第959話 忙しい一日
城門前広場にくると、ルースブラックが降りてくるところだった。
「何度目だ?」
発着場にはロイスやエルガゴラさん、職員が半分くらい揃っており、村人は数人しかいなかった。
ルースブラックが着陸。後部格納ハッチが開いて村人がぞろぞろと出てきた。
今回はやけにキチキチに詰め込んできたな。なんかあったのか?
「タカト! ゴブリンの群れだ! きてくれ!」
村人が出たらサイルスさんが現れ、すぐに報酬に集中したら凄い勢いで増えていた。
……最近、意識しないと見えないまでになってたから気がつかんかったよ……。
「わかりました。全員乗れ!」
詳しい話はルースブラックの中で聞けばいいと、エルガゴラさんや職員たちを乗せた。
「突然山から襲ってきた。数は千か二千かわからん。とにかく突然だったから村人を乗せるのが精一杯だった」
「残りの職員は?」
「おれたちを逃がすために残った」
「まあ、ルイスなら大丈夫でしょう。歴戦の請負員ですから」
ロイスがわざと軽口で言った。
「そうだな。EARを持たせてあるし、なんとか堪えているだろうよ」
職員たちにはアイテムバッグ化させたレッグバッグを持たせてある。ルンも十個は持たせてあるから一人二千発以上は撃てる。五人いるなら一万匹は相手できる。オレたちがいくまで充分間に合うはずだ。
「見えた! 囲まれている!」
「サイルスさん、職員の指揮をお願いします」
そう言ってホームに入り、ブラックリンに跨がって外に出た。
空間固定なので乗り物で移動中にホームに入るのは危険だが、それも場合によりけり。単独発進にはナイスな方法なんだよ。
マルダードを取り寄せて気配の強いところに向かって投げ放った。
大体、ゴブリンが千匹を超えたらその中に首長が生まれていることが多い。ざっと見ただけで三千匹はいるのだから首長が指揮してても不思議はない。ほら、一気に四百万円(マルダードの爆発で殺せるのは五百匹が精々だね)が入ってきた。
まあ、今は狂乱化しているので首長を駆除したところでゴブリンどもが散ることもないが、邪魔なのは早々に片付けておいたほうがいい。首長ともなれば知恵も回る。わざわざ逃がして知恵をつけさせる必要もないさ。
ブラックリンを降ろしてブラックリンを右回りに回転させながら搭載のEARを連射する。
その空いた場所にルースブラックが着陸。サイルスさんたちが飛び出してきてゴブリンを駆除し始めた。
あとは任せてブラックリンを上昇させ、他に首長か特異種がいないかを探した。
「強い気配があちらこちらにあるな?」
首長ほどではないが、普通のゴブリンよりは強い感じのがあちらこちらにあった。
「首長予備軍か?」
見た限り、ここのゴブリンどもは痩せておらず、筋肉がほどよく就いている。エサが豊富なんだろうか?
EARの射程外へと降りて、ミジャーの粉を取り寄せてばら撒いた。
狂乱化中に効果があるかわからんが、数が少なくなると散り散りに逃げてしまうので、ここに集めるとしよう。
「マルダードも少なくなったな」
ホームに入ってマルダードを確認したら二十個を切っていた。
最初はどこで使うんだ、こんな威力があるもの? とか思っていたが、使う場面があるとドンドン使ってしまうな。
「使わないときには当たるクセに必要なときに当たらんよな」
最近、ほとんど当たってない。まあ、回復薬が連続で当たってんのは助かるがよ。
「お、二千万円超えてたよ」
このまま三千万円までいってくれると助かるんだが、職員たちに稼がせてやらんとならんから二千五百万円が精々かな?
どんどん減らされていき、我に戻ったゴブリンどもがこちらに向かってきた。
「大してこねーな」
三百匹もいないんじゃないか? これじゃ二千三百万円がやっとじゃないか?
我に戻ってもミジャーの粉にまた我を忘れたゴブリンどもをマルダードで一掃。やはり二千三百万円にやっと届いた感じだった。
「まあまあ稼げたな」
八百万もプラスされたんだからよしとしよう。
職員も稼げたなら補給する品が減るってことでもある。出費が減るんだから大助かりだ。
運のいいゴブリンが何十匹か逃げたが、雑魚っぽいので放置。また増えてオレたちの糧となってください、だ。
皆のところに向かうと、ロイスたちが地面に倒れていた。
「ご苦労さん。よくがんばった」
返事はないが、やり切ったような表情してサムズアップをしてきた。誰だ、そんなの教えたの?
「元気なヤツはゴブリンを肉片にしてくれ」
「埋めなくていいのか?」
「バデットにしていた魔法使いは殺したと思うので肉片にしてやればいいですよ」
極希に自然発生するらしいが、さすがにこの数をこの人数で片付けるのは無理だ。万が一なっても対処できるように脚なり頭なりを吹き飛ばしておくとしよう。
「大体でいいですから」
ルンを取り寄せて皆に配り、充填させたら各自散ってゴブリンを肉片にしていった。
暗くなる前には終了させ、残りは自然に還ることを願ってランティアックに戻るとする。
まったく、休まる暇がない一日だったよ……。
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