第889話 夜の見回り
二日かけてアシッカからルースミルガンを四機、コラウスに移動させた。
「よくもまあ運んだものだ」
コラウスに戻ってきたラオルスさんが呆れている。
まあ、無理もない。ルースミルガンは偵察機みたいなもの。長距離を飛ぶ仕様にはなっていない。
ルースカルガンと違い、ルースミルガンは外にマナック補給口がある。いちいち降りて補給しないといけない。これが結構手間なんだよ。
「運んだ甲斐はありますよ。ここには小型魔力炉がありますからね」
エレルダスさんが用意したので、マナックを大量に使えたお陰で起動できたものだ。これがあれはコラウス内なら自動充填できて、ほぼ無限に飛べるようになった。システムもエウロン系に書き換えれば管制できるそうだ。
「ラオルスさん。時間があるときでいいので職員に操縦を教えてください」
魔力さえあればコストとか考えなくていい。整備も警備兵がやってくれるし、万が一壊れてもガーゲーに運べ修理はできる。コラウスの防衛は万全と言って……はダメか。それは油断になる。万全なんてことはないと、油断なくやっていくとしよう。
「ラー。やる気のあるヤツを募って教えてみるよ」
「お願いします。オレはもうしばらくコラウスにいますんで」
「海はいいのか?」
「近くに寄ってきたら退治しても構わないと言ってきました」
別にオレが参加するほどの魔物ではない。殺せるだけの兵器は揃っているのだから指揮官さえいれば一日もかからず終わらせれるだろうよ。
「まあ、タカトが示した方法はなら問題なく倒せるだろが、よく思いつくものだよ」
「生き物を殺すのに特別な兵器はいりませんよ」
だからって報酬で買うのは嫌なので、古代エルフの兵器を使わせていただきます。
「じゃあ、お願いします」
あとはラオルスさんに任せ、シエイラのところに向かった。
ランダミアさんは帰っており、今はルシフェルさんに仕事を教えていた。
「シエイラ。暗くなるまでコラウスを回ってくるな」
「あなたも心配性ね。シエイラはまだ大丈夫なんだから近くにいなくても大丈夫よ」
ルシフェルさんの呆れに職員から笑いが出てしまった。
べ、別に、心配しているわけじゃないし。ただ、この機会にコラウスの様子を見ておこうと思っただけし。
って言うとさらに笑われそうなので、そそくさと逃げ出した。オレは逃げることを恥と思わない男なのだ。
KLX230Xを出してきて出発した。
これと言った目的はないのでまずは街に向かった。まだガズさんがきてないので様子見がてらいってみることにしたのだ。
って、道を進んでいたら馬車が見え、その御者台には御者とゴズさんが座っていた。
「言ってる側からやってくるとはな」
しばらく待っていると、あちらもオレに気づいたようで手を振ってきた。
「遅れて悪かった。準備に手間取ってしまった」
「なんか急がしたようですみません」
「いやいや謝ることじゃないさ」
とりあえず館に向かうことにする。
馬車の速度だと一時間くらいかかってしまったが、明るいうちに館に着けた。
荷物は結構あるが、職員五人に手伝ってもらってパレットに積み込み、ホームに運んだ。
「今日は館に泊まってください。あと、よく食べてよく眠っておいてくださいね」
「え? あ、ああ。遠慮なくそうさせてもらうよ」
「酒は控えてくださいね。今日だけでいいんで」
困惑するガズさんを部屋に案内し、今日は館の食堂で夕飯とした。
「そういや、夜の館がどうなっているか知らなかったな」
館は二十四時間体制にしているが、誰がどう動いているかまったく知らないや。
「まあ、タカトがそこまで気にする必要はないわよ。そこまで規則正しくやっているわけじゃないからね」
「外の警備は職員がやっているのか?」
「職員の家族や女衆もやっているわ。前に泥棒しに入った不届き者がいたからね」
「そんなヤツいたんだ」
「まあ、どうなったかは聞かないほうがいいわよ。耳にいいものじゃないからね」
どうやらオレに負担かけないよう黙っていたようだ。まあ、人を殺してへこんでいる姿を見せたからな。致し方がないか。
「今日はオレも夜の見回りに出てみるよ。職員に伝えておいてくれ。二十三時から外に出てみるから」
ちょっと仮眠してから夜の見回りに出るとしよう。
「気を使いすぎよ」
「自分のテリトリーのことをなにも知らないってのもマスターとしてどうかと思うからな。やるのは今日だけだ」
トップがやたらとうろつくのも下としては嫌なものだろう。オレだって社長が工場の見回りとかちょくちょくやられたら迷惑でしかないからな。
ホームに入って三時間くらい仮眠したらP90装備にして外に出た。
二十三時まではまだ時間はあるが、とりあえずラザニア村周辺を回ってみることにした。
「ここにきたときを思い出すな」
去年のことなのに遥か昔のような気がするよ。一年でここまで変貌するとは夢にも思わなかったぜ。
巨人も火の番をするようで、ライトを持つヤツと遭遇。ちょっと話してから別れた。
職員とも何度か会って話を聞き、今後の警備を考えながら朝まで敷地内を歩き続けた。
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