第857話 結婚

 一時間くらいしてラダリオンが戻ってきた。鳥の羽根を纏わせて。格闘したのか?


「タカト。ちょっときて」


 そう言うのでラダリオンに持ってもらって運んでもらった。


 ラダリオンから説明は聞かず、その場所にくると、ガーグルスが二匹倒れていた。


「殺したのか?」


「ううん。辛うじて生きている。どうする?」


 さて。どうしましょうか。


「しかし、凶悪なツラしてるよな」


 ダチョウみたいな鳥ではなく某ファイナルな幻想に出てきそうな鳥みたいだ。この嘴で突っ突かれたら人なんて一溜まりもないだろうよ。山黒と戦ったら勝てそうじゃね?


「ちょっと待ってろ」


 ホームに入り、犬用の道具を調べた。


 鳥に合うかわからんが、これを使えば口を塞ぐこともできる。首輪とロープがあれば御せるだろうよ。


 いくつか買ってラダリオンに巨大化してもらい、ガーグルスにつけてみた。


 さすがにピッタリとはいかなかったが、これなら逃げることはできないだろうよ。


「ラダリオン。この足輪をつけてデカい木につけておいてくれ」


 運ぶとしても調教が必要だろう。どうするかは知らんけどさ。


 まだぐったりしているガーグルスに回復薬大を無理矢理飲ませすぐ離れた。


 効果はすぐに出て二匹は起き上がり、なにが起こったか戸惑い、自分の状況を理解したのか暴れ出した。


「結構丈夫なんだな」


 全高三メートルはあり、首も体も筋肉質なのに、犬用のハーネスや口籠が壊れることはなかった。


 暴れていた二匹がラダリオンに気がつくと、怯えるようにラダリオンから距離を取った。足輪と紐のせいで大して離れられてないけど。


「ラダリオン。こいつらはしばらく放置だ。アルズライズのところにいってガーグルスを解体してくれ」


「わかった。あ、こいつらが産んだ卵があるけど、どうする?」


 案内してもらうと、黄色みを帯びたダチョウの卵サイズの楕円形のものが六個あった。


「有精卵か?」


 折り畳みナイフで叩いてみると、硬い音がした。産み立てか?


 リヤカーを持ってきてコンテナボックスに一つずつ入れ、落ち葉で固定した。


「ラダリオン。頼むな」


 ホームに入ってブラックリンを出してきてコルトルスに向かった。


 すぐにルースブラックに乗り込んでとんぼ返り。コンテナボックスを積み込んだ。


「マイガス。オレは少し離れる。解体を続けてくれ。夜まで戻らないときははガーグルスを食っていいから」


 一応、サバイバルキットを持たせてある。その中に塩も入っている。サバイバル飯として我慢して食ってくれ。


「了解です」


 ルースブラックに乗り込み、ロンレアに向かって飛んだ。


 ギリギリロンレアに到着。飛行距離が短いのが難点だよな、ルースカルガンって。


 ロンレアの巨人区はさらに発展しており、家や小屋、工房なんかが建てられていた。ほんと、巨人の建築スピードは速いものだ。


「ダン。ご苦労さん。調子よさそうだな」


「そうだな。だが、ゴブリン駆除ができなくて報酬がなくなったよ」


「それならコルトルスにきてくれるか? 頼みたいことがあるんだよ」


「コルトルスというと、北にいった町だっけ?」


「ああ。そこで巨人の家畜になりそうな魔物がいたからここに連れてこうようと思ってな。欲しいものがあるならオレが買ってやるからきてくれ」


「わかった。すぐにいくよ」


「助かる。で、なにが欲しいんだ?」


「金床とハンマー、ヤスリなんかが欲しい」


「なんだ、鍛冶屋にでもなるつもりか?」


 お前、樵だったよな。


「ラグの親父さんが娘を紹介してくれるって話になってな、その持参金が必要なんだよ」


 巨人にはそんな持参金なんてシステムがあったのか?


「紹介ってのは結婚ってことなのか?」


「ああ。よほどのことがない限り結婚になると思う。ラグの親父さんがおれの働きを認めてくれて、二番目の娘をって話になったんだ」


 巨人の世界には恋愛は……あったな。ゴルグのところに。恋愛結婚は少数派ってことか。


「そういや、ゴルグは?」


「コラウスに帰ったよ。また秋の終わりには戻ってくるそうだ。そのとき娘も連れてくるらしい」


 トントン拍子だな。娘さんに拒否権はないのか? まあ、オレが口出すことじゃないから黙ってるけど。


「そうなったら家を建てる費用をオレが出してやるよ。ロンレア支部をお前に任せる。支部長としてロンレアに住むといい」


 支部長になんの価値があるかわからんが、セフティーブレットの名には価値がある。そこで働いていれば一目は置かれるだろうよ。


「おれが支部長?」


「ああ。もちろん、人間の副支部長も立てるぞ。お前はいざってとき前に出ろ。武器も用意するから」


 ダンはまだ若い。冒険者ギルドで働いていた経験を持つミジッグを立てるとしよう。


「支部長か~。悪くないな」


「巨人の面倒もお前が見るんだからな。仲間を守れよ」


「ああ、任せろ。結婚したら家長になるんだからな。甘いこと言ってらんないさ!」


 巨人の世界では結婚は重要なことなんだ。オレには未知の世界だよ。結婚なんて考えたことないし。その前に家族ができちゃったからな~。

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