第990話 ガーゲー(改築中)

 裁縫道具とガレージ倉庫にあった布や古着を持って外に出た。


 戦闘強化服や装備は外している。これなら二、三回は巨人化できるはずだ。


 まずは裁縫道具箱だけを持って巨人化。そう負担は感じない。単純なものだからか? 


 裁縫道具箱をミリーに渡し、続いて布と古着を持てるだけ持った巨人化。ちょっと負担を感じるか。


 すぐに栄養剤を飲んで腹を満たし、落ち着いたら酒を巨大化させた。  


「ふー。久しぶりに巨人になると疲れるな」


 巨人化する状況がなかったから鈍ったのかもしれんな。栄養剤は小中大と二百粒ずつある。今のうちに慣れておくとしよう。


 戦闘強化服に慣れたから普通の装備になると心ともないな。ちょっと頼りすぎかな?


 着ているときはトイレの心配もない。垂れ流し万歳。体温も調整してくれるから冬でも寒くないんだよ。


「冬なんだよな~」


 海沿いだから冷たい風が吹いている。オレ、もしかして冬が苦手だったりする?


「これ、いいな!」


 巨人化させた使い捨てカイロを喜ぶ巨人たち。薄着だったから寒さに強いのかと思ったらそうでもなかった。ただ、厚着できず、薪の消費を抑えていただけだったようだ。


「そりゃ病気にもなるわ」


 よく滅びなかったものだ。もしかして、南国のほうで生き延びてんのかな?


 ランティアックで回収した服をミリーが繕って皆に着させている。巨人って本当に手作業が得意な種族だよ。


 大体必要なものは巨大化させたので、巨人になったままガーゲーを目指すことにする。


 一日栄養剤を飲める量は決まっているが、歩くくらいなら四十分は巨人のままでいられるようにはなった。もしかて、巨人化って慣れなのか?


 そんなことを考えながらガーゲーに到着。巨人化の訓練をしながら移動してたら五日もかかってしまったよ。


 もちろん、定期的にホームに入って各所の情報はもらっていますよ。


「村ができてんな」


 ガーゲーに入ってた洞窟の前に家が何十軒と建っていた。


 エルフではないな。人ここに閉じ籠っていたヤツらか? ロンレアに戻らなかったのかな?


 巨人で現れたが、そう驚くものはいない。誰かきた、ってくらいでオレを見ているよ。


 ……モニスがいたし、そう驚きはないか……。


 巨人化を戻し、村の中に入った。


「ゴブリン駆除ギルド、セフティーブレットのマスターの一ノ瀬孝人だ。ここの代表者はいるか?」


 そう呼びかけると、白髪の老人がやってきた。


「わたしでございます」


「そうか。ロンレア伯爵には許可を得ているのか?」


「残りたい者は残って構わないとお言葉をいただきました」


 十年も住んだら故郷になっていても不思議ではないか。


「そうか。食料は足りているのか?」


「足りております。魔物が消えたので春には畑を起こそうと思っております」


「ロンレアは復興し始めている。無理なときはロンレアに逃げろよ。せっかく生き残ったんだ、家族に見守れながら死ねよ。オレもそんな老後にしたいからな」


 ランティアックで回収したものを取り寄せて村で使ってもらうよう渡した。


「ありがとうございます。いろいろ足りてないものがあるので」


「まだあるからあとで持ってくるよ。急ぎ、なにか必要なものとかあるか?」


「今のところは細々とやれております。エルフの方が食料や薬を提供してくださるので」


 仲良くやれているってことか。それはなによりだ。


「じゃあ、またくるよ」


 そう言って村を突っ切って洞窟に向かった。


 警備兵が増えたのか、洞窟の入口も綺麗になり、階段が下に続いていた。


 三百段はありそうな階段を下りると、通路になっており、古代エルフ語で案内板が壁につけられていた。


「魔力炉があると二十四時間点灯してられるんだな」


 魔力炉は高度な技術らしく、造るには膨大な作業があるようで、ガーゲーでは造れないとか。


 ガーゲーの方向に歩いていると、無人のマンダルーガーがやってきた。なんだ?


「タカトさん。乗ってください」


 マンダルーガーからマーリャさんの声が発せられた。


「ありがとうございます」


 監視カメラがあるんだろうと、後部座席に乗り込んだ。


「では、発車させます」


 マンダルーガーが動き出し、長い通路を四十キロくらいで走り、五分もしないで港に出た。


「ここも変わったな~」


 沈んでいたクーズルースが浮かんでおり、警備兵が修理しているところだった。


「あれが動けば三隻になるのか」


 輸送力が増えるのはいいが、セフティーブレットから物資は出せんぞ。


「扉を開きます」


 管制室へと上がる扉が開いた。入れないようにしてんのかな?


「てか、ここ。エレベーターってないな?」


 なぜかどこも階段で昇降するしかないんだよな。古代エルフは健康的だったのか?


 三階建てくらいの高さにあるから苦ではないが、エスカレーターくらいは欲しいよな。


「お久しぶりです」


 管制室も改造したようで、なんか秘密基地っぽいところに変わっていた。


 ……このまま宇宙に発進しそうな感じだな……。


「ええ、久しぶりです。駆除員がこないから困ってましたよ」


 元の時代の暮らしを完全に忘れたんだろうな。古代から着ていた服ではなく、よれよれのつなぎを着ているよ。


「それはすみません。必要なものがあったら言ってください」


 健康より精神的に健やかでないとここで暮らすのは大変そうだからな。

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