第983話 エルフの薬(ブラッギー)
職員たちが集めた情報でも鉱山ではないかとのことだった。
「よし。驚かせないためにゴルたちを連れていく。マリルとマルゼは先行して探れ。接触はしなくていいからな。車輌はミルズガンに進め。徒歩組はプランデットが届く範囲にいてくれ。ドワーフがいたらそちらに誘導する」
大まかな計画だが、臨機応変に動けるヤツらばかりだ。問題はない。
「ゴル。動けるな?」
「はい。問題ありません」
必要最低限な荷物はリュックサックに入れてあり、DP-12の弾はレッグバッグに入れてある。食料はオレが出すのでさらに問題なし、だ。
オレも外に出るときは常に戦闘強化服を着ている。リュックサックを背負えばいつでも出発オッケーだ。
「ロイス。あとは頼むな」
「お任せください。ゴル。マスターを頼むぞ」
「いざとなればおれらが盾になる」
「ならなくていい。自分の命を優先させろ。いくぞ」
リュックサックを取り寄せて背負い、タボール7を装備した。
「マリル。プランデットに方角を出した。北西はわかるか?」
「うん、わかるよ」
「通信ができる距離を保って先行しろ。マルゼはオレの護衛だ。ゴルは交代で道を切り開いてくれ」
「了解」
「わかりました」
「よし、出発だ」
開きぱなしの城門を出て北西に向かって歩き出した。
マリルが先行し、反応を追いながら方角の確認。そして、プランデット連動のドローンを飛ばした。
「マリル。停止。その場で休憩だ。ゴル、交代で休憩しろ。マルゼは周囲の警戒だ。オレはホームに入ってくる」
ホームに入り、ホワイトボードに地図を描いた。
「タカトさん。どうしました?」
ミリエルが入ってきた。
バデットにドワーフがいないこと、もしかするとドワーフが集団で隠れているかもしれないこと、そこに向かっていることを話した。
「そうですか。では、食料と水を用意しておきますね」
「回復薬はまだあったっけ?」
「回復薬小が一瓶だけです。他に使ってしまったので」
そっか。前まではたくさんあったのにな。セフティープライムデーが近づいているのにオフシールばかり当たりやがるよ。
「仕方がない。助けられないときは諦めてもらうとしよう」
セフティーブレットの一員なら回復薬をかき集めるところだが、一員でないのなら切り捨てさせてもらう。
「それならエルフの薬を使いますか?」
「エルフの薬?」
なんじゃそりゃ?
「応急措置薬のようです。ガレージに置いていたはずです」
そんなものあったっけ?
ガレージの二階に白と緑のコンテナボックスが一個だけあった。あ、これ見たな。珍しいなと思いつつ中身を確かめなかったヤツだ。
「ん? これ、ルースカルガンにも積んでなかったか?」
ルースブラックにも積んであったぞ。中身は見なかったけど。
「積んでありますよ。ガーゲーで生産できたので館にきたとき念のため渡していました」
救急箱的なものか。回復薬を持っていたら使うこともないし、念のためのものでしかないな。
「使ってみたか?」
「いえ、使う場面もないので」
そりゃそうだ。
「針のない注射器か。SFで見たな、こんなの」
記憶の中に使い方があった。まあ、キャップを外して服の上からでも上部のスイッチを押せばいいだけのものだけど。
「ドワーフに使ってみるか」
「いいんですか?」
「もう回復薬は使えないからな。ブラッギーを使うとしよう。もちろん、承諾をもらえたら、だけどな」
いや、一度ゴルたちに使ってもらうか。回復薬小は一粒渡してある。万が一のときは使ってもらうとしよう。
「妊娠しているゴブリンにも使ってみるか」
「わたしの体でも検証してみます。回復魔法に応用できないか興味もありますから」
忘れそうになるが、ミリエルの回復魔法は怪我を治すもの。病気には効果がなかったりするんだよな。
「あまり無茶するなよ。異変があれば回復薬大を飲むんだからな」
「タカトさんの心配性が出た。そんな無茶しませんよ」
「ま、まあ、ミリエルならら大丈夫か」
ミリエルは意外と慎重派だからな。無茶はしないか。
「そ、そうか。なら、オレは外に出るよ。また夜に入ってくるよ」
「わかりました。わたしは夕食前に入ってきますね」
ハンバーガーを人数分買い、ブラッギーが入ったコンテナボックスを持って外に出た。
「異常は?」
「ないよ。獣の気配もない」
「そっか。なら、今のうちに食事をしてしまおう」
マリルにも連絡をして食事を摂らせた。
「ゴル。お前たちの中で体調の悪い者やなんか病気を持っているヤツはいるか? エルフが使っている薬を手に入れたんだが、ドワーフにも効果があるか知りたいんだよ。もし体に合わないなら回復薬を飲んでくれ」
「それならおれ、水虫です」
へー。ドワーフでも水虫になるんだ。
「おれもです」
五人が手を挙げた。ドワーフは皆水虫なのか?
「じゃあ、ゴルがやってみろ」
ブラッギーの使い方を教え、靴を脱がせて打たせてみた。どうだ?
「……気持ち悪かったりするか?」
「いえ、なんか冷たいのが体に入ってきた、って感じくらいです」
しばらくゴルの足を見ていたらなんか白いものがカサカサになり、ゴルがそれを払ったら綺麗な足が現れた。
「……ゴル、体は?」
「特になにも。ただ、足が痒くなくなりました」
マジか!? エルフの薬、どんだけだよ!!
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