第871話 成長

 暗くなる前にコルトルスに到着。ガーグルスが四匹も繋がれていた。


「……四匹も捕まえたのかよ……」


「生け捕りは難しいね。四匹しか捕まえられなかったよ」


 あーうん。モニスは本職の狩人だもんね。捕まえるのは管轄外か。


「四匹ともなるとエサが大量に必要だな」


 ガーゲーにカロリーバーとミジャーの粉を持ってこないといかんな。


「エルガゴラさん。すみませんが、ガーゲーのエサを取ってきます」


「それならこれを使え。空のコンテナボックスをアイテムバッグ化した。二十倍の容量にしたから運びやすくなるはずだ」


 コンテナボックスは五十個くらいはあった。この人もチートを受け継いでるな。


「自身の魔力は大丈夫なんですか? いくらなんでも張り切りすぎでは?」


「マナックを使ったから大丈夫だ。こんなのがあるならアイテムバッグも作り放題だ」


 お願いしたレッグバッグやダンプポーチ、チェストリグもアイテムバッグ化してくれ、アサルトライフルやサブマシンガンも強化付与してくれていた。どんだけ仕事が早いんだか……。


「わたしのことは後回しで構わんよ。わたしは、こんな見た目でもハーフエルフだ。病気や殺されでもしない限り、あと二百年は生きる。一年や二年、アニメでも観て待ってられるよ」


 一年も二年も観てたらさすがに観るものがなくなるのでは? と思ったが、この人ならやれそうと思うので黙っておいた。


「レンカとルルカはマリンやカレンと同じ能力なんですよね?」


「ああ。教えれば学習するぞ。ただ、一度壊れると復活はできないから注意しろ。一つしかない命と思うことだ。強度は人よりちょっと強いくらいだからな」


「わかりました。大事に使います」


 別に戦闘に出すわけではない。補佐として使うまで。


「ルースブラックはここに置いていくので自由に使ってください。ミギス。お前たちは冒険に出ていいぞ。海沿いを進んで世界を見てこい。また会おう」


 まだ若いが、見所のあるヤツらばっかりだ。経験を重ねて立派な冒険者となれ。お前たちなら銀印になるのも不可能じゃないさ。


「はい! ありがとうございました!」


 ちゃんと礼儀も身についている。若いヤツは本当に成長がハンパないぜ。


 うんと頷き、レンカとルルカにコンテナボックスを持たせ、二人をつかんでホームに入った。


 タイミングよく雷牙が先に入っており、ガレージの水道で足を洗っていた。


「雷牙。悪いが、前線基地にダストシュートしてくれるか?」


「なんかあったの?」


「ガーゲーにいきたいんだよ。ルースガルガンあるか?」


「うん。ちょうどビシャがきてるからあるよ」


 それはベストタイミング。雷牙にダストシュートしてもらった。


 こちらも発展著しいな。村くらいにはなってんじゃないか?


「タカト! どうしたの!?」


 ぼんやり眺めていたらビシャが現れた。オレの臭いを嗅ぎ取ったのか? シャワー浴びてくるんだったよ。


「お疲れさん。ちゃんとルースガルガンが必要でな、借りても大丈夫か?」


「大丈夫だよ。アルズライズの三号艇が置いてあるから」


「ありがとさん。ここは順調か?」


「うん。ゴブリンが減ったから開店休業中だよ」


 開店休業なんてどこで覚えてきたんだか。ビシャもビシャで成長著しいな。


「また増えるから今のうちに勉強でもしておけ。任せるヤツがいるならコラウスに戻ってもいいぞ。母親に顔でも見せてやれ」


 てか、マーダも帰ってやれよ。嫁を放置してていいのか?


「うん。もうちゃんとしたら帰ってみるよ」


「そうしろ。じゃあ、ルースガルガンを借りるな」


 少しビシャについていて前線基地のことを聞きたいが、報告は雷牙から受けたらいい。オレが落ち着いたらゆっくり聞くとしよう。落ち着ける日がきたら、だけど。


 ホームからレンカとルルカを連れてきてマナック補給の手順を教えた。


「理解しました」


 どんな仕組みかは永遠に理解できる気はしないが、二人が理解してくれたのならそれでよし。中継地に向かって飛び立った。


 中継地に降りないで魔力を充填。離れていても数秒で充填できるから優秀だよな。


 そのままガーゲーに飛び、格納庫に入れたらホームに入った。腹減ったよ。


「タカトさん。ルセラクさんに相談したいことがあるのでダストシュートしてください」


「了解」


 ルセラクさんは人間の知識もあり、医者としても働いてもらっているので回復薬の相談だろう。


 ミリエルをダストシュートしたらすぐに入ってきて、台車に載せた荷物を押して外に出た。


「忙しいのはオレたちだけだな」


 装備を外して中央ルームに入ると、雷牙しかいなかった。


「ミサロはまだか」


「昼に会ったときに遅くなるとは言ってたよ」


 まあ、遅くまで豆蒔きしているみたいだし、あちらで食ってくるんだろう。なのに、晩飯が用意されてんだからミサロはスゲーよ。


「雷牙は忙しくないか?」


「おれは忙しくないよ。なにかあるならやるよ」


「大丈夫だよ。お前は学ぶことに集中しろ。その経験が未来の力となるんだからな」

 

 いつかはわからないが、オレにも命に関わる問題が出るはずだ。その問題に立ち向かえるためにも雷牙には成長することに集中して欲しい。そのときに力となってくれたらいいのさ。


「さあ、いっぱい食べて明日のためにぐっすり眠れよ」


 オレも明日のためにたくさん食べて、久しぶりに雷牙と風呂に入った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る