第1005話 *カインゼル* 海兵隊
「ざっと二万匹は駆除したか?」
あまりにも多すぎで途中から数えるのも面倒になってしまった。隊員の報酬を確認し、たぶん、二万匹はいったんじゃないか? って感じだ。わしはそんなに計算が得意ではないのだ。
「稼げるのはよいが、消耗が激しすぎるな」
AKは乱暴に扱っても作動するはずなんだが、休みなく撃っていたら作動しなくなり、大体の者は三代目になっている。弾もすぐなくなるから長時間戦闘ができない。
「駆除員がいないと苦労しかないな」
なんとかやってられるのは稼げているから。でなければとっくに撤退しているところだ。
……さすがの隊員も疲労が留まってきているな……。
もう四日も休まず、木の上で仮眠するていど。さすがのわしも体が重くなってきておるよ。
「──こちらルースカルガン一号艇。カインゼル、聞こえるか?」
プランデットからラオルスの声がした。
「聞こえるぞ」
「生きていてなによりだ。そこから北東に向かえ。ラダリオンがいる。そこに一旦ドワーフのキャンプ地を築く。応援に回ってくれ」
ライガと交代したのか。思いの外、ドワーフがいたのか?
「了解。すぐに向かう」
まだ夜中だが、ラダリオンがいるなら補給はできるし、安心して休める。木の上で朝を迎えるよりマシだ。
「ゴルス! マイガス! 移動する! 至急準備をしろ!」
すぐに用意させて北東に向かった。
ゴブリンの群れから離れたが、あいつらの嗅覚は尋常じゃない。こちらの臭いに気がついて集まり出してしまった。
「カロリーバーの匂いを嗅ぎつけたか?」
それだけエサに困っているのだろう。飢餓に任せての攻撃は面倒で仕方がないな。
「戦闘は避けろ! 先を急ぐぞ!」
弾薬は万全でも相手できる数は決まっている。熱量からして千匹以上は集まってきている。とてもじゃないが相手などできんわ。
「急げ! 追いつかれるぞ!」
あちらも必死。どんどん近づいてきている。これは追いつかれるな。
いい大岩があったの背後にして迎え撃とうとしたら地響きがした。これは!
「大岩の下に隠れろ!」
隊員に叫び、大岩の隙間に飛び込んだ──直後に強い衝撃が大地を伝わってきたのでマルチシールドを全開にした。
次に銃声が連続で聞こえ、ゴブリンの悲鳴があちらこちらから聞こえてきた。
「大隊長! なんですか?!」
「ラダリオンだ! 岩陰に移動しろ!」
こんなナイスタイミングで現れるのはセフティーブレットのアタッカーであるラダリオンしかいない。
AA-12を使っているのだろう。ラダリオンが使うと本当に凄まじいものだ。
駆除員の子孫の魔法で弾が供給されるが、さすがに集まってきたゴブリンを全滅させるのは無理だったようで、マルダートを投げたのだろう。とんでもない爆風が襲ってきた。
「あいつは何発爆発させる気だ?!」
マルダートはそんなになかったはず。それともたくさん当てたのか? もう十個は投げている。一面焼け野原になるぞ。
投げるのを止めたようで爆風が襲ってくることはなくなった。
「よし。今のうちに移動するぞ」
おそらく補給のためにホームに入ったのだろう。今のうちに移動するとしよう。
全力で走ると、前方に篝火が見えた。
こちらもライトをつけて存在を示す。撃たれたら堪らんからな。
「海兵隊だ!」
「カインゼル様! 派遣小隊のルクロです!」
ルクロか。わしの顔を知っているヤツがいてよかった。話が通りやすくなる。
簡易的な柵の中に入ると、ドワーフが二十人くらいいた。
「ルンはあるか?」
「お嬢が出しててくれてます。百はあります」
ラダリオンはその辺の配慮は不得意だからタカトが気を効かせてくれたのだろう。あいつは全体を見ているからな。
「助かる。全員、ルンをつけろ。ゴブリンがくるぞ!」
さすがのラダリオンでも一人で相手できる数には限界がある。駆除し切れなかったのがいるはず。
「ルクロ。全員、請負員となっているか?」
「はい、なっています。EARの使い方も教えました」
「よくやった。ゴブリンがくるからしっかり稼げよ」
おそらくマリットル要塞に張りついていたゴブリンもこちらに流れてくるはず。ここが最前線となるはずだ。
「隊員は今のうちに腹に入れておけ。始まったら食えなくなるぞ」
大量のゴブリンが近づいてくるのが肌でわかる。二万や三万では効かんぞ。
「カインゼル様。お嬢からの伝言です。後方を攻撃したらアルズライズ様と合流するそうです」
「補給は?」
「たくさん出してくれました。あとは同胞に運ばせるそうです」
「なら問題ないな」
マンダリンまで出しててくれたか。これで守れなければタカトに顔向けできんな。
「熱源多数! 距離五百! きます!」
「さあ、撃って撃って撃ちまくるぞ! この一帯の肥やしにしてやれ!」
おおっと野太い返事が響き渡った。
フフ。日に日に戦士になってきておる。これなら竜人と戦える日もそう遠くないかもな。
「照明弾、撃て!」
プランデットをしているから暗闇でも問題ないが、こういう場合は高揚させる必要があるのだ。
すぐに四つの照明弾が打ち上げられ、押し寄せるゴブリンの姿を照らした。
くるわくるわのゴブリン祭りだな!
「構え! ギリギリまで引きつけろ!」
常人なら気が狂いそうな数だが、わしらにはご褒美を運んできてくれる幸運の使者でしかない。
「撃てぇぇぇっ!」
叫び、魔力弾を吐き出した。
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