第967話 *マリル* 6

 ランティアックと連絡が取れたって話はマルシファ中に広がったようだ。


 城門前では兵士と町のヤツらが出せでるなと揉めていた。


「あれじゃ暴動になりそうだね」


 町のトップが情報を出さないのが問題なんだろう。おじちゃんが情報共有は大事だって言っているのがよくわかるよ。わからないからああやって騒ぐんだろうな。


 どういう状況かを映したら町の中心に向かった。


 狭いと思ったけど、こうして歩くと町はそこそこ広いな。最近、移動速度が上がりすぎて感覚がおかしくなっているのかも。


 ヤッカの案内、まあ、城門から続く大通りを歩いているだけなんだけど、ランティアックのことが広まっているからか、人がたくさん外に出ていた。


「ねーちゃん、あそこ開いているよ」


 マルゼが指差す方向に目を向けると、何屋だかはわからないけど、店が開いていた。


「こんなときに金儲けか」


 この国のことがわかってないからやれることだろうな。今はお金より食糧確保が大事なのに。


「ここの領主、わかってないの?」


 用意周到なおじちゃんを見ているからか、ここの粗しか見えない。いいところまるでなしだ。


 それでもなにが利になるかわからない。撮れるものはすべて撮っておくとしよう。


 大通りと言っても二百メートルもない。すぐ中央に建つ城に到着した。


 二十メートルくらいなので貧民街からでも見えたけど、下から見るとまったくわからないわ。


 城を一周したら住宅地にいってみる。


 町の中間層が住むところだからか、そこそこ綺麗だ。排泄物とかどうしてたんだろう?


 プランデット以外にもデジカメでも記録しておく。


「倉庫街か」


 どこの町にも備蓄庫はある。倉庫の数で町の力がわかるそうだ。


「ねーちゃん。結構貯め込んでたよ」


 倉庫に忍び込んだマルゼが写真を撮ってきてくれたのを見る。


 ここの食糧でランティアックが冬を越せるかどうか決まるそうだ。


 大体の倉庫には麦が入っていた。これなら今年の冬は越せそうだ。まあ、それが下の者に回るかは別だろうけど。


「こんなものかな?」


 城のことは調べなくていいと言われている。町の様子や町の状況は大体知れたと思う。


「なんか忘れてないよね?」


「うん、忘れてないと思う。あ、ラウル一家はどうするの?」


「あ、そうだった。すっかり忘れてたよ」


 そうそう。ゴブリン駆除はしっかりやっておかないと。


「ラ、ラウル一家を倒すってこと?」


「ゴブリンの巣を潰すだけだよ」


 おじちゃんにやれとは言われてないけど、ああいうタイプはおじちゃんの嫌うこと。使えないゴブリンは駆除するまでだ。


「じゃあ、M85使っていい?」


 リボルバーの拳銃で、八歳のマルゼでも撃てるものとしておじちゃんがプレゼントしてくれたものだ。


 ただ、五発しか撃てず、ゴブリンには不向きなので護身用として持っているようなもの。都市型ゴブリンにも不向きじゃない?


「まあ、いっか。十匹も二十匹もいるわけないしね」


 あたしが416を使えばいいだけだ。マルゼは援護をやらせよう。


「ヤッカは荷物を纏めておきな。ゴブリンの巣を片付けたらそのまま立ち去るから」


「……連れってくれるの……?」


「セフティーブレットは常に職員募集中。老若男女種族に関係なく、優秀な人材を求めております」


 ヤッカは尊敬できるヤツだ。なら、セフティーブレットに引き込んでおきましょう。


「つまり、ヤッカはセフティーブレットの一員ってことだよ」


 ヤッカのことはマルゼに任せていたから仲良くなったんでしょう。ヤッカの背中を叩いた。


「連れていきたいヤツがいたらヤッカから説明しな。セフティーブレットは仲間を見捨てない。そこが死地でも助けにいく。これを守れないようではセフティーブレットの一員にはなれない。覚えておきな」


 あたしらはセフティーブレットの一員だ。おじちゃんに顔向けできないようなことはしない。仲間はすべて助ける。


「……あ、ありがとう……」


「じゃあ、用意してな」


 ヤッカが消えたら鞄から416やチェストリグを出して装備さした。


「M85は音がうるさいから室内で使いなね」


 それには魔法をかけてない。音に集まれられたら面倒だ。なるべく室内で使わせよう。


「なら、おれが突入してもいい? 五発撃ったら下がるからさ」


 うーん。M85は練習しているけど、実戦はこれが初めて。いきなりでいいのか?


「ねぇ、いいでしょう? ねーちゃんの邪魔にならないからさ~」


「……わかった。怪我したら終わるまで放置だからね」


「わかった。任せてよ」


 不安だけど、経験させないと成長しない。おじちゃんもこんな気持ちであたしらを見てたんだろうな~。なら、あたしも同じ経験をしよう。


 とは言え、自分が二番手ってのも落ち着かない。あたし、集団戦とか向いてないのか?


「よし。やるよ」


 弾を装填して416を掲げた。


「了解!」


 マルゼもM85を掲げて応えた。


 ラウル一家は貧民街と逆のほうにあり、中流層より下って感じの住宅街にあった。


「普通の家だね」


「ほんとにね」


 まあ、どんな家でも構わない。所詮、ゴブリンの巣。なんでも構わない。


「皆殺しでいいんだよね?」


「もちろん。一匹残らず駆除する。女子供でもだ」


 巣にいるのはすべてゴブリン。一匹は一匹だ。


「じゃあ、やるよ」


「了解」


 ドアからじゃなく窓から突っ込むマルゼ。そこからかい!


「次はもっと詳しくミーティングしようっと」


 銃声が五回聞こえたらあたしはドアを開けて中に入った。

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