第895話 変異種 *114000匹突破*
ご隠居様の気配を確認しながら流れ弾に当たらないよう阿鼻叫喚なゴブリンを駆除していった。
──ピローン!
やっとか。今回ばかりは待ってたぞ、こん畜生め!
──ヘイヘイ! 十一万四千匹だぜ! イエーイ!
今回は一段とポップだな。なにかいいことあったのか?
──ただ、順調なのが嬉しいだけですよ。そこのゴブリンを駆除しなければ村は壊滅。交易路が途絶えるところでしたからね。
千匹くらいで? 請負員五人も投入すれば事足りる数だろう?
──孝人さんも成長したものです。千匹単位のゴブリンを率いる首長は変異種です。銀印の冒険者でも勝つのは怪しいところ。孝人さんが初めて倒したのも変異種。よく倒せたものです。あれを見て孝人さんは一味違うと思いましたよ。
あれ、変異種だったんかい! ラダリオンと出会ってなければあそこでジ・エンドだったじゃん!
──そうですね。今回もダメかと思いました。大した力も授けなかったのに、それが十万匹も駆除する偉業を果たした。わたしではない誰かが力を授けたのかと疑いましたよ。
オレ、運がよかったりする?
──運もありますが、孝人さんは他の駆除員とは違う発想ができるというのが強いのでしょう。それに、孝人さんは他者を使うのが本当に上手い。上や下の者の気持ちをよくわかっている。そんな駆除員、いませんでしたよ。
いや、いただろう。他者を利用できる者くらい。
──いましたね。でも、信奉に近いほどの信頼を受けた者はいませんでした。
だったらそういうヤツを連れてこればよかったじゃん!
──人格者ほど早死にします。
あ、うん、そうですか……。
なんかわからないでもない。いいヤツほど早死にするって言うしな。
──そこのバランスが取れた者を判断するのはわたしでも不可能ですよ。全知全能な神など存在しないのだから。
ダメ女神による神否定。いやまあ、この女神を見てたら全知全能な神なんていないってわかるがよ。
──たまに当たりを引いたような駆除員もいますが、それでも五年が精々。是非とも孝人さんには寿命で死んでいただきたいものです。
その報酬が一億円かい。
──それは五年以上生きたときの報酬であり、一億円に匹敵するボーナスです。一例を示すならあと五人をセフティーホームに入れられることもできますよ。
ダメ女神の姿は見えないが、いやらしく笑っている姿がありありと見えた。
──一例は一例です。他の願いでも構いませんよ。セフティーホームは五人+特別枠一人。それ以上でもそれ以下でもありません。まあ、一人欠員が出たら補充は可能ですけどね。
オレでもか?
──はい。孝人さんでもです。では、十一万五千匹目指して頑張ください。ゴブリンはどこにでもいますからすぐですよ。
ダメ女神からのアナウンスが途絶えてもしばらく動けなかった。
「……クソが……」
あんなこと聞かせられたら益々死ねねーじゃねーか。いや、最初から死ぬ気なんてねーさ! オレは必ず寿命で死んでやるし、残された者が悲運の死を遂げるような体制にはさせない。駆除員は必ず寿命で死なせてやる!
「そうだ。こんなところで止まってられるか。一匹でも多く駆除してオレたちが生きられる生存圏を築いてやるさ」
両手で両頬を叩いて活を入れた。
「よし! やるぞ!」
ルンを交換して充填するのを待ち、完了したら未だ阿鼻叫喚なゴブリンを駆除していった。
「──タカト!」
「こちらからいきますので動かないでください!」
減る毎にご隠居様との距離が縮まり、声が届く範囲になったのでこちらから向かって合流した。
「お疲れ様です。結構稼げましたか?」
先ほどのことは顔に出さず、穏やかに声をかけた。
「ああ。百匹は倒したと思うぞ」
百匹か。そこそこは駆除した感じだな。やはり万単位じゃないと儲けは少ないな。って、感覚が狂ってきてるな……。
「では、最後に大物を倒すとしましょうか」
雑魚は粗方片付けた。生き残っているのは首長の止めを刺してからでいいだろう。
イチゴに脚を撃たれてもその気配は強大。道標があるようなものだ。迷うことなくご対面できた。
「……これが王、いや、首長か。ゴブリンって域を出ているじゃないか……」
「そうですね。さすが変異種。よく育っている」
それでも12.7㎜弾には勝てないのだから現代兵器は恐ろしいものだ。
「ちょっと待っててください」
EARでは殺せない。7.26㎜弾でもないと無理だろう。
バトルライフルはタボール7しかないのでこれで我慢してもらう。
外に出てご隠居様に渡し、使い方を教えて逃げようと這いずる首長を撃ってもらった。
「うん。百万円が入りましたね」
女王の報酬を知っているからか、百万円が入ってあまり嬉しいって感動はなくなったな。まったく、慣れとは困ったもんだよ。
「ご隠居様は村に戻って休んでください。オレは生き残っているのを駆除してからゴズさんを連れて戻りますんで」
プランデットをかけているとは言え、ご隠居様には辛かろう。オレもサポートしながら止めを刺していくのも大変だ。ここは先に戻ってもらうとしよう。
「うむ。わかった。無理するでないぞ」
「わかりました。では」
タボール7を受け取り、マガジンを取り寄せて交換。気配がするほうへ向かった。
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