第873話 会合
あー。確かに巨大な生物がぶつかったような暴れたような感じの崖崩れだわ。
レッドなドラゴンでも居眠り飛行でもしたか? だったら迷惑なことだ。なにも街道があるところでやらなくてもいいだろうに。
「これは酷いな。何年かかることやら」
「巨人が片付けてくれたらすぐなんですけどね」
その巨人はロンレアに移っているので巨人村にいる若夫婦二組とその家族が数人いるだけ。とてもこちらに回せる数ではない。人間による人海戦術でやるしかないだろう。
「これを機にミヤマラン公爵と話し合ってみるのもいいかもしれませんね。会ったという実績も大切でしょうからね」
それが商人の耳に入ればアシッカとミヤマランの繋がりが強いってことの証明にもなるはずだ。
「それができるならやりたいな。マルド様にはお世話になったからな」
「では、ノーマンさんに取り次いでもらいましょう。七日くらいアシッカを離れても大丈夫なように調整してください。オレはその間に仕事を片付けてきますから」
まだまだ運ぶものがあるし、エルガゴラさんをコラウスに運ぶ必要もある。五日くらいは欲しいな。
アシッカの城に戻り、一ノ瀬運送を続けた。
五日くらいに伯爵を訪ねると、もう少しと言うので三号艇をロンレアにいるミリエルに預け、ミサロにダストシュートしてもらってコルトルスへ。エルガゴラさんをルースブラックに乗せてコラウスに飛んだ。
屋敷のことはシエイラを通して巨人に頼んでもらい、見にいったらもう土台まで造り上げていた。
「お、タカトか。帰っていたんだな」
「おう。ゴルグも帰ってたんだな」
巨人の脚ならコラウスまで帰るのも時間はいらないか。
「お前も屋敷造りに参加しているのか?」
「ああ。またロンレアにいくまで暇ができたんでな。仕事に参加させてもらっているよ」
「村の者じゃないのもいるな?」
「ああ。街のヤツらだよ。ちょっとした出稼ぎだな。巨人が飲める酒を売っているのはここだけだからな」
あ、酒な! 巨人用はラダリオンにお願いしてたの忘れてたよ!
「酒、足りているか?」
「そろそろなくなってはきてるな」
離れにいってみると、確かに残り僅かだった。
「タカト。いいところにきたね。酒を補充してくれるかい?」
離れを管理しているロミー(ゴルグの嫁ね)が息子のロックを連れて現れた。
……一歳児でも二メートル以上あるんだな……。
「ああ、わかったよ」
巨人になれる指輪では効率は悪いが、ラダリオンを呼ぶのは大変なのでがんばるしかない。職員に協力してもらいながら棚を満杯にさせた。フー。
「ご苦労さんな。皆で飲んでくれ」
協力してもらった職員にワインを一本ずつ渡した。またご協力お願い致します、って意味を籠めてな。
「エルガゴラさん。オレはいくんでなにか注文があるなら職員かゴルグに言ってください」
酒を補充するのに二日もかかってしまった。そろそろアシッカで待機するとしよう。
アシッカにも運ぶものを積み込み、ルシフェルさんにもついてきてもらった。
副館長としてアシッカにいる職員にも報告がてらミヤマランにもきてもらうことにした。シエイラでは全体を見ることができないからな。
アシッカに飛び、職員たちにルシフェルさんを紹介したらアシッカの状況を聞かせてもらった。
「……やはり支障が出ているか……」
「はい。ミヤマランは大きいですからね、塩の消費はかなりのものです」
もうロンレアに移行したのか。行動が早いこった。いや、それだけ追い詰められていたってことかな?
「ミヤマランも切羽詰まっている感じか」
「そうですね。冒険者が運んでいるのでもうしばらくは大丈夫でしょうが、冬の前に開通させないと危ないかもしれませんね」
「なら、ルースブラックで運ぶか。足止めされている隊商に声をかけておいてくれ」
「わかりました」
「ただで運ぶの?」
「できる商人なら言わなくても出してきますよ。オレとの繋がりを持ちたいでしょうからね。まあ、損して得取れですよ」
多少の損でミヤマランの商人の支持を得られるなら安いもの。ミヤマランから物資を運ぶことでアシッカやコラウス、ロンレアが栄えられるんだからな。
「あなたはそうやって支持を得てきたのね。納得だわ」
「将来的にセフティーブレットの得となるなら今現在損をしても構いません。先を見て行動してもらえると助かります」
「心に止めておくわ」
あとのことはザイルに任せ、城に向かった。
「用意はできましたか?」
荷物が玄関前に積まれており、めかしこんだ伯爵が待っていた。
「ああ。ルースカルガンが見えたからすぐに用意したよ」
ホームからパイオニア五号とトレーラーを出してきて荷物を積み込んだ。
「用意は何日にしました?」
「十日から十五日にした。ミヤマランの街も見て回りたいからな」
「エビル男爵も同行するんですか?」
アシッカの軍事を任された男爵で、伯爵の嫁さんの兄って人だ。
「ああ。わたしもマルド様とは面識がある。マレアット様だけいかせるわけにもいかんからな」
確かにそうか。伯爵の身で家臣を連れずにいったら恥ずかしいのかもしれんな。公爵はそんなこと気にはしないだろうけど。
「わかりました。では、伯爵を預かります。無事連れて戻るのでご安心してください」
伯爵の嫁さんに伯爵を無事連れて帰ることを約束して空港に向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます