第917話 嫁不足

 とりあえず特異種がいる山に向かってみた。


 すぐそこなので上昇したらすぐ下降だ。RMAXでいけばよかったかもな。


 ルースブラックからではゴブリンの気配はわからないので、山地にいい場所があったのでそこに着陸した。


「結構いるな」


 山の表面にいるってことは洞窟とかはないみたいだな。数からして巣は四ヶ所くらいか。集結している感じか?


 オレがきたことでゴブリンどもは隠れてしまったが、四百匹は軽くいるな。


「……全部駆除したところで二百万円か……」


 イカンな~。何千万円と稼いでいるから二百万円がショボく感じるようになっているよ。


 気を引き締めてゴブリンの気配を探り、山の地形をプランデットに記録させ、魔力反応を記憶させた。


「他の魔物はいないみたいだな」


 魔力反応はゴブリンばかり。それ以外のはいないようだ。


「レンカ、ルルカ。テントを張ってくれ。オレはホームに入るから」


 この場を任せてホームに入った。


 まだ十時過ぎくらいなのでミリエルが入ってくるまで時間があるのでガレージの整理をすることにした。


 お昼になって皆が入ってくる。ミリエルは十二時を過ぎて入ってきた。


「ミリエル。少し手を貸してくれ。ゴブリンの特異種を捕まえたいんだ」


 リミット様からのアナウンスを教えた。


「女神はどうしたんです?」


「さてな。出てこないでくれるならオレとしてはありがたいよ」


 あのダメ女神のせいでどれだけ胃を痛めたことか。このまま永遠にフェードアウトして欲しいわ。


「急ぎですか?」


「いや、ミリエルに合わせるよ。檻とか用意しなくちゃならないからな」


 ゴブリンがいた島は根絶やしにした。増やすためにも二、三十匹は必要だろうよ。


「わかりました。では、今日中に終わらせて、明日の昼には向かいます」


「了解」


 昼を食ったら外に出る。


「少しブレン2を慣らしておくか」


 四百匹近くいるんだから五十匹くらい駆除しても問題ないだろう。


 初めてのアサルトライフルに手間取ったが、夕方まで五十匹は駆除できた。てか、ショットガンのほうが楽だったな。


 テントはそのままにして飛行場に戻り、マリルとマルゼに山にいるゴブリンを生け捕りにすることを伝えた。


「ちょっと危ない魔法を使うから二人は畑のゴブリンを駆除していろな」


「おれたちも駆除したいよ」


「生け捕りしたら残ったのを駆除していいぞ。ただ、本当に危ない魔法だから人が近くにいると使えないんだよ。悪いが、山には近づくなよ」


「マルゼ、おじちゃんに従いな」


 十三歳くらいの女の子におじちゃん呼びは胸に突き刺さるが、お兄ちゃんと呼ばせるのも別の意味で胸に突き刺さる。堪えるしかないのだ。


 次の日は朝から山に向かい、少し荒らされた感じのテントでミリエルがくるのを待つことにした。


 昼に一度入ると、ミリエルがいた。どした?


「すみません。ちょっと出発が遅れたのでダストシュートしてください。夕方には三号艇が到着すると思うので」


 別に遅れた理由も気にならないのでミリエルをダストシュートさせた。


「眺めがいいですね」


「そうだな。平和なら皆でゆっくりしたいところだな」


 ホームで揃うとは言え、こうして眺めのいいところで弁当でも広げたいものだよ。


「まあ、それは今度にして、ゴブリンの情報を送るよ」


 プランデットをかけ、ゴブリンの情報をミリエルのプランデットに送った。


「おそらく、ここにいるのが特異種のメスだと思う。この群れを生け捕るとしよう」


「わかりました。他に二十匹くらい生け捕りにしてもいいですか? アシッカ伯爵様に殺してもらいたいので」


「伯爵に?」


 一応、伯爵も請負員にはなってもらったが、なんか理由があるのか?


「アシッカも人の往来が増えたので伯爵様にグロックを持たせました。その練習にゴブリンを使おうかと思いまして」


「そんなに人が増えたか。護衛の騎士を用意するか?」


 騎士爵ってのはあるらしいが、大きな領地でもないと騎士は雇えないそうだ。ましてや騎士団なんて抱えられるのは国王か公爵ぐらいなんだってさ。


「兵士を雇うほうがいいと思いますよ。下手に爵位があると男爵たちとの差別が面倒になるので」


「ミリエルがそういうなら騎士は止めておくか」


 そういう身分的なことはオレにはわからない。ミリエルがダメというなら素直に従っておくとしよう。


「ただ、男爵令嬢はアシッカにも欲しいですね。アシッカの男爵家も外から血を入れたほうがいい時期なので」


 そんな時期があるんだ。オレには想像もできんわ。


「ルジューヌさんに会ったら伝えてみてくれ。王都の男爵家は大変みたいだからな」


「わかりました。騎士爵の娘でも構わないと伝えておきたす。アシッカは嫁不足みたいですので」


 そうなんだ。こんな時代から嫁不足とかあるんだな。


「さて。そうなるとこの群れも眠らすか。二十五匹いるからな」


 特異種の群れから離れている。騒がれても逃げようとは思わんだろう。ここのゴブリンも逃げるより隠れるを優先するからな。


「じゃあ、ちょっと着替えてきますね」


「オレも装備を換えるか」


 生け捕りにするんだし、身軽な格好にするとしよう。

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