第957話 ハイタッチ ★
爆発の威力は凄いが、当然ながら四発で大教会を崩壊させることはできなかった。
「ラダリオン。頼む」
マルダードを取り寄せてラダリオンに放り投げた。
百メートル先にある大教会に届かせるなんてオレには無理だが、ラダリオンなら問題はない。フォームは完璧。もうただの鉄球を投げても凶悪な攻撃となるだろうよ。
「うん」
そう力むことなくマルダードを投げ放った。スゲー強肩。
望遠で軌道を追い、壁に激突。めり込みはしなかったが、ちょうどいいタイミングで爆発。大教会の上部を破壊した。
「じゃあ、あとは頼む」
オレは飛び下りれないので階段を使って下に。バデットがいなくなった道を走って大教会に向かった。
雷牙が引き連れてくれたので問題なく到着。マナイーターを取り寄せた。
大教会の敷地に入ると、バデットがまるで待機状態でいるかのようにすし詰めされていた。
「まだ命令は出てない感じか? なら今のうちだ」
水を集めてウォータージェット一文字斬り! で、胴体を真っ二つ。これで動いたところで脅威でもない。なにもできずに朽ちるがよい。
崩れたバデットを踏みつけて建物の中に入った。
中にもすし詰めにされて入れられているバデットたち。よく入れたとは思うが、なんのために入れたかわからない。雨風にさらさないようにか?
室内ではウォータージェットは使えないのでマナイーターで魔力を吸い、ただの死体に変えてやった。
「ふー。これでも出てこないか」
もう二百匹は排除したのに黒幕は出てこない。センサーも使えないから下手に奥にもいけない。安全を考えて燃やしておくか。
ガソリンタンクを取り寄せて部屋に撒いてやった。
燃料としては少々頼りなないが、最後に大火力で燃やしてやればいいんだから問題なし、だ。
別のところにも移り、魔力を吸い取ってやりガソリンを撒いた。
ライターでガソリンに火をつけて、一旦外に出た。
石造りなので燃え移ることはないものの煙は室内に回っているようで、生きている者がいたら酷いことになってんだろうよ。
「うん?」
なんか地面が揺れたぞ?
こういうときはさっさと逃げるが勝ち。マルダードを放り投げてホームに入った。
──────────────────────
*ラダリオン*
建物の下で爆発が起こった。
それが交代の合図と判断して元の姿に戻った。
しっかり造っているようであたしの重さで建物が崩れることはない。吹き飛ばされた瓦礫を払って足場を均した。
スカーえるを構えてフルオートに切り換えた。
しばらくして黒煙の中からなんかデカいのが出てきた。なんだ?
「巨人?」
ではないな。なんか肉を集めて人の形にしたって感じ。悪趣味。
強い気配はガンガン感じるけど、これと言って脅威は感じない。ただデカいだけの肉人形ってところだ。
引き金を引いて肉人形に弾丸を食らわせてやった。
対物ライフルサイズになった弾丸を受けて血を吹き出すことはない。ってことは魔法で動いているってことだ。
タカトが言っていた。この世はなにかをエネルギーにして動いている。そのエネルギー源を途絶えさせてやれば大抵のものは壊せる。どんな強大な敵だろうと、だ。
そこんところは女神でもちゃんと上手く創っているし、反則的な生物は反則的な者をぶつけている。ましてや魔王は常識内での強さをしている。なら、その部下がそれ以上の力を見せることはない。
「故に怖い相手じゃない!」
全弾撃ち尽くしたらマガジンを交換。建物から飛び下りた。
今のあたしは力が満ちている。装備は最高のもので揃え、石造りの家を粉砕しても平気な体を持っている。
反則と言えばあたしのほうだろう。今なら単独でもグロゴールを倒せる自信がある。あんな肉人形に負ける要素はこれっぽちもない!
血を流さないからって肉体に負担がかからないとは限らない。あんな二足歩行にしたら余計にバランスを採れなくなる。弾丸を肉体に残したらさらに動き難くなるものだ。
肉人形との距離を一気に縮め、右太ももに集中して弾丸を食らわせてやった。
人の形をしていたら脚が一本なくなれば立ってもいられない。肉が蠢いてくっつこうとするが、再生する速度が遅い! 手榴弾のピンを抜いて再生する場所に放り投げてやる。
マルチシールドを構えて爆発を耐える。
再生しようとしていた脚はさらに吹き飛ばされており、再生するにしてもかなり時間がかかりそうだ。
うにょうにょ蠢く肉はそのままに本体のほうにマチェットを抜いて地面に串刺しにしてやった。
「ラダリオン! ホームに!」
ライガの声がしてホームに入る瞬間、マルダードがダストシュートされたのが見えた。
ホームに入ると、タカトが親指を立ててニヤリと笑っていた。
あたしも親指を立ててニヤリと笑い返した。
タカトとの戦いは本当におもしろい。あたしを理解してくれ、あたしを信頼しててくれる。この一体感が嬉しくて仕方がなかった。
「ナイスだ」
掲げたタカトの手を叩いた。もちろん、手加減して。
「うん」
「少しは骨があったか?」
「全然。でも、もう少し楽しみたかった」
もっとタカトと一緒に戦いかったのに、グロゴールの四分の一にも満たなかった。
「ふふ。ラダリオンはおっかねーな」
言葉の割に優しく笑うタカト。一ミリもそんなこと思ってないことにあたしも笑い返した。
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