が一番ね」
起き上がると、ミサロがフォークに肉を刺して呆れていた。
「何時?」
「六時前よ。鞭は玄関にあるわ」
横を見ると、アイマスクにヘッドホンをしたミリエルがぐっすり眠っていた。
相変わらず奇妙なスタイルで寝るよね。
ミサロから肉を刺したフォークをもらい、洗面所で口をゆすいだら肉を食べた。うん、美味しい。
駆けるのにちょうどいい装備に着替えたら鞭をつかんで外に出た。
ゴブリンの血肉に鼻が曲がりそうになる。銃声が響いてないところをみるとゴブリンは去ったみたいだ。
要塞のほうにしばらく走ると、たくさんのゴブリンが歩いているのが見えた。
「要塞のほうに向かっているのかな?」
追いつくと面倒なのでホームに入った。今日を生きるためにたくさん食べてから後方からゴブリンを鞭で薙ぎ払ってやった。
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