第849話 コルトルスの町
エルフは酒好きながら体質的にも酒に強いようだ。どちらも一本空けたのに次の朝は普通に起きてたよ。
オレは疲れていたせいか、ラフロイグ十年を半分も飲まないで二日酔いだ。もっと飲みたかったのに……。
「タカト、大丈夫か?」
「大丈夫にします」
巨人になれる指輪は二日酔いすらエネルギーに変えてくれる。巨人になるより二日酔い薬みたいに使ってんな。
すっきりしたらシャワーを浴びてしゃっきりさせた。
「今日はどうする?」
船橋に集まり、朝食をいただきながらこれからのことを話し合うとする。
「まだクーズルースは慣れてないので北に向かい、コルトルスの町に向かおうと思います」
コルトルスの町はペンパールがいるところで、港町でもある。ミサロもいるので様子を見にいくとしよう。
「ゴブリンはそのままか?」
「はい。請負員を連れてきて残りを駆除させます」
あ、檻にいれたゴブリン、忘れてきちゃったよ。まあ、捕獲檻がもったいないが、餓死したゴブリンで元は取れんだろう。今回は諦めるとしよう。
「コルトルスと言うとロンレアから西にいった海沿いの町だったな」
「いったことあるんですか?」
「いや、手前までだ。五十キロ以上は飛ばないようにしていたからな」
五十キロか。ロンレアから二百キロも離れてないはずだから戻る感じか。
「まずは北を目指して陸が見えたら東に向かいますか」
「そうだな。それがいいだろう。ラオルスは、一号艇で先行してくれ」
「ラー」
ラオルスさんが一号艇で飛び立ったらクーズルースを出発させた。
しばらくしたらライズさんに任せて船倉に向かい、ルースミルガンにミサイルやマナックを補給し、ESGや戦闘強化服を上部デッキの部家に運んだ。
「タカト。陽が落ちてきた。近くに島があるからそこに停泊させる」
明るいうちに陸が見えるところまではいけなかったか。思いの外、ゴブリン島は離れていたんだな。
作業を止めて船橋に向かうと、ラオルスさんが戻っていた。
「陸は見えましたか?」
「ああ、見えた。最大望遠で町も見えたよ。かなり大きな町だった」
ロンレアの隣にある伯爵領の町だろう。ミリエルが聞いたところによると、この国の海岸線は伯爵領で占めているそうだからな。
「人工衛星からの映像が送られてきたから地図を作製した」
生きている人工衛星はいくつかあるみたいだが、通信ができるのはマイセンズが打ち上げたものだけで、この上にくるのは約五時間に一回なんだってさ。
まあ、宇宙のことはさっぱりなので軽く流し、上部モニターに地図を出してもらった。
……ほんと、見辛いよな……。
地図は上から見るものだと頭に刻まれているから下から見上げるのだと頭が混乱するぜ。
プランデットをして見やすくする。
「確認した町からコルトルスの町まで約四十五キロ。途中に小さな漁村がいくつかあるな」
四十五キロか。オレの感覚ではすぐそこだが、この時代で生きる人にしたら絶望的な距離かもしれないな。
クーズルースが停泊したらホームに入った。
ルースミルガンはもう外に出されたようで、ラダリオンのところから運ばれてきただろう麻袋が積まれたパレットが入っていた。
「貯蔵していたヤツかな?」
八パレットか。ルートさんが買ったものかな?
ルートさんは穀物商で、王都に運んでいたりもする商会だ。
中央ルームに入ると、ミサロが料理をしていた。
「お疲れさん。ミサロはまだコルトルスにいるのか?」
「いるわよ。今は芋を植えているわ」
なんだか農家の嫁って感じだな。いや、サラリーマンの息子なので農家とか知らんけど。
「たぶん、明日にはコルトルスに到着すると思う。船で向かうから通達しておいてくれ」
「島でゴブリンを駆除してたんじゃなかったの?」
「女王を倒したから一旦中止したよ。料理、もらっていっていいか?」
「いいわよ。わたし、料理を作ったらまた出るから」
「忙しいのか?」
「ううん。夕食は皆で食べようと約束しているのよ」
どうやらミサロはコルトルスで受け入れられているようだ。一緒に農作業をやっているからか?
「そうか。オレもあっちで休むから気をつけろよ」
「ニャーダ族もいるから大丈夫よ。あ、イチゴを使っているけど、大丈夫?」
「イチゴ、そっちにいたんだ。オレのところは足りているから大丈夫だよ」
「じゃあ、もうしばらく使うね」
「あいよ。オレはシャワーを浴びてくる」
ユニットバスに向かい、さっぱりしてきたらラダリオンが入っており、一人で夕飯を食っていた。
「ご苦労さんな。そっちはどうだ?」
「毎日虫退治してる。魔石はガーゲーに運んでる」
まだ虫が出てんだ。どんだけいんだよ? 青き衣の少女が現れそうだな。
「オレは外に出るな。あと何度か入ってくるよ。雷牙やミリエルが入ってきたら伝えておいてくれ」
「わかった」
皆で食事ができない日が続いているが、落ち着いたら皆で焼き肉パーティーでもするとしよう。団欒の時は必要だからな。
ミサロが作ってくれた料理を外に運び、船橋で食べる菓子や酒なんかも運び出した。
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