第988話 *ミリエル* 3
ドワーフ族自治領区。
それを創る前に中央委員会を設立しなくてはならない。
区長にダルス。委員として五人を選出してもらい、教育を施すことにする。
「ミリエル様。サイルス様たちがきました」
あ、そうだった! あちらにも連絡を入れなくちゃならなかったんだわ。
「こちらに通して」
そう指示を出して委員会議所(タープを張ったていどのところだけどね)にサイルス様とモリスの民である請負員がやってきた。ラダリオンから報告がいったのかな?
「すみません。報告が遅れてしまいました」
「いや、構わない。ちょうどゴブリンの群れに遭遇したから助かったよ」
助かったのらこちらだ。もっと気を引き締めないとタカトさんを支えられないわ。
「どんな状況なんだ?」
ダルスたちを紹介したら自治領区の説明をした。
「なるほど。自治領区か。タカトの提案か?」
「いえ、タカトさんだと国を創りそうなので自治領区にしました」
「……そんな知識まであったんだな」
モリスにも自治区はあった。小民族を纏めるために設けたところが。うっすらと学んだ記憶があったけど、小さい頃の記憶。せっかくだからとソンドルク王国の歴史をロンレア伯爵に教えてもらったのよ。
「ロンレアの伯爵様から聞いたていどです。本格的な知識はタカトさんの世界のものですね」
「タカトの世界にもそんなものがあるんだな。マガルスク王国に創るのか?」
「ソンドルク王国に連れていきたいところですが、さすがにこの人数を連れていくのは無理ですからね。ランティアックに創ろうかと思います。タカトさんなら許しを得るくらい簡単でしょうからね」
「普通なら許されないんだが、タカトだと簡単にできてしまうから呆れてしまうよ」
自然にやっているようでちゃんと計算ずくだから凄いのよね、タカトさんって。
「コラウスから役人って呼べませんかね? 教育をお願いしたいんです」
「そうだな。稼げたし、一度戻って話してみるか」
「そのときダルスを連れてってください。領主代理様の教育を施していただけると助かります。ドワーフ族の移動はゴルたちにやらせますので」
「ダルス。どうする? お前が決めろ」
やはり領主代理様の夫であり冒険者ギルドのマスターだった人。大事なところはちゃんと押さえているわ。
「……お願いします。連れてってください」
ダルスも覚悟は決まったようね。嫌々やらされているわけでもないようだわ。
「統治者は孤独であり損しかしない。幸せな未来とは言えないでしょう。それでもあなたは区長として立とうとするかしら?」
きっと辛いことしかないでしょう。恨まれることもあるでしょう。地位なんてないほうがいいわ。
わたしも上になって立ちたくない。タカトさんが立っててくれるからわたしはやれているのよ。
「そう脅すな。地位や名誉に溺れなければいいだけだ。仮に溺れたとしてもタカトがそうさせんよ。あいつは上や下の感情に敏感だからな。素早く察知して対処するさ」
きっとゴブリンとして駆除するのでしょうね。まあ、わたしが先に動くけど。タカトさんの手を汚させないわ。
「お前は無自覚だろうが、タカトのことに過敏になりすぎだ。周囲にバレているぞ。もっと心を隠せ。タカトが心配するぞ」
わたし、そんな感情を出してた? それをタカトさんも知っているの?
「それがダメだと言っているんだ。感情をコントロールしろ」
そ、そうだ。感情のコントロールだ。出してダメなときこそ柔らかく微笑め、だ。
幼少期に習ったことを思い出して感情を抑え込んだ。
「お前は微笑みながら冷徹に動くほうがタカトの力となる。あいつは辛いときこそ平然としているからな」
それに気がつかずタカトさんを支えてあげられなかった。あのときの失敗は二度としないわ。
「はい。そうします」
にっこり笑って答えた。
「それでいい。で、今後の計画は?」
ルースカルガンを呼んだことを伝え、とりあえず派遣部隊はわたしが指揮することした。
「そうか。タカトも休ませたかったし、ちょうどいいな。お前は疲れてないな?」
「内勤だったので疲れてはいません」
どちらかと言えば鬱屈していたところだ。最前線に立って暴れたかったのよね。
「それなら、ミリエルは派遣部隊と合流しろ。ここにはおれが残る。ルースカルガンはここにくるんだよな?」
「はい。発信器は打ち込んでいるのでそろそろくると思います」
「──ミリエル。ルースカルガンがきたよ」
って、言ってる側からきたようだ。見計らったようなタイミングね。
「了解。引き続き偵察をお願い」
プランデットをかけなおしてマリルに返信した。
「こちら一号艇。あと五分で着陸する」
すぐにルースカルガン一号艇から通信が入った。
「了解。発着場を設けたからそこに降りてください」
「ラー」
委員会議所を出て空を見上げると、ルースカルガン一号艇が現れ、発着場に降下し始めた。
発着場に着陸。後部格納ハッチが開くと、ドワーフの女性陣が出てきた。
「ミリエル様。応援にきました」
「ありがとう。本当に助かるわ」
セフティーブレットの女性陣(種族に関係なくね)は強い。上手く纏めてくれるでしょう。
「じゃあ、主だった者を紹介するわ。リーダーを決めて動いてちょうだい」
委員に集めてもらい、主だった者を女性陣に紹介した。
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