第872話 崖崩れ
一ノ瀬運送業、開業!
とばかりに荷物をあっちからこっちへ。こっちからあっちへと運んでいる。
ガーグルスのことはモニスや巨人たちに任せ、ロンレアに運んでもらいながら建物造りは一時中断。牧場造りに励んでもらっているよ。
「ミジャー、まだあったんだ」
これで終わりだろうとコラウスに飛んできたらミジャーが詰まった麻袋が山積みとなっていた。てか、腐らんのか?
「まだまだあるわよ。館に置けないから数ヶ所に置いてあるわ。まあ、さすがにお金は空になりそうだけどね」
シエイラに尋ねたらそんな答えが返ってきた。
こりゃオレ一人では無理だと、獣人姉弟にも一ノ瀬運送に就職させた。
「ミハレア。お前たちはミジャーをガーゲーに運んでくれ」
六号艇は獣人姉弟と荷降ろし要員四人で運用してもい、まずはコラウスとガーゲー間を担当してもらうことにする。
オレはガーゲーからロンレアにミジャーの粉とカロリーバーを運び、ピストン輸送を繰り返した。
「マスター。アシッカの支部長がきて欲しいそうです」
「ザイルのほうか?」
あそこもなんとかしないといけないよな。アシッカの城壁内もロッテル地区もある支部のままだから。
「わかった。ミジャーはまだあるのか?」
「四分の一が終わったくらいだと言ってました」
まだ四分の一かい! ミジャー、さすがに腐るだろう!
「ミジャーですが、コラウスでも粉にしてゴブリンを誘き寄せるエサにするそうです」
「人材や資金はどうするんだ?」
セフティーブレットに資金はなく、コラウスに余分な人材はいないだろう。
「ドワーフがまた逃げてきたみたいで、その人たちの仕事にするようです」
「またドワーフが逃げてきたのか」
あの国、大丈夫か? まさか崩壊とかならんよな? 鉄も流れてきてないみたいだしよ。
「三百人くらい逃げてきたそうですよ」
「そんなにか!? マジヤバ状況だな!」
こっちは忙しいんたから巻き込まないでくれよ。今なんかあってもオレは動けんからな。まあ、ロズたちが助けを求めてきたら全力で乗り込むがな。
「館にも百人くらいのドワーフが集まってましたね」
「……賑やかになってそうだな……」
エルガゴラさんにどうするかもう一度訊いてみないといかんな。
「とりあえずアシッカにいってみるよ。引き続き頼むな」
アシッカには虫の肥料を積んで向かった。
空港に降ろすと、なにやら隊商が集まっていた。どした?
「マスター!」
「お疲れさん。どうした?」
「エントラント山脈で崖崩れがあったみたいで、隊商が立ち往生しているんです」
崖崩れか。崩れそうな崖なんてあったっけ?
「伯爵様はなんて?」
「各寄り子から人を集めていますが、なかなか集まっていないみたいです。畑がありますから」
どこも来年のために豆を植えているとかで、今がちょうど種蒔きの時期なんだとさ。ちなみに今は夏も終わりそうな季節だ。元の世界を知るだけに夏って感じがしなかったよ。
……海で泳ぎたかったのに残念だ……。
久しぶりに伯爵に会うために城に向かった。
「忙しくしているようだな」
顔パスな感じで伯爵の執務室に通され、伯爵の顔を見たら顔つきが締まっていた。この人も成長しているようだ。
「伯爵様も忙しいようですね。ちゃんと食べて眠っていますか?」
「父親か。まあ、食べて眠ってはいるよ」
フフ。突っ込みができるほど成長しているよ。
まだ陽は高いので、コーヒーを飲みながら崖崩れの状況を聞かせてもらった。
話によれば崖崩れが起きたのはロンレア側で、なにか巨大生物がぶつかった跡があったそうだ。
「ちょくちょくアシッカ上空を飛んでますが、そんな巨大生物の反応を捉えたことはなかったんですがね?」
ちょくちょく飛んでいたから逃げられたのか? あちらからさしたら謎の飛行物体だしな。
「百人は送り込んだが、それでは開通には時間がかかるだろう」
「ミヤマランから連絡は?」
「冒険者が手紙を届けてくれた。あちらでも動いているようだが、領都から遠いからな、日数的にまだ人は到着してないと思う」
ミヤマランに留学していただけにまったく知らないってわけじゃないから予想がつくのだろう。
「今、仕事はどんな感じです? 余裕があるなら空から見てみますか?」
「それはいいな! あれに乗ってみたかったのだ!」
マンダリンにはちょっと乗せたことはあるが、ルースガルガンは乗せてなかったな。
「今度、小型のをアシッカに持ってきますから領内の視察に使ってください」
アシッカもなんだかんだと広大だ。どの男爵領にいっても取り込みになる。ルースミルガンなら日帰りでいけんだろう。
モーリスさんに出かけることを伝え、暗くなる前に帰ってくることを約束して視察に向かった。
伯爵には副操縦席に座ってもらい、飛んでいる感覚を楽しんでもらった。
「もう山脈の頂上か。空を飛ぶというのは凄いな」
「早く伯爵の座を子供に譲って老後を楽しむことです。ライダンドの前伯爵様は老後を楽しんでいますよ」
「タカトと話していると貴族というものが枷でしかないように思えてくるよ」
「そうですね。貴族とか遠い世界の存在だった世界の者としては義務ばかりで旨味のない存在だと思いますよ」
怠惰に生きようと思えば貴族ってのは美味しい立場なんだろうが、そんな未来では楽しい老後がやってくるとは思えない。オレは平凡でもいい。楽しい老後を送りたいものだ。
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