第950話 赤い魔石
方角だけで飛ぶとやはりズレるもんなんだな。
計器とおりなのになんでズレるか不思議でたまらない。空間が歪んでんのか?
それでも大森林と山を越えたら人が住む領域が見えた。
ランティアック辺境公領は端にあるので間違いなくランティアックに着いたのは間違いないだろう。
「あの山に発信機を打とう」
千メートル級の山で、山脈ってより山地か? その辺の定義は知らんから山地ってことにしておこう。
「ルイス。パイオニアを出すから周辺を探索してきてくれ」
元冒険者でアシッカに何度もいき、経験も豊富なルイスを実働チームのリーダーとして連れてきた。
「ロイスはここを頼む」
名前が似ていると思ったら従兄弟同士で、ロイスは事務や交渉系に強いので実務リーダーとして連れてきた。
パイオニア五号を出してきて、探索に出させた。
「サイルスさん。オレとラオルスさんとであの山に発信機を打ってきます。魔物が出たら排除お願いしますね」
「ああ、任せろ。ちなみにゴブリンはいるか?」
「それなりにいますね。でも、集めて駆除するほどの数ではありません。まあ、せっかくなのでミジャーの粉でも撒いておきますか。やってきたら適当に駆除しておいてください」
ただ待っているのも暇だろうし、ゴブリンでも駆除して待っててくださいな。
ミジャーの粉の袋を三つ出してサイルスさんに任せ、ブラックリンを出してきてラオルスさんと山頂に向かって飛んだ。
標高が低いからか山頂にも木々が生い茂り、着陸できる場所がない。
「ちょっと乱暴ですが、マルダートを落としますね」
「ラー」
マルダートを取り寄せて山頂付近に放り投げ、即座に退避した。
なかなかの自然破壊だが、この世界に保護団体はないし、文句を言ってくるのは魔物くらい。攻めて(責めてか?)きたら力で排除するまでだ。
炎が落ち着いたら水を集めて消火。降りやすいところにブラックリンを着陸させた。
発信機には抜けないように先端にドリルがついているので、岩にも打ち込められた。
「魔力消費は激しいが、強めにしておこう」
「今度、ここを整備にきますか。発着場は必要ですからね」
いつになるかはわからんけど。
「そうだな。マイセンズのヤツらに任せたらいいだろう。第二陣で呼ぶんだろう」
「はい。魔王軍に空を飛ぶ部隊があるとミサロが言ってましたから」
グリフォン部隊があるらしく、コラウスの城を襲ってきたのはミサロが使っていたグリフォンだったそうだ。
「マンダリンで戦えるのか?」
「大丈夫でしょう。グリフォンはバトルライフルでなんとかできましたからね」
そこまで防御力はなかった。ESGで充分対抗できるだろうよ。
「じゃあ、戻りますか」
マナックを補給したら山を降りた。
「なんか集まっているな」
「爆発で抗議にきましたかね?」
五キロは余裕で離れているのに迅速なことだ。
畑も見えるのにオーグ(二足歩行する熊ね)が団体でやってきていた。ゴブリンがそんなにいなかったのはこいちらがいたからか。
ざっと二十匹だろうか? 普通なら町の一つ全滅させられる数だが、サイルスさんやエルガゴラさんがいて、職員はブレン2(7.26㎜弾)を持たせた。威力に申し分はない。オーグでも有効だろうよ。
隊列を組んでの一斉に射撃。エルガゴラさんの付与を施してあるのでマガジン交換もない。あれで倒せないならサイルスさんが出るだろうよ。
「EARを持たせるんだったな」
オーグは魔力抵抗値は高くないはず。なら、EARでも有効なはず。弾代に悩むこともなかったぜ。
逃げるオーグも現れたが、バトルライフルの射程から逃れるわけもなく、攻めてきたオーグは全滅してしまった。
「オレらが入る時間もありませんでしたね」
「ふふ。そうだな」
オーグが倒れた上空を旋回して戻ってきたことを教えてからルースブラックの横に着陸させた。
「ゴブリンじゃなくオーグが集まってきちゃいましたね」
「ああ、残念だ」
本当に残念な顔をするサイルスさん。領主代理に出稼ぎに出されたのかな?
「まあ、王都にいけば六万ものゴブリンがいるんですからそこで稼いでください。もしかすると途中にも群れているかもしれませんからね」
「そうなのか?」
「ゴブリンはすぐに増えます。王都に食うものがなければ他で増えるはずです」
なにをエサとしているかはご想像にお任せします。どっちにしろ破綻するような状況だ。魔王軍はアホとしかいいようがないよ。
「オーグって、どんな魔石でしたっけ?」
何度か見てはいるが、魔石のことはまったく覚えてねーわ。
「赤い魔石だ。冬に重宝するものだ」
あ、熱の魔石か。ミリエルもその魔石で冬を越えたって言ってたっけ。
「それはいいですね。すべて取り出しましょう」
「あの数となると今日はここでキャンプだな」
「まあ、急ぐわけではありませんし、急がずやるとしましょう」
切羽詰まった状況でもなし。一日二日戻らなくても兵士たちが動いてくれているだろうさ。
「ゴブリンはどうだ?」
「すっかり気配を感じられなくなりましたね」
あれだけ暴れたら逃げるのも仕方がないさ。
「ハァー。仕方がないな」
どんだけゴブリンを求めてんだか。フフ。
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