第20章 マガルスク王国編 1

第938話 秋も深まり *122000匹突破*

「おじちゃん! 鹿が狩れたよ!」


 機械弄りが好きな職員とパイオニア一号(廃車)を分解していると、狩りに出ていたマルゼたちが帰ってきた。


 秋も半ば。すっかり涼しくなり、朝晩は気温が十度以下になることも増えてきた。


 麦の刈り入れは早々に終わったせいか、コラウスからゴブリンもいなくなってしまった。今は山のほうがエサがあるのだろうよ。


「ミスズか。また増えてんのか?」


 去年、増えて散々狩ったってのにまた増えるとか勘弁してくれよな。いや、増えたほうがいいのか? 食糧不足解消になるし。


「二、三十匹の群れだったよ」


 都市国家から帰ってきたマルグも狩りに参加しており、両手にミスズをつかんでいた。


「そうか。冒険者ギルドにも報告しておくよ。さあ、風呂に入って汗を流してこい」


 何日か泊まりで狩りに出てたから風呂に入ってないはず。臭くなっているだろうから綺麗にしてきなさい。


「うん!」


 子供チームと言うか他種族チームと言うか、人、巨人、獣人、ドワーフ、エルフと結構な種族が集まる地になってしまったものだ。


 そんな種族など関係ないとばかりに去っていく子供たちを見送り、パイオニアの分解を職員たちと再開させた。


 夕方の十七時になれば終わり。基本、セフティーブレットは二十四時間体制ではあるが、緊急時でもなければ八時から十七時。夜間勤務(特別手当てを支給しております)を好む職員に引き継ぐ形にしている。


 ちなみにセフティーブレット周辺の見回りは獣人やドワーフたちがアルバイトとしてやってくれているよ。


 商人たちからの寄付と言うか感謝料みたいなのかセフティーブレットに送られてくるので、皆に還元しているのだ。お陰で他から移ってくるドワーフや獣人が増えているよ。


「お疲れさん。明日は組み立てな」


 分解組立は三往復くらいしているが、基礎は大事なのであと五往復はさせたい。覚えたら他の地に移動してもらいたいからな。一人でも組み立てられるようになって欲しいんだよ。


「お疲れ様でした」


 すっかり工場での感じを馴染ませてしまったが、オレとしてはこんな感じで生きてきたほうが長い。これが身についているのだ。


 最後に道具を片付けて仕事を終わり、オレはホームに入った。


 シャワーを浴び、つなぎは洗濯。ガレージに干したら外に出て館に向かった。


「お疲れさん」


 館にいる職員たちに声をかけ、腹が大きくなってきたシエイラのところに向かった。


 もう六ヶ月なので仕事はさせず、おばちゃんたちと編み物をしたり子供のことを話したりさせている。


 本人は産まれるまで仕事をしていたいようだが、心配なので仕事を取り上げたよ。まあ、なにもさせないってのも精神的に悪いからパソコンを覚えてもらっているよ。


「お疲れさん」


 部屋に入ると、おばちゃんたちとなんか服を作っていた。


「お疲れ様」


 一時間くらい話したらまたおばちゃんたちに任せてホームに入った。


 現在、館にいるのはオレとラダリオン。ミリエルはロンレアとアシッカをいったりきたり。雷牙は都市国家。ミサロはコルトルスの町にいる。


 ミサロが作ってくれた料理を食べながら今日の報告をしあった。


 意外と平和な時間が過ぎているが、逆に嵐の前のなんたらで怖くて仕方がないよ。


「報酬も二千万円を切ったか」


 十万円でヒーヒー言っていた頃なら「勝てる!」とか思えたんだろうが、今の状況では心もとなくて仕方がないよ。一千万円を切るのも時間の問題だろうな……。


「アレクライトの維持が堪えますね」


「そうだな。補給しないといかんのは辛いな」


 一回の補給で二百万円は飛んでいく。


「王都は民衆に食糧不足がバレてきたみたいだな」


 輸送部からの食料が高騰してきたと報告があったよ。


「カロリーバーはガーゲーから運んでいるのでいつでもホームに入れられますよ」


 万が一を考えてカロリーバーは休むことなく生産しており、パレット積みしてもらっている。オレがとべばいつでも出すことは可能だ。


「山は豊かなのにな」


「ミスズ、また現れてくれるといいですね」


 そうだな。肉は貴重だからな~。


「都市国家のゴブリンは増えないか?」


「うん。最近では見なくなったよ。魔境方面に逃げたんじゃないかって話だよ」


 魔境か~。


 そっちにいって稼ぎたいところだが、ダメ女神の言い方からして避けるべきだろう。きっと碌でもないことになりそうだ。


「リミット様からの助言が聞きたいところだ」


 ダメ女神と違って訊いたら答えてくれる。ってまあ、十二万匹からアナウンスはないんだけどな。まあ、ガチャの数から十二万二千匹は突破さしているみたいだがな。


「ラダリオン。悪いが、ロースト村にいってカロリーバーを出してくれるか?」


 ロースト村とは巨人の村ね。そこから食糧をもらえないかって相談が入ってきたのだ。


「わかった」


「ミサロ。そっちから豆とか回せるか?」


「んー。少しなら回せるけど、ロンレアを優先したほうがいいかも」


「そうですね。人も増えているので」


 どうやったら伝わったかわからんが、諸島群に住む者たちがやってきているそうだ。


「そっか。じゃあ、回すのは止めておくか」


 オレらの仕事じゃないとは言え、食わすことでセフティーブレットに味方してもらうのだから考えなくちゃならんのだよ。ハァー。

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