第920話 リフレッシュ休暇
島まで飛ぶとなると結構時間がかかるものだ。
まあ、マナックを補充しながら飛べるし、自動操縦もできるから苦ではない。朝に発てば昼前には到着できた。
「ん? まだ残ってんな」
海兵隊により全滅したかと思っていたら二十匹くらいの気配を感じた。ほんと、しぶとい害獣だよ。
「マリル、マルゼ、雑魚を放ってくれ」
格納庫に放り込んだゴブリンを放つのは二人に任せ、オレはホームからパイオニア四号+トレーラーや油圧ショベル(PC30)を出した。
油圧ショベルで穴を掘り、空堀を築く。
別に立て籠るわけではなく、境界線みたいなものなので、一メートルくらいの深さにした。
終われば単管パイプを運んできて組み立て、陽射し避けを作った。
「おじちゃん。特異種が目覚めたよ」
一休みしてたらマルゼがやってきた。もう目覚めたのか。やはり特異種なだけあって眠りに抵抗力があるんだろうか?
「わかった。今いくよ」
ラチェットを砂浜に投げ突き刺して特異種のところに向かった。
「おーおー元気なやっちゃ」
片脚を切り落としてやったのに、拘束具を破ろうとして暴れていたよ。格納庫から出しててよかった。
巨人になって特異種を押しつけ、ナイフで猿ぐつわを切り落としてやった。
「うるさい。吠えるな」
殴りつけて黙らせた。
「マリル。カロリーバーは撒いてくれたか?」
「うん! ゴブリンたちが食ってた!」
しぶとい害獣とは言え、環境が変わればなにを食っていいか学ぶにも時間がかかる。死なれちゃ困るからカロリーバーを島に撒いてもらったのだ。
「産めよ育てよ島に満ちろ。オレらの糧となるためにな」
拘束具をつかみ、木々のほうに放り投げてやった。
「お前の愛しき夫たちにカロリーバーを運んでもらえよ」
拘束具は十五日後に消える。それまで夫たちに食わせてもらうんだな。
木々の中に落ちたらあとは放置。単管パイプの組み立てに戻り、なんとか暗くなるまでには完成できた。
「二人とも、ここを頼むな」
ここをゴブリンに悪さされても困るので二人に見張りをお願いしたのだ。一応、ルルカを残していきます。
「任せて! ゴブリンが襲ってきたら倒してもいいよね?」
「ああ。構わないよ」
大事なのはこの二人だ。殺されるくらいなら殺して構わない。殺したらまた捕まえればいいだけだ。
「じゃあ、よろしくな」
ルースブラックに乗り込み、カンザフルに戻った。
さすがに夜中になってしまったので、飛行場に降ろしたらすぐにホームに入った。
「タカトさん。アリサたちもいきたいそうです。マンダリンも一緒に」
「構わんよと伝えてくれ」
アリサたちは職員ではなく請負員。休む休まないは本人たちの判断だ。休みにしたいのなら好きにして構わないだ。オレもリフレッシュ休暇を取らしてもらうんだしな。
「ラダリオンはどうする?」
「あたしはいい。海を見てもつまらないし」
「雷牙は?」
「おれもいい。まだまだゴブリンはいるから」
「そういや、アナウンスが入らなかったが、なんかあったのか?」
もう十一万七千匹になっても不思議じゃないんだかな。
「今回は自由にってことで、皆バラバラにやってるんだ。請負員が結構参加してるからね」
「早いもの勝ちってわけか」
まったく、ゴブリンも請負員も増えたら増えたで問題が出てくるものだ。
「ミサロはどうする?」
「わたしも遠慮する。肥料撒きがあるから」
ホームの外だと揃わないものだな。無理もないって言えば無理もないんだけどよ。
「了解。なにかあればホワイトボードに磁石を貼っててくれ。ミリエル。悪いが、ロンレアに回ってプレシブスを一艘ホームに入れてくれ。練習したいから」
リフレッシュ休暇で練習なんて、とは思うが、プレシブスを操縦したの、地下都市の港くらいだっけ? 思い出せないくらい乗ってない。せっかく海にいくのだから乗るとしよう。あ、ウルトラマリンも出しておくか。あれも長いこと乗ってないしな。
夕飯を食べたらウルトラマリンを引っ張り出し、整備することにする。
ガレージに仕舞う前に手入れはしたが、やはり長いこと放置しているとバッテリーが切れてたりプラグが一つ錆びてたりした。
「拭き切れてないところも結構あるな」
ホームに入れていても錆びるんだから不思議なものだ。
結構遅くまでかかってしまったが、機械いじりは嫌いじゃない。引退したら整備士として過ごすのもいいかもな。今から勉強しておくか?
「タカト。トラクターも整備してくれない?」
整備して一休みしていると、ミサロが外から入ってきた。
「壊れたか?」
「いえ、酷使させているからね、整備してあげたいのよ」
すっかりトラクターに愛着持ってんな。
「そうだな。リフレッシュ休暇が終わったら乗り物の整備をするか」
いろいろ買ったはいいが、碌な整備もしてない。ゴブリンがいない時期にやっておくのもいいかもな。王都もすぐにどうこうなるわけじゃないしな。
「お願い。あ、新しい草刈機、買ってもいい? 他の人にも使わせたいから」
ミサロは本格的に農業をやろうとしてんのか?
「いいよ。じゃあ、今買っちゃうか」
まだ就寝するには早い。ミサロの欲しいのを買うとしよう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます