第869話 少年少女たち戦い

 捕まえたガーグルスをロンレアに運ぶ準備を進める──前にマルデガルさんに付与魔法を施して欲しいものを外に出した。


「たくさんあってすみません」


「構わんさ。屋敷を一つもらうんだからな。あ、そうそう。タカトにレンカとルルカをやるよ。マリンとカレン並みには働くだろう」


「自分の護衛とかに使えばいいんじゃないですか?」


「メイドを作っておいてなんだが、管理が面倒なんだよ。動かすにも学習するにも魔石が必要だ。それに、動くとき連れて歩くのも邪魔だ。わしは自由に動きたいんだよ」


 本当に作っておいてなんだが、だな。


「やはり人に勝るメイドはおらんな」


 なんと答えていいかわからない。これまでの人生でメイドに関わったこともなければ欲しいと思ったこともないんだからな……。


「と、とりあえず、オレはロンレアにガーグルスを運びます。また戻ってくるので待っててください。食事は食堂でできるように手配しておきましたから。酒は自由に飲んでください」


 ルースブラックはコルトルスに置いていく。動かさないのでキッチンワゴンを引いてきて酒やツマミ、ちょっと食べるものを置いた。


「発電機ってあるか?」


「小さいのでいいですか? 今、それしかないんですよ」


「パソコンが動かせるならなんでも構わんよ」


 ってことでガソリン発電機を運んできた。あと、ガソリンが入ったドラム缶も。


 ルースブラックを快適にしたらガーグルスを繋いであるところに向かった。


 人間から見たら見上げるサイズだが、巨人からしたら見下ろすサイズだ。ガーグルスも巨人の前では逆らえないと本能で悟っているのか大人しかった。


「ダン。遅くなってすまない。出発するとしよう」


 準備を進めていてくれたダンに声をかけた。ちなみにモニスにはガーグルスを捕まえてきてもらうようお願いしました。


「了解。よし、いくぞ。マベン、ルーニー」


 名前つけたんかい。まあ、構わんけどさ。


「ミギス、ルカ、RMAXの運転は覚えたか?」


 新しく買ったウルヴァリンRMAX1000✕4をミギスとルカに教えて、一緒にロンレアに連れていくことにしたのだ。


「はい。大体は」


「わたしは大丈夫です!」


 ルカはゾラさんの血を確実に受け継いでいるようで、現代兵器や車両に忌避はなく、スポンジのように吸収しているよ。


 ルカのRMAXが先頭になり、オレはミギスの運転するRMAXに乗り、後方を見張ることにした。


 巨人の一歩は三メートルくらいあるので、そう低速で走ることもない。繋がれたガーグルスも抵抗するなく大人しく歩いている。


 ロンレアまでは約五十キロ。かなり離れてはいるがロンレア伯爵領であり、馬車なら途中で一泊する距離でもあるが、巨人の歩みなら半日くらいの距離だ。


 まあ、ガーグルスを連れているので、疲労を溜めないように夕方に着けばいい感じで休み休みいくとする。


「よく食うヤツらだな」


 十キロくらい進んで最初の休憩で粉にしてない乾燥ミジャーを出すと、ペロリと十袋を食べてしまった。


「家畜化するの無理か?」


 中継地に放つ前にロンレアで飼ってみようかと思ったが、こんなに食うなら考え直す必要があるかもな……。


 どうするか悩んでいると、森から痩せこけたオーグ(二足歩行の熊ね)が出てきた。


「ガーグルスの臭いに出てきたか? ミギス! お前らで倒してみろ! ダンはガーグルスを見ててくれ!」


 肥えていたら脅威だが、あそこで痩せこけていたら少年少女たちでも倒せるだろう。ダメなときはオレが介入するよ。


 ガレージに一丁だけ残っていたVHS-D2を持ってRMAXから降りた。


「リョイナは顔を中心に狙え! ラルズとボブスは脚だ! ルカは援護!」


 ミギスはリーダーとして指揮をするようだ。


「ダン! 離れていろ!」


 いつでも介入できるようにオーグに銃口を向けながらダンのほうに移動した。


 若いながらも戦闘経験はしてきたようで、オーグにビビることはなく、連携して攻撃をしている。


 リョイナは弓を使っていただけに狙いは性格だ。十発も撃たないでオーグの視界を奪ってやったよ。


 ラルズとボブスもグロック17で脚を狙い、機動力を奪っている。あそこまで痩せこけていたら9㎜弾でもいけるんだな。


「二人とも機敏だな」


 ラルズは大柄なのにちょこまかと動くものだ。二人にスコーピオンでも持たせるか。


 職員にはスコーピオンからESGに換えさせた。なので、スコーピオンがガレージに二十丁くらい仕舞ってあるんだよ。9㎜弾もたくさんあるので少年少女たちに持たせるとしよう。


 そんなこと考えていたらオーグが地面に倒れてしまった。対物ライフルで倒すヤツなのにな。食えないって悲しいよな……。


「よし、死んだぞ」


 最後にミギスが確めて戦闘が終了した。


「さすがロンダリオさんたちについていただけはあるな。見事だったよ。魔石を取り出したら出発するとしよう」


 オーグから血を吸い取り、ミギスたちに魔石を取り出させた。


「ご苦労さん。少し休むか?」


 戦闘は十分もかからなかったが、緊張はしただろう。休むなら三十分くらい時間を取るとしよう。


「いえ、大丈夫です。皆もいいな?」


 残りが大丈夫ですと頷いた。これが若さというものだろうか? 羨ましいよ。


「わかった。じゃあ、出発するとしよう」


 RMAXに乗り込んで出発した。

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