第855話 ガーグルス(恐鳥類)

 ガーグルスはとりあえず後にしてゴブリンを駆除していく。


 やはりここは巣だったようで、奥にゴブリンが固まっている。気配から産まれたばかりの子がいるようだ。


 島のゴブリンも妊娠しているのが多かったな。今が出産期なのか? あ、そういや、冬に子が腹の中にいる感じだったな。


 ゴブリンはポンポン産んでいるイメージだが、年に一回なんだろうか? その割りには増えるスピードが異様に早い。どうなってんだ?


「まあ、今の時期に襲えばいいってことだな」


 手榴弾一個四千五百円だが、巣には三から四匹はいる。簡単に駆除できるのだから四千五百円は惜しくはないさ。


 約三百匹は駆除できただろうか? 七人が二百匹駆除していたら大体駆除できた数だな。


 アルズライズたちも始めたので報酬で確認できないが、気配から生き残っているのは三十匹もいない。目印のための数にはちょうどいいだろう。


 山の中ではプランデットのセンサーもそう役には立たない。ゴブリンがいてくれたほうが他の魔物がいることがわかるってものだ。


「ここのゴブリンも肥えているな」


 マナイーターを取り寄せて肥えているのを優先して刺していき、七人がいる頂上へ向かった。


 暗くなる前にはなんとか到着。七人はマガジンに弾を込め終わり、カロリーバーを食って一息していた。


「今日はここで野宿だ。交代で休むぞ」


 野宿の準備は七人に任せ、オレはホームに入って消費した分の弾とカロリーバー、そして、水を運び出した。


 今日はオレも野宿に付き合い、一時から五時まで見張りに立った。


 朝の八時になったら装備の確認。問題がなければアルズライズたちがいるほうに向かった。


「……ガーグルスか……?」


 ゴブリンの一部が逃げるように動いた。


「全員、集まれ。東南方向にガーグルスがいると思われる。こちらに向かってきている。中腹に移動するぞ」


 逃げているのかもしれないので、登ってきたらいい位置から狙える場所に移動した。


 ガーグルスに興味はない。そのまま逃げるなら見逃すが、襲ってくるなら殺すまでだ。


 物陰に隠れて様子を見ていると、動体反応センサーが動いた。


「……三、四……六匹か。なかなかデカいのがいるな。家族か?」


 反応からかなり大きい。てか、ジャイアントモアってダチョウみたいなものだっけ? 名前は聞いたことあるが、どんなものかまではよー知らんのよね。


 しばらくして動体反応が方向を変えてこちらに向かってきた。なんでや?


「こちらにくるぞ。よく引きつけてから撃つぞ」


 なんでこちらに向かってくるかわからんが、好奇心で向かってくるわけではあるまい。敵意と見なして攻撃させてもらいます。


 動体反応はさらに強くなり、姿を現した。


 ジャイアントモアに似ているか? 完全に毛の生えたティラノサウルスみたいなんですけど!


「嘴が辛うじて鳥であることを主張してんな」


 だからってあの巨体の前では意味ないか。あれはどう見ても肉食だろう。ゴブリン、そんなに不味いのかよ。


「脚を狙って撃て!」


 あんなのに弾を使うなんて憤りしかないが、いい肉が手に入ると思えば価値がある。あれはコルトルスに運ぶとしよう。


 斜面を登ってくるガーグルスに向けて弾丸をばら撒いた。


 全高が四メートルある巨体に7.62✕397㎜弾がどこまで通用するかはわからないが、全体重を乗せた脚を狙えば多少なりとも効果はあるだろう。オレは顔を狙って気を引くとしよう。


「お、意外と効果ありだな」


 一番デカいのは暴れて効果は薄そうだが、二回り小さいのは倒れてくれた。オレもリンクスで相手するんだったよ。


「デカいのを狙え!」


 倒れたのはあとでいい。まずはデカいガーグルスだ。


 腿のところが美味いんだろうが、そこに弾が集中している。あれは胸肉をいただくとしよう。オレは遠慮させてもらうけど!


 もう百発以上は撃ち込んでいるのにまだ倒れない。ダメ女神からしぶといと言われるだけはある。


 それでも八方向から撃たれたらさすがのしぶとさも堪えられない。ふらつき始めてやっと倒れてくれた。


「迂闊に近づくなよ! 顔を狙え!」


 もう立ち上がれないみたいだが、まだ生命力は高そうだ。下手に近づいたらあの巨体に潰されそうだ。


 二人に顔を狙わせ、今のうちに弾を補給させた。


「小さいのはオレがやる」


 EARの魔力も尽きたので、プリジックに持ち換えて小さいガーグルスの顔を狙って息の根を止めていった。


「マスター! デカいのを殺しました!」


「了解! すぐに血を抜け! コルトルスに持ち帰るぞ!」


 そう指示を出し、オレも魔法で血を抜いた。


 皆で血を抜き、羽根をむしっていると、アルズライズたちが近づいてくるのを感じた。


 まだ残っているのにこちらにきたのか? 


「タカト、無事か?」


「大丈夫だ。現れたのは倒したよ。まだガーグルスがいるのか?」


「三十匹くらいの群れだった。十匹までは倒したが、残りは逃がしてしまった」


 三十匹もいたんかい! あのダメ女神、本当に人間を生かす気あんのか? ジュラシックより危険だろう、この世界!


「こちらは六匹を倒したから半分は取り逃がしたか」


 まあ、半分も殺されたらどこかに逃げ去っただろう。


「アルズライズたちはゴブリン駆除を進めてくれ。オレらはガーグルスをコルトルスに運ぶとするよ。こいつら、食えそうだからな」

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