第847話 実験
ミリエルとラオルスさんも砂浜に降りたようで、こちらに向かってくる気配を感じた。
厚い壁があると気配は感じないものだが、戦闘強化服を着ていても気配は普通に感じる。なんの違いなんだろうか?
「ライズさん、右から十匹ほど団体できます」
集団戦を学んだのか、十匹前後で集まって襲ってきているのだ。
「タカト! マナック切れだ!」
「了解!」
オレの持っているESGをライズさんに向かって放り投げ、ライズさんも空になったESGを投げてきた。
グリップの下にある蓋を開けてケースを取り出し、新しいマナックを詰め込んだ。
EARとは違い、充填式ではないのですぐ撃てるようになるが、慣れてないとそれなりに手間取る。一人で使うには考えないといかんな。
ライズさんも慣れてきたようで、今のところ順調にゴブリンを駆除できていた。
「タカトさん、わたしたちも駆除に加わります」
やってきたミリエルから通信が入り、オレたちを囲もうとしていた集団に向けて撃ち始めた。
ESGの威力が高すぎてゴブリンに為す術もなし。勝てないとやっと悟ったようで、ボス格のヤツが咆哮を上げると一斉に退き始めた。
「こちらも退きます。休憩しましょう」
軽く三百匹は駆除した。準備運動にはちょうどよかっただろう。
「もうか? まだ十七時まで一時間あるぞ」
「そう急ぐこともありませんよ。急を要しているわけではないんですし。ミリエル。悪いが、ゴブリンを集めて眠らせてくれ。実験に使いたいから」
「実験ですか?」
「ああ。プロプナスのエサになるか調べようと思ってな」
プロプナスはエルフを食うようにも弄られている。他の生き物も食うか知っておきたいのだ。
「砂浜で捕まえるとしようか」
ゴブリンが寄ってくるミジャーの粉がある。どれほどの効果があるのかも調べておくとしよう。
砂浜まで下がり、ライズさんとラオルスさんには一号艇でクーズルースに戻ってもらい、ミリエルと一緒にホームからミジャーの粉を持ってきて周辺に撒いた。
「お、もう動き出したよ」
撒いて五分もしないでゴブリンどもがこちらに向かって走り出しているよ。
「ミリエル。適当でいいから。眠らせたらホームに入ってくれ」
「わかりました」
オレはルースミルガンに乗り込んで空に飛び立つと、森の中からゴブリンが溢れ出てきた。
「効果覿面(こうかてきめん)だな」
てか、効果ありすぎだろう。下手なところに保管できんだろうがよ。
これだけ効果があるとミサロにも悪影響を及ぼすかもしれんな。ホームにあるのはすべて外に出しておくとしよう。
ミリエルは押し寄せるゴブリンに平然と立っており、二メートルまで近づけさせた。鋼の心臓だな。
眠りの魔法が発動され、効果がわかるくらい前から順々に倒れていった。
「相変わらずエゲつない魔法だよ」
今のでざっと三百匹が意識を刈り取られた。これが一回こっきりなら納得もできるが、今のを四、五回は放たれるんだからチートだよ。まあ、使いどころが限られるんなけどよ……。
ミリエルがホームと入り、眠りの効果を受けなかったゴブリンどもにミサイルを撃ち込んでやった。オレも稼いでおきたいからな。
百万くらいだから二百匹は駆除できたか。これで九百匹か。いや、眠らせたのをすべて運ぶわけじゃないから七百匹としておこう。残り九百匹か。女王を一気に駆除してからのほうがいいかな?
眠りの効果が切れた頃に砂浜に降り、ホームに入った。
「お疲れさん。檻を買って出すんで外を見張っててくれ」
「わかりました」
捕獲檻を買ったら戦闘強化服を脱いでズボンとシャツだけの姿になる。戦闘強化服のまま巨人になったらどれだけカロリーを持っていかれるかわかったもんじゃないからな。
小動物を捕獲檻を引きずり出し、巨人になって檻を巨大化させた。
眠っているゴブリンを檻に放り込む。二十匹も入らないか。
「ミリエル。ゴブリンの足を撃ってくれ。そのあと、回復してくれ。死んだら死んだで構わないから」
片足がないなら次捕まえるのも楽だろう。
「わかりました」
と、表情を変えることなく足を撃っていった。
オレも元に戻り、ホームからマチェットを持ってきて足に突き刺した。
「ん? こいつメスか?」
しかも腹を膨らませている。妊婦も引き寄せるとか効果覿面すぎんだろう。
まあ、妊婦だろうとゴブリンはゴブリン。一切の情もなし。構わず足に突き刺して、ふと疑問が浮かんだ。妊婦に回復薬を飲ませるとどうなるんだ?
ホームから回復薬大を持ってきて無理矢理飲ませた。
足の怪我は一瞬で治り、腹を引き裂いた。
「……ヤベーじゃん……」
腹にいるはずの子が消えていた。
なぜ消えたかはわからんが、恐らく異物と判断されて消えたのだろう。あぶねーもん渡してくるじゃねーか、あのクソ女神が……。
「タカトさん?」
「ミリエル。妊婦しているゴブリンを集めるぞ。実験する」
これは、プロプナスなんてどうでもいい。優先すべきは回復薬が妊娠にどう影響を与えることのほうが重要だ。知らずに使っていたらとんでもないことになるぞ。
どうでもいいオスは首に刺し、メスは足の健を切ってミリエルに回復させた。
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