第880話 ルースミルガン訓練

 一日でルースミルガンをアシッカに運ぶのは二機が精々だった。


 アシッカにはマンダリンも置いてあるが、これを乗りこなせる者は少なくてシートを被せてある状態だ。


 マイセンズ系のエルフでもマンダリンに乗れる者は少なく、職員ではまずいない。


 今の状況では宝の持ち腐れだが、コラウスの城には二機置きたいのだ。ルースカルガンを輸送に回したいのだ。


「これにシートをかけておいてくれ」


 マリーダにお願いした。


「マスター。これ、わたしたちも操縦していいですか?」


 マンダリンには興味を示さなかったマリーダがルースミルガンには興味を示した。どした?


「アシッカを回るのにパイオニアでは時間がかかるんです」


 パイオニア一号はアシッカに置いて、巨人の村やエルフの村を回ってもらっているのだ。


「そうか。じゃあ、マリーダをロンレアに連れていくか。あっちで操縦を覚えてもらおうか」


 ライズさんがルースミルガンの操縦を教えている。ルジューヌさんも今教わっているよ。


「はい。代理はライタに任せます」


「了解。荷物を纏めてこい。ホームに運ぶから」


 マリーダの用意ができたらブラックリンでロンレアに向かった。


 途中、マナックを補給しながら無事ロンレアに到着。アレクライトの後部甲板に降ろした。


「……これが、マイセンズに沈んでいた船ですか……?」


「ああ。そうだよ」


 マリーダはマイセンズにいってないが、資料では見せている。確か、アレクライトも沈んだ状態のをデジカメに収めたはずだ。


「ルジューヌさんもやってんな」


 空に目を向けると、ルースミルガンが何機か飛んでいた。


「ちょっと待っててくれ」


 ホームに入り、ラダリオンが待機してないかを確認。いないので格納庫にいくと、マガジンに弾を込めていた。


「ラダリオン、悪いな。これからマリーダにルースミルガンの扱いを教えるから好きにしてていいぞ」


「わかった。あと、じいちゃんがきたよ」


「カインゼルさんか?」


「うん。空を飛んでる」


 あの人も疲れ知らずだな。ミジャーのことから休みなしってのに。


「まあ、夜にでも挨拶するか。マリーダ。疲れてないか?」


「大丈夫です」


 職員として冒険者ギルドに入って、志願してうちにきたヤツだ。体小さくて冒険者になることは断念したそうだが、マリーダとしては冒険者になりたかったみたいだ。


「若いってのは羨ましいよ」


「マスターも若いでしょう。わたしと同じ年代にしか見えませんよ」


「オレのところでは若く見られるだけで中身は立派な三十代だよ」


 生き残りが続くお陰でシックスパックにはなったが、一日の疲れが取れなくなっている。これでいい酒が飲めなかったらストレスで禿げているところだわ。


「じゃあ、ルースミルガンを出すから甲板で待っててくれ」


 残り二機になった片方にマナックに乗り込み、魔力充填していることを確認。後部甲板に上がるエレベーターに移動させた。


「船橋、誰かいるか?」


「はい。います」


 と、男の声が返ってきた。


「エレベーターを上げてくれ」


「了解です」


 落ち着いているところをみると、何回かやっているようだ。


 エレベーターが上がり、後部甲板に出た。


「マリーダ。乗れ」


 ルースミルガンは左右にドアがあるので中から開けて乗らせた。


 シートベルトをさせて、操縦系を教えた。


 機体を動かすのスティックで、これには機銃やミサイルのスイッチがついており、足のペダルで出力調整。右レバーで前進と後退を行う。


 プランデットをしていればスティック操作だけで動かせたり、思考操作したりできたりもする。慣れれば簡単なものだ。


「まずは飛行する感覚を覚えろ」


 発進させて飛行する感覚をマリーダに教えた。


 一時間ほどして港の広場に降ろす。ここでもアレクライトから魔力を充填できるので。


 広場にはライズさんとルジューヌさんも降りていて、休憩していた。


「もう操縦しているんですか?」


「はい。難しい操縦はできませんが、飛ばすだけならなんとかできるようになりました」


「なかなか覚えはいいぞ。あとは数をこなすだけだな」


 へー。やはり感覚のいい人は乗り物に強いんだな。これならマンダリンも乗れそうだ。


「タカト。そちらの方は?」


「アシッカの支部長の一人で、マリーダです。ルースミルガンに興味があるようなので教えることにしました。マリーダ。こちらはルジューヌさん。ミヤマラン公爵の娘さんだ。粗相がないようにな」


「公爵のご令嬢でしたか。失礼しました」


 慌てて跪くマリーダ。これがこの世界の常識なんだな。


「立ってくれ。わたしもセフティーブレットの一員となったのだ、これから同僚として頼む。公爵の娘とかはなしで頼む」


 やはりその口調が地なんだろう。なんで口調を変えたんだろう?


「は、はい! よろしくお願いします!」


 これが身分差ってヤツか。オレは上司や年上としか見てなかったからこういうのっていまいち理解できないんだよな……。


「陽も傾いてきたし、今日はこれで終わりにしよう」


 夜間飛行はできないので、二人にはプランデットの扱い方を教えることにした。

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