第19章
第879話 ルジューヌ
後ろで控えていたミリエルに視線を飛ばすと、わかりましたと頷いた。
ありがとうと笑い、オレは格納デッキから配下の人と公爵の荷物を荷物を降ろした。
「公爵様。オレは他の仕事をしますので失礼します。なにかあればミリエルに言ってください」
「ああ。そうだ。ルジューヌを連絡役としてタカトの側に置いてくれ」
「コラウスでいいですか? オレが拠点とするのはコラウスなので」
今はアシッカに駆除員がいない。連絡を取るならコラウスがいいだろうよ。
「……その辺はタカトに任せる。セフティーブレットの一員として仕事を与えてくれ」
「わかりました。騎士団を指揮した人なら歓迎します」
ルジューヌさんなら一団を任せてもいいかもしれないな。いや、アルズライズに預けるか? 副船長は必要だし、海兵隊員を指揮する者も必要だからな。
「じゃあ、いきますか。まずはあの船に向かいます」
アレクライトが港に停泊していた。どんな様子か見にいくとしよう。
ルースブラックに乗り込み、港の広場に降ろした。
「ん? そう言えば、プロプナスの姿を見なかったな? どこかに流れたか?」
山頂に降りるとき海も視界に入ったが、それらしいものはいなかったはずだ。たぶん。
「大きくて立派な船ですね」
「五千年前に栄えたエルフの船です。名前はアレクライト。海の英雄の名前みたいですよ」
巨人が橋を作ってくれたようで、出入りが楽になっている。
「マスター」
橋を昇っていたらマルーバが降りてきた。
「ご苦労さん。戻っていたんだな」
「はい。さすがに人が増えてお嬢の運ぶ量では追いつかないので戻ってきました」
まあ、確かに四十人以上が乗っている。ラダリオンが運ぶにも限界はあるか。船は常に動いているんだからな。
「プロパンガスと発電機を積み込むか」
変換器があればアレクライトから電気をもらうんだが、そんな都合のよいものはない。その二つがあれば五十人までなら問題ないはずだ。マルデガルさんが付与してくれたコンテナボックスもあるしな。
マルーバは外に用があるのでそこで別れ、船橋に向かった。
船橋にはライズさんがおり、雑誌を見ながらコーヒーブレイクしていた。読めんの、それ?
「お疲れ様です」
「ああ、お疲れさん」
すっかり挨拶が板についてきたな。この世界でも五千年前でも使ってなかった挨拶だろうに。
「プロプナスは現れなかったんですか?」
「ああ。覚悟して戻ってきたんだが肩透かしだよ」
「まあ、いないのならいないで放置しておきましょうか。退治に参加したい人もいますからね」
「相変わらず雑魚扱いだな」
「雑魚だとは思いませんが、グロゴールほど脅威ではありませんね」
わざわざ探しにいく相手でもない。こちらに近づいてきてからで充分に退治できるだろうよ。
「ライズさんはいつまでいられるんです?」
「エレルダス様からはタカトに従えとは言われている。お役御免になるまでいるよ。まあ、強いて言うならこのまま操舵士としていたいな」
「再生計画には参加しないんですか?」
人間で言えばまだ四十代。子を成す能力はあるはずだ。
「オレはパスだな。再生計画は若いのに任せるよ」
古代エルフは年齢を重ねると性欲ってものが薄くなるとか。性欲がある者がどう処理していたかは聞いてません。
「アルズライズは?」
「海兵隊の訓練に出ているよ」
捜しにいくのもなんなので、格納庫からルースミルガンを出すことにする。
「ルジューヌさん。しばらくアレクライトの中や港町を見て回っててください」
今はラフな格好で剣を差しているだけなので、アイテムバッグとマイセンズで見つけたインナーシャツや服、靴なんかを買って持ってきた。
「ちなみにルジューヌさんって領外に出たことはあるんですか?」
「王都なら三年くらいいました」
ってことはロンレアはないってことか。なら、レンカとルルカをつけさせた。
「オレが戻らないときはアレクライトに泊まるか城に泊まるかしてください。オレはホームを通じてあちこちいかないといけないので」
「わかりました。なにか手伝うことがあればなんでも言ってください」
「ええ。頼りにしてますよ」
もうちょっと時間があれば付き添って教えたいところだが、カインゼルさんがくるまで用意しなくちゃならないことが多々ある。悪いが、領外のことを見て見聞を広げてくださいな。
「暇だからおれがアレクライトを案内するよ」
ライズさんが気を使ってくれたようだ。
「お願いします。オレはルースミルガンを外に出すんでなんかあったら声をかけてください」
「ラー」
船橋を出て格納庫に。まずはESMや戦闘強化服をホームに運び込み、ガレージを空けてルースミルガンを一機運び込んだ。
「あ、ラダリオン。いいところに入ってきた。オレは新要塞都市にいってくるから十五時くらいにホームに入ってくれ」
「わかった」
ブラックリンを出して新要塞都市へ飛び、ルースミルガンを出したら入ってきたラダリオンにダストシュートをしてもらう。これでなんとかアシッカまで運ぶことにする。
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