第858話 王都 *112000匹突破*

 今日はもう陽が暮れそうなので、ダンには明日の朝にコルトルスを目指してもらうことにしてオレは戻ることにした。


「あ、そうそう! 卵だよ!」


 あっぶねー! 本来の目的を忘れるところだったよ!


 ──ピローン! 


 ん? アルズライズたちか?


 ──十一万二千匹突破でーす! うぇーい!


 たまにテンション上がるよな、こいつ。情緒不安定か?


 ──ガーグルスを飼うなら中継地に放つといいですよ。虫が好物ですから。もっと捕まえたいのならミジャーの粉を撒くといいですよ。ガーグルスもミジャーを好物としてますから集まってくるでしょう。もちろん、ゴブリンも、ですけど。


 人のいない山だとは思っていたが、ガーグルスがいたから拓くことができなかったのか?


「ミジャーか。コラウスから運ぶか」


 数が数なだけに運べてないものが結構あるんだよな。少しコルトルスに運ぶとするか。


 帰れないことは言ってきたし、ラダリオンがいればホームに入れられる。アルズライズがいれば海兵隊員のことは任せられる。二日くらいは大丈夫だろう。


 ってことで、まずは新要塞都市に。そこでマナックを補充したらアシッカ……までは飛べないので、途中の広場に降りてまた補充。なんとかアシッカに着いたらマリーダやザイルと会って状況を聞かせてもらった。


 ミヤマランから人が流れているようで、アシッカの人口も増え、奴隷落ちしたモリスの民も集められているようだ。


「あ、これはガーグルスの魔石だ。資金にしてくれ」


 ガーグルスの魔石は緑色の魔石で、ワイニーズと同じ風属性のことだ。


 ワイニーズは竜や爬虫類っぽかったのに、鳥系のガーグルスも風属性とか意味わからんよな。


「ガーグルスですか。一度、コラウスでも討伐依頼を出したことがありますよ。ロンレアのほうから流れてきていたんですね」


「女神の話し方からしてコルトルスからミヤマランの間に生息しているっぽいな。卵を持ってきたから巨人に渡して孵化させてみてくれ。失敗なら失敗で構わないから」


 アシッカにはロンガル(マンモスっぽいヤツね)がいて、マイセンズの森も広い。ガーグルスが生息するには問題ないはずだ。これも失敗したら失敗したで中継地で繁殖してくれたらいいさ。


「わかりました。明日にでも巨人の村に届けます」


「頼むよ。他に問題はあるか?」


「金が足りてないですね」


「資金が、ではなく?」


 ザイルの口調からして資金のことじゃないだろう。


「はい。人が流れてきたことで、世に出回っている金が不足しています。貨幣発行は国の領分。アシッカで作ることはできません。その技術や施設もありませんからね」


 経済が発展すると貨幣が足りなくなるんだ。


「さすがに勝手に作ったら王国に目をつけられるか」


「ですね。偽金作りは重罪。一族郎党縛り首です」


 それはおっかねーな。まあ、偽金作りなんてしないけどよ。


「あるところから持ってくるしかないか」


「王都ですか?」


「よくわかったな?」


 ザイル、そんなに経済に強かったっけ?


「商人たちの受け売りです。マスターならそうするだろうと言ってました」


 オレ、商人たちに考え見抜かれていたりする? 


「てことは、商人たちも王都から金を引っ張ってくる計画を立てているってことか?」


「王都に支店がある店は動き出しました。マスターがくるのを待っていると言ってました」


「そう言ってもかなり先のことになるぞ。やることがたくさんあるからな」


 プロプナスのこともあるし、今年はロンレアにはいるつもりだ。王都なんていく暇ないよ。


「セフティーブレットからもいかせるか?」


「うーん。王都にいった者はいないので難しいかと。冒険者ギルドでも王都にいった者は少ないですからね」


 そっか~。難しいか~。


「まあ、まずは商人に任せるしかありませんね」


「そうだな。オレのほうでも考えてみるよ。いざとなれば都市国家の金を混ぜるとしよう。価値としてそう違いはなかったみたいだからな」


 通貨名はあるみたいだが、大小の銀貨があり、銀貨は二種類、金貨とあり、大口取引は金板が使われているとか。ロンレアはそれで回せばいいだろう。


「商人にはそう伝えておきます」


「ああ、頼むよ。オレは、明日の朝に出発するから」


 差し入れにワインを二人に渡し、ルースブラックの前でホームに入った。


 時刻は十八時を過ぎていたので皆が揃っていた。


「ラダリオン。まだ戻れないからアルズライズと協力してやってくれな。あと、ミジャーをホームに運び入れるからそちらに出してくれ」


「わかった。夕飯食べたらアルズライズに伝えてくる」


 ミリエルはアシッカからロンレアに戻ったようで、城からホームに入ったそうだ。


 雷牙、ミサロ、シエイラからも状況を聞いたらホームに入れたガーグルスの肉を真空パックにして冷凍庫に入れる作業をミサロと行った。


「ふー。結構重労働だったな」


 冷凍庫がいっぱいになり、残りは皆に出してもらうとしよう。長期保存ができる倉庫が欲しいものだ。


「冷凍庫、拡張するか?」


「そうね。今、三千九百万円だから五百万円くらい使っていい?」


 女王を倒して二千万円が入ったのに、三千九百万円まで減ってたんかい。いや、トラクターを買ったから当然か。


「構わないよ。また稼いでくるから」


 まだゴブリンはいそうだ。二百匹くらいは駆除できんだろう。


「オレは寝るよ」


 明日もやることはたくさんある。しっかり寝て体力を回復させるとしよう。

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