第848話 酒は美味い *110000匹突破*
いかん! 集中しすぎて暗くなってしまった!
「ミリエル。ホームに入って休んでくれ。あと、回復薬中以上のは妊婦に使わせるなと伝えるように徹底させろ。必要ならダストシュート移動してもいいから」
今のところ回復薬小なら問題ない。中から怪しくなっている。あと、妊娠期間にもよるんだろう。これ以上はわからないから中以上は飲ませないようにしないとな。知らずに使ってたとか怖すぎんだろう。
「ここはどうするんですか?」
「三人で潰すよ。女王を駆除したら残りはあとで駆除するさ。ここは、いい訓練場になりそうだからな」
「わかりました。無理しないでくださいね」
「無理する必要もない数だよ。でも、無理と判断したら別の方法を考えるさ」
見逃したところで島の外に被害が及ぶわけでもない。無理ならさっさと諦めて請負員を大量に投入するだけだ。
「外に出るときは注意しろな。あ、ルースミルガンを一機ホームに入れてくれ。航続距離は短いが、マンダリンと同じくらいは飛べる。都市間移動はできるだろうさ」
「はい。わかりました」
ルースミルガンに乗ってホームに入った。
今さらながら乗り物ごとホームに入れるってのもイージーだよな、ホームのルールって……。
アポートウォッチはルールミルガンに置いていたので腕につけたらクーズルースに戻った。
戻ったら二人に事情を報告し、明日のことを話し合ってから休むことにした。
体調は万全。新しい戦闘強化服を着た。
「ライズさんとラオルスさんはルースミルガンで女王がいる山を爆撃。そのあとオレを降ろしてもらい生き残りを駆除します」
軽くミーティングしてから出発した。
オレはライズさんのルースミルガンに乗り、島を目指した。
「もう少し右。山の中腹に強い気配が集まっています」
ルースミルガンのレーダーには熱を探知できても気配の大小は映らないない。普通なら熱の多いところを狙うものだが、女王は離れたところにいる。出産のために特別な部屋にでもいるんだろうさ。
「ちょい左。そこから三メートル下。一匹だけいるのを狙ってください」
洞窟なのか掘ったのかは知らんが、ゴブリン界に建築法とかあるわけでもない。ミサイルをぶち込めば崩れてくれるだろう。
「照準固定。発射!」
ラオルスさんも同時に照準ロックしたようで、ミサイルが一発ずつ発射された。
RPGー7くらいの威力はあるのでなかなか凄まじい爆発を見せてくれる。
「その周辺を適当に撃ってください」
女王らしき反応は六メートルくらい奥にある。その周辺を撃てば崩れるだろう。
五発ずつ撃つと、二千万円が入ってきた。圧死したようだ。あ、他にも入ってきた。内部崩壊したか?
「攻撃停止。あとは別のところにいるゴブリンを駆除してください」
「ラー。なにかあればすぐ呼んでくれ」
「わかりました」
そう返事をしてルースミルガンから飛び降りた。
地上まで三十メートルくらいあるが、木々が緩衝材となってくれたので無傷無痛で地面(斜面か)に着地。周辺にいるゴブリンを駆除していった。
──ピローン!
だから忙しいときにアナウンスすんなや!
──十万一万匹突破! 女王駆除おめでとー! 優秀な冒険者ですね。一ヶ所に集めて千匹を一気に駆除しましたよ。ご褒美に報酬を五百円アップしてあげましょう。
千匹を一気に? それは凄い! どうやったんだ? あと、報酬アップはこちらもしろよ! 五千円じゃ足りねーんだよ。
だが、それ以上のアナウンスはナッシング。クソが!
報酬が五千五百円になることもなく、罵倒を吐きながらゴブリンどもを撃ち殺してやった。オレのために死にさらせや!
とは言え、いつまでもやってはいられない。周辺にいなくなったら砂浜に向かい、ライズさんに回収してもらってクーズルースに撤退した。
「お疲れ様です。まずは汗を流すとしましょうか」
戦闘強化服を着ていたら汗も処理してくれるが、精神的にシャワーを浴びてさっぱりさせたい。人はそこまでロジカルにできてないんだよ。
さっぱりしたらよく冷えたビールを取り寄せて三人で乾杯。一気に飲み干した。
「これだよこれ。あの頃にはできなかった幸せだ」
「生き延びて本当によかった。生きている実感しかないよ」
どんなに技術が進化しても人の本質は五千年くらいで変わったりはしない。仕事をしたあとの酒は美味いって感覚は失われたりしないのだ。
「今日は飲むとしましょうか。たくさん稼いだんですからね。女王を駆除した報酬はどちらに入ってます?」
二人が請負員カードを出して報酬額を確認した。
「おれだな」
ラオルスさんか。まさに神の目で判断してんだな。
「それはおめでとうございます。二千万円もあればいろいろ買えるでしょう。仲間のために使ってください」
エウロン系のエルフは、ゴブリン駆除で得た報酬は全体で使うと取り決めているそうだ。自分で使えないのは可哀想だよな。
「そうだな。酒が買えないのが悲しいよ」
酒好き種族なのにそれは悲しいな。それでも決まり事を守るんだからエウロンの統治が見えてくるよ。
「酒ならオレが出しますよ。オレのほうにも二千万円入りましたからね。なにか飲みたいものありますか?」
「アラン十年が飲みたい」
「おれは梅酒がいい。ブランデー系の」
酒好きにも好みがあるんだな。ただ、フルティー系が種族的に好みっぽい。逆にスモーキー系は苦手っぽいな。
アラン十年は領主代理も好きなのでストックはあるし、梅酒は女性陣に人気なのでフルティー系の梅酒もあるはずだ。
「エレルダスさんには内緒ですよ」
二人に二本ずつ渡し、その日は三人で酒盛りをした。
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