第961話 ネームバリュー
街のバデットを排除、片付けをしながら日々を過ごしていると第二陣がやってきた。
第二陣は、ミリエルのルースホワイトもやってきた。
ルースホワイトは、マンダリン隊の乗艦的な用途に使う。操縦士はヤカルクスさんとのことだ。
二艘が着陸。ルースブラックから請負員にした予備兵団の十人と職員としたドワーフが五人。マリルにマルゼ、ニャーダ族のおばちゃん(料理人)三人だ。
「ご苦労さん。まずはここに慣れてくれ」
「随分と臭いんだね」
ニャーダ族も鼻がいいのでこの臭いは辛かろうよ。
「寒くなったから臭いはまだ少ないほうだ。どうしても無理ってときは場所を移すから遠慮なく言ってくれ」
「まあ、しばらくがんばってみるよ」
うんと頷く。がんばってもらうしかないからな。
「予備兵団の代表は?」
「おれです。カインゼル様の副官としてついていたダガルです」
三十半ばくらいの男で、その筋のもんって感じだった。
「じゃあ、ダガル。お前をブラック隊の隊長に任命する。先行隊として動いてもらうからよろしく頼むな」
カインゼルさんが副官としたなら優秀な男なんだろう。なら、王都の近くまで先行してもらうとしよう。
「ハッ! お任せください」
「ガドー。お前がきてよかったのか?」
KSGを未だに使っているとか、どんだけ気に入ってんだか。
「おれもセフティーブレットの一員。旦那が向かうところならどこでもついいていかせてもらいます」
ダメだって言っても聞かないだろうから好きなようにさせるとする。
「マリルとマゼル。着いて早々悪いが、侵入して欲しいところがある。構わないか?」
「構わないよ」
「おれたちに任せてよ!」
頼もしい姉弟だ。
マルシファの位置を教え、職員に近くまで送ってもらうようお願いした。
「これはマガルスク王国の金で服はそこにあるからサイズに合うものを探してくれ」
街で見つけた服類は纏めて置いてある。さすがに多すぎて整理が追いついてないのだ。
「そのマルシファの情報収集だけでいいの?」
「ああ。主な任務はそれだが、食料が買えるなら買ってもいいし、仲間を見つけてもいい。あ、ちょっと汚れていけよ。さすがに潜入するには顔が綺麗すぎるからな」
マリルはすっかり綺麗好きになって、髪の艶が輝きすぎている。さすがにバレるわ。
「ねーちゃん、男にモテるってわかってから色気づいてんだよ」
「うるさい!」
弟を本気で殴る姉。姉弟も大変だ。
「まあ、マリルも女の子だからな。変な男に引っかかるなよ」
殴られたマゼルを慰めてやり、マリルに注意した。
「別に男に興味ないし」
「マゼル。ねーちゃんを守ってやれよ」
まだ一人一人生きていける年齢ではない。もう少しだけ姉弟で力を合わせて生きていけ。
「ルグルカ。二人を頼むな」
輸送部の男でパイオニア分解組立にも立ち会ったので、四号の運転手にして人の移動を任せたのだ。
「わかりました」
あとは任せてルースホワイトのところへ向かった。
「ヤカルクスさん。あちらはよかったんですか?」
確か、都市国家方面にいたはず。
「エレルダス様に言われたんだよ。タカトを支えろとな」
「ありがとうございます。もしかすると王国中にゴブリンがいるかもしれませんので」
「そうなのか?」
「昔、火山を噴火させた駆除員のこと話したの覚えています?」
「ああ、駆除員の中で一番ゴブリンを殺したヤツだろう。それが……まさか、そうなっているのか?」
「そこまではならないと思いますが、魔王の配下が国を奪ったとなると爆発的に増えても不思議ではありませんね」
オレの考える最悪はそれだ。
一万二万ならまだしも十万二十万になったらそれはもう種族間戦争だ。一組織がどうこうできる数じゃない。それこそ国を滅ぼすくらいの災害でも起こさなきゃどうにもならんだらうよ。
「食糧が消えるまで別の大陸にでも逃げたらいいんでしょうけど、きっとオレは逃げられないでしょう」
ダメ女神がいない今なら逃げられるかもしれないが、戻ってきたとき、連れ戻されるおそれがある。
最悪な状況で戻されるくらいならそんな状況にならないように動いたほうが遥かに安全だわ。
「今ならなんとかできます。まだ最悪な状況にはなっていません。ルースホワイトチームは遊撃隊となってゴブリンを駆除していってください。アリサ。お前がチームリーダーだ」
「わたしがですか!?」
「お前はセフティーブレットを支える一人だ。これを機会にリーダーとして動け。マイセンズの者としてな」
そこにエウロン系のヤカルクスさんを入れるのは不味いかな? とは思うが、ルースホワイトを操縦できる者がいない。マンダリン隊の母艦(母艇か?)とさせてもらおう。
「あと、誰かルースホワイトの操縦を覚えろ。ヤカルクスさん、お願いします」
「ラー。すぐに覚えさせるよ」
理解が早くて助かるよ。いや、ヤカルクスさんの場合は戦闘員として動きたいんだろうな。
「今日はゆっくりして明日から動いてくれ。人を増加したいときはいつでも言ってくれ。第三陣でつれてきてもらうから」
「わかりました」
アリサも難しい立場だろうが、駆除員の子孫ってネームバリューは必要だ。オレのネームバリューが下がるからな。
「よろしく頼むよ」
アリサの肩を叩いた。
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