第991話 メイドゴーレム、リリカ
マーリャさん、容赦ねーな。どんだけ要求してくんだか。
まあ、こんなところに数人で暮らしていたら娯楽や環境がよくないとやってらんないか。
マーリャさんの他に博士のルセラクさんと助手のライリカルさん、元軍人で技術師のレオカルクさんの四人だけ。ストレスも溜まるってものだ。
「こんなもんでどうでしょうか?」
計二百万円は使ったよ。ミリエル。オレと交代するまでしっかり稼いでおいてくれな……。
「まあ、いいんじゃないかしら?」
答えたのはルセラクさん。エルフ復活計画の責任者だ。
少しマッドな空気を感じるが、酒は飲めず、頭を使うからか糖分多めの菓子を常に食っているよ。
「そうですね。一月は大丈夫でしょう」
二百万円を一月で消費するんかい。ゴブリン、駆除しても駆除しても我、楽にならず……。
「それはよかった。あ、ルースミルガンを改造しているって聞いたんですが、どんな状況ですか?」
「できているよ。こっちだ」
レオカルクさんが答え、ルースカルガンがあった場所に連れてこられた。
以前は腐食したシャッターが閉まってあった場所にルースミルガンが置いてあった。
「随分と変わりましたね」
二人乗りなのは変わらないが、翼が折り畳まれており、サイズ的にはハイラックスくらいだ。着陸脚からだと高さは二メートル五十センチはあるかな?
「武装もつけたんたんですね」
「ああ。と言ってもサクシブ──EARよりちょっと高いくらいだし、ロケット弾は左右で六発ずつだ」
「航続距離は伸びましたか?」
「ああ。一回の補充で約四百キロは飛べると思う。マナックは三十個は必要とするがな」
四百キロか。百キロも飛ばなかったことを考えたら別物になった感じだな。
「飛行速度はそのままにしておいた。速くしても魔力の消費が早まるだけ。急ぎならブラックリンを使ってくれ」
ブラックリンはルースミルガンの倍。二百キロだ。そんな広範囲を移動するわけでもない。四百キロも飛べたら大抵のところはその日にいけるさ。
「操縦法に違いは?」
「同じだ。ただ、魔力量の減りが遅くなったから長距離移動時はマナックを入れておいたほうがいいな」
マナック補充は外に出ないとできないんだよな。中からにするとかなりの改造になるそうだ。
「発信器があったらもらえますか?」
コラウスに帰る途中で打ち込んでいこう。
「ああ。四十個はできているから持っていくといい」
ルースミルガンは荷物入れながないのでコンテナに載せてホームに運び入れた。
「また荷物が増えたな」
シエイラは腕だけならホームに入れられるので、ランティアックで回収したものを入れてもらって新たなメイドゴーレム、リリカに片付けてもらっている。
「リリカ。ご苦労様」
「はい。ありがとうございます」
最新のアニメを観てバージョンアップさせたものらしく、受け答えもすむーずになり人形感もない。初めて見たときは人としか思えなかったよ。
「ミリエルはいつ入ってきた?」
「十五時に入ってきました」
懐中時計を見たら十五時三十分を過ぎていた。入れ違いだな。
「わかった。十七時過ぎにはまた入ってくるよ」
発信器を打ち込みながらだから朝に出発したほうがいいだろう。今日は明日の準備をしておくか。ブラッギーやカロリーバーをホームに入れたいしな。
ガレージに移動させられた回収品をパレットに積み込み、空間を空けたら外に出た。
「ブラッギーとカロリーバーは倉庫ですか?」
「ああ。ぎっしり詰まっているよ」
その倉庫にいってみたら確かにぎっしりだった。生産力スゲーな。
パレット積みなので二パレットずつ入れた。
「こんなものか」
ってか、このコンテナボックスの素材ってなんだろう? どこから集めてきてんだ?
「海からさ。昔は資源を海から集めていたんだよ」
「海が枯れたりしなかったんですか?」
「枯れてたよ。それで神が怒って我々を滅ぼしたんだろう。起きて海を見たときは驚いたよ。昔より綺麗になっているんだからな」
女神の力か。変なところで調整するよな。その時代に連れてこられなくてよかった。
「眠る前のことですか?」
「ああ。あの頃は本当に酷いものだったよ。よくあれで生命体が滅びなかったものだ」
巨人やドワーフが生きてんだからなんらかしらのバリアーでも張ってんだろうか? チート勇者が戦うようなことが起きてんのにその影響がまったく伝わってこない。なんらしかの影響はあるはずなのに……。
「子供は産まれそうですか?」
「順調に育ってはいるとは聞いているよ」
試験管ベービーとか聞いたことがあるが、古代エルフは出産もしなくなっていたんだな。性欲はあるみたいだったのに。
「レオカルクさんたちから見て、今の時代はどんなふうに見えているんですか?」
「刺激的に見えるな。こんなに生きている実感を味わったのは初めてだよ。乱暴で不潔な時代だが、それがいいと思えるんだからな」
そういう風に見えて、そんな感じを抱いてんだな。
「生きる時代が違うと見えるもの、感じることが違うんですね」
振り切ってしまうと、ここは生きるのに充実した時代になるんだな~。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます