第909話 駆除訓練

 祭り? は盛況で終わり、農民は気持ちを切り替えてミジャーに食われて枯れそうな麦を刈り取り始めた。


 それを眺め、オレも意識を切り替えて飛行場、と言うには無理がある広場に建物を造ってもらうべく、カンザフルの職人に依頼を出した。


 伯爵領とは言え、そこまで需要があるのかと思ったが、それなりにあるらしく、家を造る集団(組か?)は二つあり、運よく一つの集団が空いてのですぐお願いできた。


 一応、支部と寝泊まりできるくらいの建物なので、冬前には完成させられるんじゃないかって話だ。


 完成までのんびり過ごしたいものだが、生きるために稼がなくちゃならないし、マリルとマルゼに訓練を施す必要もある。


 今のところ問題らしい問題ない。プロプナスもどこかに消えて姿を現してない。アレクライトも慣熟訓練として王都近海や向こうの大陸の様子を調べてもらっている。


 ガーゲーに沈んでいたクーズルースも復活して、今は海に出ていて練習航海に出ているそうだ。


 ロンレアも一月二月では復興も進んでいない。コラウスやミヤマランから隊商からはたくさんきているみたいだが、人が住み着いている様子はない。まだまだロンレアが元通りになるのは何年も先だろうよ。


 食糧不足もまだ先のこと。これから秋になるのだから食べるものは採れるはず。本格化するのは冬になってからだろうな。まあ、その前に王国が動くかどうかは知らんけど。


 どなるかわからんことに頭を使っても仕方がない。オレはゴブリン駆除員。ゴブリンを駆除してなんぼ。そこにゴブリンがいたら駆除するのみだ。


「ほんと、ゴブリンはどこにでもいやがるぜ」


 畑が広がるのに、ネズミか虫でも狩っているようで、察知範囲内に百匹近いゴブリンが蠢いていたよ。


「マリル。そのまま直進。百メートル先にいる」


「了解」


「マルゼ。お前から見て右斜め、五十メートルだ。北に誘導しろ」


 オレはブラックリンに跨がり、プランデットで二人に指示を出している。


 マルゼには子供用のマウンテンバイクを買い与え、ゴブリンを追いやる役目を任せた。マリルは俊敏で目もいいので仕留め役だ。


「正面だ、撃て!」


 三匹が隠れている直前で指示を出すと、驚いて硬直した三匹の気配が消えていった。


 ガレージの肥やしになっていたMP9をマリルに持たせたが、なかなか上手く扱っている。あいつはナイフより銃のほうが性に合ってんのかもな。


「マルゼ。十四時方向、二百メートル。四匹だ。気配が弱いのが一匹いる。怪我しているかもしれない。そいつなら駆除してもいいぞ」


「了解」


 八歳のマルゼに銃を持たせるのは早いので、フラッシュライトを持たせ、目潰し攻撃をしたのちナイフで首をかっ斬るよう指示を出している。


 二人とも過酷な山で育っただけに殺す躊躇いはまったくない。気配の小さいのを殺した。


「よし。一旦集合だ」


 麦畑は広大だ。ゴブリンも逃げたし、警戒を解くまで時間を開けるとしよう。


 マリルの側に降ろし、マウンテンバイクに乗っているマルゼにきてもらう。


「よくやった。水分補給と塩飴を舐めろ」


 今日は天気がよく気温も高い。熱中症対策はしっかりしておこう。


 三十分休んだら警戒を解いた群れを探し、マリルを後ろに乗せて移動する。マルゼはマウンテンバイクで移動だ。


「ゴブリンの背後から向かう。飛び降りれるな?」


「はい。大丈夫です」


 この世界がアニメだったら間違いなくマリルは主人公だな。時速六十キロで自然滑空しているブラックリンから飛び降り、ゴブリンを衝撃吸収材として使って地面に着地。三匹を瞬殺した。


「そこから十時方向、距離三百メートル。五匹いる。風下から向かえ。マルゼ。お前から見て十三時だ。途中、一匹いるが無視しろ」


「了解!」


 八歳なのに体力があるよな。オレならバテてる距離と速度だぜ。


 その日は十三匹で終了。万を経験してるとショボい数だが、これは訓練。確実に駆除できる意識を植えつけるのが目的。報酬は二の次だ。


「お疲れさん。パイオニアを出してくるよ」


 飛行場から四キロは離れている。これから帰るのは大変だからパイオニア五号を出してこよう。

 

 すぐに飛行場に到着。ご隠居様とゴズさんに迎えられた。


 二人も城から飛行場に移り、ご隠居様はKLX230Sの練習。ゴズさんは村人の鍋を修繕したり鎌を研いだりしているよ。


「ご苦労さん。湯は沸かしておいたぞ」


 職人に風呂も作ってもらい、ヒートソードで沸かしている。


 ヒートソードも残念賞ばりに当たっていたが、最近はまったく出てこない。逆に回復薬ばかり当たっているよ。


 さすがにこれ以上は渡せないので、湯沸かし用としてオレが持ち、使わないときは飛行場に置いているよ。


「マリル。先に入ってこい」


 オレとマルゼはあとで一緒に入ることにする。


「おばちゃんたち、今日もきてくれてるんですね」


 男だけでは大変だろうからって村のおばちゃんたちが夜にきてくれてるのだ。


「タカトは支払いがいいからな、喜んできているよ」


 まあ、報酬はカロリーバーだからな。惜しみなく渡せているよ。


 風呂の前の缶ビールを飲んでいると、ルースブラックが飛んできた。


 ――――――――


 予約投稿間違えました。

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