第952話 チート多すぎ問題
なに、あの人? マジチートじゃん。
グリズリーの倍はあろうバケモノをバールで脚を折るとか意味わからんって。てか、一閃であの首を切断するとか意味不明すぎる。もうサイルスさんが勇者でいいじゃんか!
「もしかすると、駆除員の血が流れているかもしれんな。人の域から出ている」
エルガゴラさんの言葉に確かにと思ってしまった。だってチートすぎんだもん。現地人があんな能力出されたらこの世界終わってんよ!
「なんでオレらが呼ばれたか本当にわからんよ」
「タカトみたいなのを求めていたんだろう」
「女神は数撃ちゃ当たる方式みたいですがね」
「今回は当たり、と言うことか」
「だといいんですがね。残りを倒しましょうか」
エンペラーが倒されたことで直下の手下が逃げ出してしまった。恐怖を刻むのもいいが、どうせロースランのようにメスは隠れているはずだ。さすがにそっちまで構ってらんない。震えて生きろだ。
逃げに入ったオーグなど怖くもない。リンクスを持って近づき、その背中に撃ち込んでやった。
グリズリー並みの体を持っていても対物ライフルの弾には勝てない。絶命はさはなかったが、逃げられるほどでもない。駆け寄って頭に撃ち込んでやった。
オレが一匹仕留めている間にエルガゴラさんは四匹を倒していた。
「チート多すぎだ」
本当にチート持ちをなんとかしたほうが効率的じゃねーの? 数撃ちゃ当たる方式、非効率すぎんだろう! 消耗されるこっちの身にもなれや!
「……ハァー。チートがあっても死ぬ世界だったな……」
チート勇者ですら破るなにかがこの世界にいる。なんらかしらのチートを持った山崎さんが魔王に当てられたのならサイルスさんの力は山崎さんの域にも到達してないってことだ。その先を考えるのも恐ろしいよ……。
「このままじゃランティアックに向かうのが延びに延びるな」
オレがいかないとならないからパイオニアで先行するか。
ここはルイスに任せ、オレ、ロイス、エルガゴラさんとメイドのレオナ、女性職員を一人連れて先行することを告げた。
「サイルスさん。職員たちをお願いします」
「わかった。あ、バールをもらえるか?」
この人もバール教(狂か?)になったんだろうか? バール、どんだけ戦士を魅了すんだよ? オレにはまったくわからんよ……。
ホームからバールを五本くらい持ってきて渡した。この人はそのくらいないとすぐに使い物にならなくなる。
「じゃあ、ゆっくりきてください」
四十体ともなると数日はかかりそうだしな。
ルイスによろしくと伝えてオレたちは出発。方角を調べながら進んだら城壁が見えた。
「どこの町です?」
運転を任せているロイスが停車させた。
「んーと。マルシファって町らしいな」
プランデットに記録した地図を見て答えた。
「ランティアックでも端にある町だな。標高が高いから木材や果樹が主らしい。麦は山の影が落ちないところで作っているそうだ」
男爵から聞いたことを披露した。
「人はいるみたいだな」
親指と人差し指をくっつけて城壁を見るエルガゴラさん。付与魔法ってそんなことまでできんだな。
「どうします? あちらは臨戦態勢みたいですな」
ロイスは双眼鏡を出して覗いていた。
「ちょっと待ってろ」
一応、各町を訪れたときように男爵からランティアック辺境公の旗を借りている。それをポールにつけて城壁の上にいるヤツに見えるように掲げてみせた。
かなり離れてはいるが、この時代のヤツは視力がいい。見張りとなれば視力3.0くらい平気であるだろうさ。
「十一方向から騎馬四。なにか旗を掲げています」
ロイスの声に十一方向に視線を向けた。
身なりは冒険者って感じで、敵意は感じなかった。
しばらくして騎馬がやってきた。
「馬上から失礼する。マルシファの冒険者です!」
「オレは一ノ瀬孝人。マガルク・ライダ男爵様よりこの旗を預かった。そちらの領主か責任者にこれを届けて欲しい。現在、ランティアックはバデットを排除するために動いている。兵士も二百まで減り、各町に支援はできない。秋の終わりまでにはランティアックを取り戻す。もう少し辛抱して欲しい」
「わ、わかりました。他の町はどうなっているかわかりますか?」
「情報収集中だ。だが、王都はダメだ。魔王軍に侵略された」
「ま、魔王軍に!?」
「そうだ。マガルスク王国はもうダメだと思ってもいい。だが、ランティアックはまだ滅んではいない。希望を失うことなく今を生き延びて欲しい」
「…………」
ショックすぎて言葉にできないようだ。
「もし、ランティアックの情報をもっと知りたいと言うならついてくるといい。食糧はこちらで用意する」
「わ、わかった。ラグラス、ルクダ、ついていけ。報告はおれがする」
即決即断ができるか。なかなか優秀な男だ。セフティーブレットに欲しいくらいだ。
「イチノセ殿、二人をよろしく頼む」
頭を下げるか。優秀なだけじゃなく人間性も優秀だ。
「わかった。二人の安全は可能な限り面倒見よう」
「感謝する。では、武運を祈る──」
あの男、本当に冒険者か? 年齢も四十くらいだし、もしかしたら地位の高い男なんじゃないか?
「二人。馬は平気か?」
「問題ありません」
「無理なときは遠慮なく声をかけろ。緊急を要する移動ではないからな」
「わかりました」
「では、出発しましょう」
旗を仕舞い、パイオニアに乗り込んで発車した。
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