第977話 ミンズ伯爵領
「あとはニャーダ族に任せましょう」
残り約千五百匹。マーダたち六人で割ったら二百数十匹だ。ニャーダ族にしたら問題ない数だろうよ。
職員たちの気配のほうに飛び、すぐに追いついた。
走っているヤツもいるからそんなに距離は進んでない。十五時過ぎくらいに出たからあと一時間もしたら陽が沈むだろう。夜中に走るのは危険だ。手頃な場所で野営するとしよう。
そのまま飛び越えて森の手前で降り、ホームからタワーライトを引っ張り出してきて目印とした。
「エルガゴラさん、警戒をお願いします。食事の用意をしてきますんで」
「ああ。結界を張っておくよ」
あとは任せてホームに入り、儲けたこともあり、久しぶりにビジネスホテルのビュッフェを買った。
一人分買っても十人分買っても大量の料理が出てくる。ミサロが作ってくれた料理を知ったら買わなくなったんだよな。
ひょいひょいと外に運び出していると皆が到着。順番に食べてもらい、順番に休んでもらった。
エルガゴラさんの結界か、たまたま運がよかったからか、バデットが襲ってくることはなかった。
朝になり、簡単な食事をしたら昨日歩いた者を先に移動してもらい、オレは残ってマーダたちを待った。
夕方になりマーダたちが追いついた。
「時間がかかったな? なんかあったのか?」
「ああ。ゴブリンを片付けたらバデットの群れがきてな、それを排除してたら時間がかかってしまったよ」
「またか。移動するのも一苦労だな」
「一応、ガソリンで燃やしておいた」
「悪いな。また出番を増やしてやるよ」
ニャーダ族も稼がなくちゃならないからな。出番を増やしてやるとしよう。
「休むか? オレが見張りにつくぞ」
「このくらいで参ったりしないよ」
他の者たちも余裕だと笑うので皆のあとを追うことにした。
最初だけ躓いただけのようで、それからバデットの一匹も会わずに隣の領地に到着できた。
距離的に百数十キロ。半分はきた感じだ。
「ミンズ伯爵領か」
一大穀物地帯にはまだ入っておらず、山間部と言っていいところだ。
まだ道もよく、人の姿がちらほらと見えた。まあ、こちらを見ると逃げてしまったがな。
「タカト。つけられているぞ」
山間部なので全員で移動しており、真ん中辺りにいたオレのところにニャーダ族の男が知らせに走ってきた。
「人間か?」
「ああ。おそらく冒険者だと思う。人数は二人だ」
「ランティアックの文官に頼むか」
机仕事ばかりしてたせいか、子供より体力がなかった。男爵から預かったこともあり、ハイラックス一号に乗せてあるよ。交渉役が死んだら洒落にならんからな。
ハイラックス一号まで走り、文官の三人に説明した。
「ミンズ伯爵の手の者かもしれません。あなた方から説明してください。話がとおればミンズ伯爵様のところで休めるかもしれませんからね」
「わかった。やってみよう」
男爵の部下だけあって話が早くて助かる。
「マリル。車輌停止だ。エンジンは切らなくていい」
先頭を走るマリルに指示を出して停止させた。
文官に拡声器を渡した。
「わたしたちはランティアック辺境公の命によりミルズガン公爵領に向かっている。ミンズ伯爵殿の手の者なら出てきて欲しい。違うならそのまま隠れていて構わない。わたしたちは先を急ぐ」
どうするかな? と思う暇なく隠れていたヤツらが姿を現した。
……この国の見張りは優秀だな……。
「我々はミンズ伯爵領の冒険者だ! 本当にランティアックの者なのか?」
「ミンズ伯爵様に宛てた公印である。伯爵様に渡して欲しい」
さすが男爵。用意がいい。
「わかった。至急届けよう」
一人が書状を受け取り、木々の間に入ったと思ったら馬に跨がって出てきてそのまま駆けていった。
「我々が先導する!」
そう言うと、同じく木々の中に消え、しばらくして馬に跨がって出てきた。
「よく馬を連れて隠れられてたな?」
「ウルックの一族だろう。馬を操るのが上手く、探索や伝令によく使われている」
へー。そんな一族があるんだ。マルシファのときもウルックの一族だったんかいな?
「マリル。前に出た馬に続け。ミンズ伯爵領に向かう」
「了解」
再び車輌が動き出し、夕方前に城壁が見えてきた。
ランティアックとミルズガンの中間地なだけにかなり大きな街のようだ。
「旦那! バデットだ!」
ドワーフの男が叫んだ!
「蹴散らせ!」
ドワーフたちにはDP-12ショットガンを渡してある。
ガドーにKSGを与えたからか、ドワーフの間ではショットガンを持っていることが名誉なことになってしまった。
ゴブリンならいいが、数でこられる敵には不向きでしかない。それとなくベレン2を勧めてみたんだが、ショットガンを求めてくるんだよ。まったく、困ったもんだよ。
それでも戦果を出しているから取り上げることもできない。バデット相手でもDP-12で相手してんだから凄いヤツらだよ。
「車輌は先に進め! 兵団員、続け!」
予備兵団員はベレン2を持たせてある。エルガゴラさんの付与も施してあるのでドワーフたちのフォローはできるだろう。
「マーダたちは車輌の護衛だ!」
獣人だけにしたら面倒なことになりそうだがらな。職員たちと一緒にさせておこう。
「深追いはするな! 少しずつ街に向かえ!」
オレもタボール7を構えてバデットの排除に混ざった。
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