第851話 海兵隊

 一時間くらい過ぎて外に出ると、コルトルスに向かう連中が揃っていた。


「アルズライズは、コルトルスの町にいったことはあるのか?」


「十年以上前にいったことはある」


「それなら案内は必要ないな。まあ、海岸線を飛べば迷うこともないが」


「問題ない」


 ってことで、アルズライズのほうに腕っぷしのいい野郎どもを乗せ、オレはマルーバたちを乗せた。


 魔力は満タンなのでなんとかコルトルスの町までやってこれ、ちょうどよく海岸のほうに広場があったのでそこに降ろした。


「アルズライズ。あそこの船まで飛べるか? 船尾甲板に降ろせば魔力を充填できるようになっている」


「難しい残量だな。着船に失敗したら不味いかもしれん」


 ならマナックを補給しておくか。ちゃんと機体とマナックで切り替えできるからな。


 マナックの補給が終わればクーズルースに飛んでいった。


「マルーバ。この周辺から薪を集めてきてくれ」


 装備は揃っているので問題ないだろう。カロリーバーも持たせている。訓練と思ってがんばってくれ。


 マルーバたちを見送ったら腕っぷしのある野郎どもと向き合った。


 アルズライズが教育したんだろう。なんか去勢された感じがする。ちゃんと男としての機能は残してくれたんだろうな?


「代表は誰だ?」


「おれです。ゴルスと言います」


 三列に並び、前列に並んだ四十歳くらいの男が一歩前に出た。軍隊か!


「アルズライズから聞いているだろうが、オレは一ノ瀬孝人。ゴブリン駆除ギルド、セフティーブレットのマスターだ。お前たちには海兵隊になってもらう」


 クーズルースを運用するなら泳げるヤツを乗せたほうがいいだろう。こいつらは壊滅した町、マクラエルの生き残りだろう。海とともに生きていたなら一番海兵隊に育てやすいはずだ。ガタイもいいしな。


「カイヘイタイ、ですか?」


「ああ。海の兵士が欲しかったところでな、本当は獣人をしようかなと考えていたが、さらに適した人材をアルズライズが連れてきてくれた。本当に助かったよ」


 獣人が泳げるかどうかわからなかったが、戦いはできるなら仕方がないと思っていたんだよ。だが、海兵隊ならこいつらでいいだろう。


「泳げるよな?」


「はい。物心つく頃から海で泳いでました」


「それはいい。泳げるヤツってなかなかいないからな。あ、妻帯者っているか? ずっと船に乗せるわけにもいかないからな」

 

「全員、妻や子はいません。竜人に殺されました」


 あーうん。これは、竜人に恨みのあるヤツを選んだな、アルズライズの野郎は……。


「そうか。なら、竜人対策も考えないといかんな。また襲われたら堪ったもんじゃない。見つけたらしっかりと倒しておくとしよう。そのときまでしっかりと体を鍛え、戦闘能力を身につけておけ」


 ちょっと待ってろと言い残し、ホームに入って銛を人数分買ってきた。


「これで魚を捕ってきてくれ。今日は海兵隊団結式だ。捕ってきた魚で祝うとしよう」


 アルズライズが買え与えたのか、腕っぷし──海兵隊員はナイフとグロック17を持っており、服もオレが着ているような戦闘服だ。


 ……アルズライズのヤツ、かなりの出費だろう。そこまで同情することか……?


「たくさん捕ってきてくれ。食い切れないものはオレが買い取るから」


 シエイラたちにも食わせてやるとしよう。館の料理人なら魚を捌けるからな。ちなみにホームには業務用の製氷機があったりします。


「わかりました。皆、やるぞ!」


 おおっ! とやる気を見せて服を脱ぎ出し、銛を持って海に走っていった。


「……アルズライズ、あいつは教官に向いてそうだな……」


 集団行動は不向きでも集団を纏めることは向いてそうだ。


「さて。ミサロのところにいくか」


 気配を感じる距離にいるが、ちょうどよく離れているな。農場か?


 それとペンパールはどこだ? コルトルスの町の近くにいるって聞いてたんだがな。


 とりあえずミサロの気配を辿ると、ペンパールを発見──と言うか、陸に揚がってたんかい。日向ぼっこする亀だな。


「竜人もペンパールに乗ってるみたいだし、この世界にはペンパールがたくさんいるのか?」


 この世界の海は怖いな。よく木造船で渡っていたものだ。クーズルースがなかったら渡ろうとも思わないよ。


「ミサロのヤツ、大農場でも経営しようとしてんのか?」


 山の近くまで耕してんな。どうやって木々を伐採したんだ? ミサロからは耕したってことくらいしか聞いてないぞ。


「トラクター一台でこんなに耕すことできんだ。スゲーな」


 人力なら何十年とかかるところを一月くらいで一キロ先くらいまで耕すんだからよ。


「ミサロ、どこだ?」


 トラクターに乗っているのか、常に動いている。こりゃ、戻ってくるまで待ったほうがいいかもしれんな。


 トラクターを入れる小屋を町の者に建ててもらったと言っていた。あ、あれか。


 それらしき小屋の前で男女が作業をしていた。


「漁業から農業に切り替えたみたいだな」


 これだけの農地ができたら漁業より儲けになるだろうよ。


 ミサロがお世話になっているだろうから挨拶しておくか。よくしてもらっているって言ってたしな。

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