第940話 戦火

 ──現れたのは町の中、いや、戦火の中って言ったほうがいい場所だった。


「タカト!」


 呼ばれてすぐにタボール7を構えてゾンビ──バデット人間に向けて引き金を引いた。


 こうなることはゴッズ(リザードマン)を想定していた。


 マガルスク王国方面からきているのは偶然ではなく、なんらかの事情で増えているんじゃないかと考えていた。


 その兆候はマガルスク王国との流通が途絶えたことで確信に変わっていた。ただ、それがこちらまで被害があるかどうかまでは判断できなかった。


 それでもロズがマガルスク王国にいっている以上、用意と覚悟はしていた。


 バデットになる生き物で効果は変わるが、アサルトライフルでゴッズをどうにかできた。なら、バトルライフルなら大抵の生き物には効果がある。人間なら十二分に効果はあった。


「セフティープライムデーに買っておいてよかった!」


 パレット買いしたので惜しみなく撃てる。アイテムバッグから補給されるのでマガジン交換する必要もない。熱でバレルが燃えることもない。


 戦闘強化服を着ているのでバトルライフルに振り回されることもなく、照準もヘルメットが合わせてくれるので当てるのも楽でいい。効率的にバデットの行動を殺せていた。


 魔石を潰さないと死んではくれないが、動かないのなら別に脅威でもない。あとでマナイーターを突き刺してやればいいさ。


「タカト、切りがない。飛ぶわよ──」


 エクセリアさんに腕をつかまれると、リミット様がしたような力を感じ、視界がブレたと思ったら教会らしき建物の屋根に現れた。危な!


「焼き払うわ」


「バデットは魔力が効き難いそうです」


 リミット様に言われたことを伝えた。


「大丈夫よ。バデットは何度も倒しているから。ヤマザキからもおもしろい技を教えてもらったから」


 右手を掲げると、大きな光の玉が作り出し、それをどんどん凝縮していって野球のボールサイズにした。


「光魔弾!」


 ビュンと投げると、凄い勢いで飛んでいき、バデットが集中している建物に撃ち込むと、大爆発を起こした。


 ……す、スゲー……!!


 RPG-7の数十倍はあんじゃねーの? グロゴールでもノックアウトさせそうな威力だぞ。


「もう一発!」


 まだ撃てんの!? 必殺技じゃないのか?!


 またバデットが集中しているところに撃ち込み、大爆発を起こした。


「ふー。威力がいまいちね」


 い、いまいちなんだ。この人、なにと戦ってんの? あ、いや、魔王か。魔王、そんなに強い存在なの?! 山崎さん、何者よ!?


「だ、大丈夫なんですか、魔力?」


「残り二割ってところね。少し休むわ」


 ちょっと安心した。これで半分も使ってないとか言われたら恐怖でしかないよ。バケモノすぎるわ。


「セフティーホームに入って休んでも構いませんよ。オレは下りますんで」


「仲間がどこにいるかわかるの?」


「あそこにいます」


 城のようなところを指差した。


 領主が暮らしていりはようなところによく入れたと思うが、ロズの気配はあそこから感じる。


「あそこなら飛べるわよ」


「いえ、あそこに集まっているバデットを町の外に誘導して一掃します」


 気配を感じるならまだ生きているってこと。なら、焦ることはない。バデットを一匹でも多く排除することを優先しよう。


「無理しないようにね」


「はい。無理ならすぐホームに入りますよ」


 戦闘強化服を着ているので、五メートルくらいの高さから飛び下りても痛みはない。けど、衝撃を打ち消すために次への動きができない。もっと戦闘強化服の練習しておけばよかった。


「動け!」


 フンヌ! と無理矢理動いて向かってくるバデットに弾丸を食らわせてやった。


 なんとか衝撃が消えてくれ、バデットの群れに突っ込んで強引に突破。タボール7を背中に回し、バールを取り寄せた。 


 並みの剣では戦闘強化服の力に耐えられない。乱暴に扱っても折れないバールが最良なのだ。


 バデット化していても肉体が破壊されていれば動くのは困難だ。とは言え、移動してくれなくちゃ困るので、骨を折るくらいで止めておく。


 追ってくる速度で走り、より多くのバデットを引きつける。


「なんか前もこんな状況あったな」


 できるだけ多く、できるだけ遠くに、だっけか? こんな状況ばっかりだよ。


 町の外に出ると、ちょうどよく煉瓦造りの小屋があった。


 ドアを開けて中に入り、ドアを物で塞いだ。


 隙間から銃口を出して集まってくるバデットを引きつける。


「こいつらなにを目的に集まってくるんだ?」


 音や臭いではなく魔力か? 魔力を求めて集まってくんのか? 情報がないのを相手するのは気を使うぜ。


 小屋を完全に囲まれ、ドアも破られそうなのでホームに入った。


「タカト!」


「ラダリオン、マルダード」


「わかった」


 突然のことにも迅速に動いてくれるラダリオン。マルダードを一つ受け取り、スイッチをオンにしてダストシュート。窓が紅蓮色に染められた。


「ラダリオン、バデットは数千。巨人の姿で一掃しろ」


「わかった」


 いつでも出れるようにAA-12を装備していたラダリオンをダストシュートさせた。

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