第987話 *ミリエル* 2
マリルを先頭にわたしが続き、ゴルでドワーフのところに向かった。隠密が得意なライルには潜んでもらっているわ。
そんなに離れてはいないので一時間もかからず到着。すぐにバナたちが集まってきてくれた。
「ミリエル様!」
「ごめんなさいね。無理を言ってタカトさんに交代してもらったの。主だった者を集めて紹介してくれる?」
「わかりました。すぐに集めます。」
その前に四人と擦り合わせをしたいところだけど、やることはわかっている。あとは臨機応変に動くとしましょう。
ナグルに集まる場所まで案内してもらい、主だった者が集まる前にブラッギーが入ったコンテナボックスとカロリーバーを取り寄せた。
続々と主だった者……以外にも集まってきてしまった。まあ、セフティーブレットの代表者格がきたら気になるのも仕方がないか。
「マリル。映像に残しておいて」
わたしの後ろにいるマリルに小さな声で指示を出した。さすがにプランデットをかけながら会話はできないからね。
「了解」
タカトさんの教育は本当に凄いわね。わたしに思うところがあるだろうにちゃんと必要な指示には従うんだから。
わたしは、好かれていようと嫌われていようとわたしにはどうでもいいこと。わたしの役目はタカトさんを支えること。それがわたしの幸せなんだからね。
「ミリエル様。主だった者を集めました」
うんと頷いて一歩前に出る。
「わたしはミリエル。ゴブリン駆除ギルド、セフティーブレットの副マスターよ。今回はゴルの要請を受けてあなたたちを助けにきた。ただ、こちらも無償で、なんの見返りもなく助けにきたわけではないわ。このゴルに従う者のみ助ける。従えないならこのままここで生きていくといいわ」
タカトさんならここにいる者をすべて助けるでしょう。でも、それはタカトさんの負担となる。さらなる心労を与えるだけだ。
大きな力を手に獲られ、セフティーブレットを守る力になれたとして、タカトさんの心が守られないのでは意味がないのよ。
「おれはゴル。あんたらと同じく家畜より劣る立場だった。バデットによって逃げ出し、今はセフティーブレットのお世話になっている。家族や仲間をたくさん救ってもらった。その恩返しがしたくて仲間を集めている。仲間になったのなら給金を払うし、衣食住を用意する。子供には教育を施すこともする」
セフティーブレットの一員となれば最低限度の暮らしは保証することになっているわ。
「求めるのは百人。ゴルたちに任せるわ」
「わかりました」
セフティーブレットに勧誘するのはゴルたちに任せるとして、わたしは残りのドワーフを纏めるとしましょう。
「この集団を纏めているのはあなたね?」
珍しくヒゲを生やしてない男性を見た。
ドワーフの年齢はわからないけど、そう若くもなく歳を重ねているようには見えない。ただ、理知的な顔をしているわ。
「ダルスだ。別にわたしが纏めているわけではないが、いつの間にかわたしが中心になっている」
やはり賢いようね。学がありそうだわ。
「誰かから教育されたのかしら? 言葉使いに品があるけど」
「ご主人様が酔狂な方で、いろいろ教えてくれたのだ」
ドワーフを家畜以下の存在と思っているマガルスク王国の者にもそんな人がいるものなのね。
「その人に救われたようね。ただ、これからを考えたらご主人様呼びは捨てなさい。ドワーフ族はマガルスク王国から解放させ、一つの種族として確立させるわ」
「そんなことが可能なのか?」
「可能よ。セフティーブレットのマスターはそれを可能にできる人だから。あの人ならドワーフ族の国を創ってしまうことも簡単でしょう。けど、わたしは国ではなく自治領区を創ることをお勧めするわ」
「じちりょうく?」
「国の中に小さな国があるようなものよ。ドワーフ族によるドワーフ族のための法を創り、種として繁栄する。自治領区なら小さく纏まれるのが利点よ。欠点は国の情勢に左右されるというところね。理解できる?」
「……正直、理解できないところがある。そのじちりょうくを創ることで、そちらはなんの得になるというのだ?」
「セフティーブレットのマスターは女神の使徒。選ばれた者として他種族を従えることはマスターをより神格化させられる。セフティーブレットが強力な存在なら王国もそう無茶な要求はしてこないわ。あなたたちにはマスターを支持してくれたら自治領区を創ってあげるわ」
マガルスク王国の民は大半が天に召された。もう王国としては成り立たない。国として再生するにはドワーフの力なくして不可能でしょうよ。
「それだけでいいのか?」
「構わないわ。勧誘は別に行っているからね。ダルスはマスターを支持できるくらいの力をつけてくれたらいいわ。武具や生活品は大量に確保してある。食料も冬を越せるだけのものを与えましょう。セフティーブレットが支援するわ」
ランティアックで回収した品がありすぎて困っていたところ。元々拾ったもの。渡したところで惜しくもないわ。
「……わかった。このままでは餓死者を出していたところ。あなたの話に乗ろう」
「では、あなたを区長に任命するわ」
セフティーブレットの副マスターとしてね。
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