第953話 情報交換

 ランティアック辺境公領はコラウスより倍くらい広い感じだろうか? アルシファからだと馬で朝日が出て出発するば太陽が斜めになるくらいになる頃に到着できるそうだ。


 まあ、朝の六時に出たら十時くらいには着くとして四時間。馬のスピードを考えたら二十キロって感じか? いや、道もいいし三十キロ。四十キロない感じか?


 よくわからんが、途中に山があり、道もまっすぐでもない。距離感がまったくつかめないが、先を走る二人(馬)に迷いはなく、何度も馬で行き来しているようでペースも乱れない。


「休憩しよう」


 大体十キロは走っただろうところで休憩をする。


「ロイス。休憩しててくれ。オレはあの山に発信機を打ち込んでくるよ」


 可能なら発信機は十キロ毎に打ち込んだほうがいいらしい。なんでもセンサーや測量、通信アンテナも兼ねているようで、細かく打ち込めば魔力も送れるそうだ。


 ブラックリンを出してきて二百メートルくらいある山頂に飛んで発信機を打ち込んだ。


「お、ランティアックが見えるじゃん」


 十キロくらいか? ってことはやはり二十キロくらいか。この時代だと都市間は二十キロが限界なんだろうか? ソンドルク王国では十キロくらいだったが。


「ん? ゴブリンがいるな」


 四十匹くらいの群れが山の下くらいから感じた。


「小遣い稼ぎするか」


 二十万円くらいにしかならないが、今はその二十万円でも貴重だ。稼げるときに稼いでおこう。


 ESGを取り寄せ、ブラックリンに跨がって空に飛び上がり、上空からゴブリンの群れに襲いかかった。


 充分な威力があるのでゴブリンに成す術もなし。あっと言う間に駆除できた。


「一千六百万円を切ったか」


 ハァー。セフティープライムデーまで稼いでおかないといかんな~。


 片付けはせず、そのまま皆のところに向かった。バデット化したところで誤差でしかない。集まってくれたほうが楽でいいさ。


「お待たせしました」


「なんかあったので?」


「ゴブリンがいたから蹴散らしてきたよ。他にいないところを見るとはぐれの群れのようだ」


 アルシファからまったくゴブリンの気配を感じなかった。この辺はライバルが多いのかもしれんな。


「じゃあ、いこうか」


 オレは助手席に座っているだけなのでランティアックに着くまで休ませてもらいます。


 ランティアック周辺は麦畑が広がっているようで、苅り取りされてない麦が倒れ、伸びた雑草が生い茂っていた。


 ……ミサロに苅り取ってもらうか……?


「マスター。バデットの群れです」


 ロイスも目がいいらしく遥か先にいるバデットの群れを発見した。


「へー。街の外にもいたんだ」


 ヘルメットを被り、拡大望遠をして確認する。千匹はいるか?


「どうします?」


「せっかく集まっててくれるんだから焼き払うよ」 


 またホームからブラックリンを引っ張り出してきて飛び上がり、群れの中心にマルダードを落としてやった。


 さすがに千匹を燃やしてやることはできなかったが、恐怖で逃げることもなし。爆心地に降りると、オレの魔力に集まってきた。


「考えることを放棄した動くだけの死体は片付けるのが簡単でいいよ」


 どんどん集まってくるバデットさんたち。十メートルまで近寄ってきたらテイクオフ。またマルダードを落としてやった。


 二発で千匹はいったかな? これがゴブリンなら五百万円の儲けだったのに~。残念。


 それ以上、集まってくることはないようなので戻ることにした。


「マスターにかかればバデットも雑魚でしかないようですな」


「まあ、雑魚もあつまれば手間でしかないがな」


 結構な数を片付けたが、まだ一万以上はいるはず。ほんと、嫌になるよ。


「切りがないからこのまま城門まで進むとしよう」


 ブラックリンを片付けたらオレの運転で城門を目指した。


 途中、バデットが現れたが、構ってらんないので回避しながら進んだ。


 城門前は取り戻して柵ができている。皆を降ろしてパイオニアはホームへ。ラグラス、ルクダの馬はなんとか通ることができた。


「バデットを燃やす煙か」


 マスクを出して渡しておくとしよう。


「ラグラス、ルクダ。男爵様に面会する。アルシファのことを教えてやってくれ」


「わ、わかりました」


「ロイスたちはルースブラックを降ろす発着場を築いてくれ」


 パイオニアとキャンプ用具を出してきてあとのことは任せた。


 人用の城門を潜ると、難民キャンプはそのままだが、ドワーフたちがいなくなったことで空間ができていた。ランティアックの民にしたらドワーフが消えても気にしないんだろうな。


 ……種族差別か。生存本能の為せる業なんだろうかね……?


 第二城壁の門を守る兵士にアルシファからきた者だと伝え、男爵に知らせるよう走らせた。


 オレたちはそのまま進み、男爵がいる部屋へと向かった。


 部屋の前にいた侍従的な男性が扉を開けてくれたので、そのまま中へと入った。


「戻りました。あと、アルシファの者を連れてきたので情報交換をお願いします」


「アルシファ、滅びてなかったのだな」


「そのようですね。ラグラス、ルクダ、マガルク様に話してやってくれ」


 あとは二人に任せ、オレはソファーに座らせてもらった。結構疲れてんだよ。

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