第1002話 *雷牙* 交代
「……かなりの数だな……」
プランデットに入れた映像を見たタカトがため息のように呟いた。
要塞から逃げ出すヤツが多く、こちらが美味そうな匂いを立てているとゴブリンどもが寄ってくる。
こちらがドワーフばかりだと知ると力ずくで奪いにくるから容赦なく駆除してやる。で、取り残されたドワーフを引き取ることになる。
その繰り返しで今や二百人を突破。明日にはさらに増えていると思う。ゴブリンを埋めるところもなくなってきたよ。
「どうしよう?」
「うーん」
唸って考えに入ってしまった。
おれがもっと頭がよかったらタカトに相談することもなかったのに、こうやって問題があるとタカトを頼ってしまう。戦いだけじゃなく頭も鍛えないと。
「……雷牙、ラダリオンと交代してくれるか? ラダリオンに道を切り開いてもらってドワーフをマガルスク王国側に移動させるとしよう」
「わかった」
タカトが悩んで出した答えなら従うのみ。嫌だはない。
「悪いな。せっかく慣れたところで交代だなんて」
「大丈夫だよ」
申し訳なさそうなタカトに笑ってみせた。
「おれも駆除員。必要な場所ならどこにでもいくよ」
臨機応変に動けてこそ駆除員だとミリエルに言われた。一ヶ所に固執はしないさ。
「ありがとな。ラダリオンと交代することをマグラスに伝えてくれ。そこからアレクライトに連絡はできるようになったか?」
「うん。マリットル要塞に発信器を打ち込んだみたいで連絡は取れるようになったよ。ホームに入る前にアルズライズが要塞に入ったって連絡が入った」
「もう入ったのか。話のわかる指揮官ならいいんだけどな」
まあ、アルズライズなら話のわからない指揮官ならさっさとみかぎって出てくるだろう。アルズライズを止められるヤツなんていないんだからな。
「じゃあ、伝えてくるよ」
「アレクライトにも伝えておいてくれ」
「了解」
そう返事をして外に出た。
少しホームに入っていたのにまたドワーフが増えて、ゴブリンが血を流して倒れていた。また物資を運んでこないとダメか?
「ライガ。また増えた」
「みたいだね。増えたヤツには食事を摂らせて休ませて。これ以上増えても対処できないからラダリオンにきてもらうようになった。おれはロズのところにいくよ」
「お嬢がですか?」
「うん。マガルスク側まで道を切り開いて人を移すってさ」
「そうですね。それがいいと思います。マリットル要塞の周辺には村や町があるみたいなのでそこに移動させます」
「うん、そうして。ラダリオンなら拠点作りが得意だし」
「わかりました」
「戦えそうなのは集まった?」
「はい。三十人は集まりました。ガイズに指揮をさせています」
指揮できるって羨ましいよな。おれにはそんな力もないから誰かの下につけられている。仕方がないとは言え、悔しいよな。
「了解。アレクライトにこのことを伝えたらホームに入るからあとはラダリオンに伝えてよ」
「わかりました。あちらもお願いします」
「うん。誰も死なせないようにするよ」
あちらなら最前線に出れる。もしかしたらあちらのほうが活躍できるかもな。
プランデットをかけてアレクライトに通信を送ると、すぐに出た。
「こちらアレクライト。ライガ様、どうかしましたか?」
「ライガでいいよ。タカトからラダリオンと交換するように言われたからアルズライズに伝えて」
「了解。船長に伝えておきます」
「ありがと。あと、人がまた増えたからカロリーバーやブラッギーを届けてよ」
「了解。届けさせます」
通信を切り、マグラスに声をかけてホームに入った。
ホームにはラダリオンが入っていて、タカトから説明を受けていた。
それが終わればラダリオンをダストシュート。おれもタカトから説明を受けた。
「そこにドワーフの自治領区を創るの?」
「ああ。将来的にはコラウスまで道を通す計画だ。雷牙は山から出てくる魔物を痛めつけて魂まで恐怖を植えつけてやれ」
「了解」
おれにはそれが合ってるな。
「まずは館にダストシュートする。明日の朝、ルースカルガン六号艇で向かってくれ」
館か~。まあ、ダストシュート移動は便利なようで不便なところがたくさんある。重要な場所を優先するしかないか。
「それならマルグに会ってきてもいい?」
「ああ、構わんよ。なんなら泊まってきてもいいぞ」
「うん、そうする」
マルグは体は大きいが、おれより年下。弟みたいなもの。村からなかなか出れないから外の話をたくさんしてやろう。
「マルグも連れていったらダメかな?」
「んー。一度いったらなかなか帰ってこれんからな~。マルグ、ホームシックになるんじゃないか? 一緒に行動してても雷牙がホームに入ったら一人になるしな」
言われてみればそうか。マルグを一人にはできないな。
「まあ、一応、訊いてみろ。一度は家を離れた経験があるんだしな。マルグがいきたいってんなら尊重するよ」
「そうだね。訊いてみるよ」
「無理強いはダメだからな」
「わかってるよ」
「じゃあ、オレはホームにいるからなにかあれば入ってこいな」
「うん。いってきます」
装備を外して外に出た。
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